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2018年12月 4日 (火)

言葉の移りゆき(227)

仮名が大好きな博物館

 

 神戸市埋蔵文化財センターで「神戸はかつて焼き物の里だった~トウバンケイスエキの世界~」という企画展が開かれています。「トウバンケイスエキ」とは東播系須恵器だそうです。東播というのは播磨国の東部のことです。

 熊や猪をクマ、イノシシと書くのは生物学では当たり前のことになっていますが、考古学でもこのような書き方を始めたのでしょうか。漢字で書く方がわかりやすいと思いますから、展覧会のタイトルをこのようにした理由がわかりません。

 同様のことが近隣の館でも行われています。こんな記事がありました。

 

 大きなカマで狩りをする姿から「強い」「かっこいい」というイメージを持たれるカマキリ。だが、それだけではない多彩な姿を知ってもらおうと、企画展「さいきょうのかまきり展」が、伊丹市昆陽池3丁目の市昆虫館で開かれている。来年1月14日まで。 …(中略)

 「『最強』や『最恐』など、来館者それぞれの『さいきょう』を自由にイメージしてほしい」と担当学芸員の長島聖大さん(39)。「鳥に補食されたり、ハリガネムシに寄生されたりするなど、弱い一面も知って」と言う。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181127日・朝刊、「神戸」版、13版△、27ページ、大木理恵子)

 

 「かまきり」は平仮名でよいでしょう。ところが、「さいきょう」という言葉を見て、私は「最強」という言葉ぐらいしか思い浮かびません。「最恐」という言葉もあるのかと教えられますが、その次は浮かんできません。

 「さい」が音読だとすれば「きょう」も音読でしょう。「最恐」に近いのは「最脅」かもしれませんが、日常語としては使いません。「最凶」「最狂」「最競」「最驚」「最叫」「最響」「最協」「最恭」「最教」「最鏡」「最境」……と、思いつくままに並べてみても、日常生活で使う言葉ではありません。

 「来館者それぞれの『さいきょう』を自由にイメージしてほしい」というのは、無理な注文ではないでしょうか。「さいきょう」という言葉を選んだということは、あるメッセージを設定したはずですが、来館者にそのメッセージは伝わるのでしょうか。

 やっぱり、企画のタイトルは、そのテーマを明確に表す表記が望ましいと思います。

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