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2018年12月 5日 (水)

言葉の移りゆき(228)

10分は消毒」の謎

 

 人間は間違いをおかす動物であり、新聞も間違った表現をすることがあります。もし、記事に間違いがあればまちんと訂正すべきであり、また、間違いを指摘した人に対してはきちんと回答をすべきであると思います。

 さて、「まず手洗い■吐いたもの処理後 10分は消毒」という見出しの記事がありました。

 「10分は消毒」とはどういう意味でしょうか。「10分は」というのは〈少なくとも10分以上は〉という意味でしょう。見出しだけを見たのでは、どういう消毒の仕方かはわかりません。普通に考えれば、煮沸を10分以上にわたって行うのならわかりますが、消毒液を使う場合は10分間も消毒し続けるということがあるのでしょうか。

 記事を読んで、この見出しのもとになった表現を探してみます。ノロウイルスを流行させないための対策について書いた記事です。短い記事ですから、見出しと関係のある表現は、次の部分しかありません。

 

 重要なのが、感染が疑われる人が吐いたものの処理だ。大量のウイルスが含まれる可能性があり、飲食店の衛生対策をサポートするダスキンの小林英明さんは「速やかな処理が感染を防ぐ」。正しい方法で拭き取った後、さらに10分、消毒することがポイント。消毒を怠ると、乾燥後に飛散することもある。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181113日・朝刊、13版、29ページ、野村杏実、高橋健次郎)

 

 記事の中で、「10分」という時間はどういう意味を持っているのでしょうか。「消毒を怠ると、乾燥後に飛散する」とありますが、「10分」の根拠は示されていません。それをさらに見出しで「10分は」〈少なくとも10分以上は〉としたのはなぜでしょうか。

 ここからは、私の勝手な推測です。記者は「正しい方法で拭き取った後、さらにじゅうぶん、消毒することがポイント。」と書いたのではないでしょうか。その「じゅうぶん」を「十分」と書いていたかもしれません。「十分」を誰かが「10分」と書き改め、最終的に時間の長さだと判断してしまった……。

 参考として、ダスキンのホームページを見ました。次のような表現がありました。

 

 汚物を取り除いた床面をペーパータオルで覆い、ペーパータオルが十分濡れるよう消毒液を注ぐ。そのペーパータオルを二次回収袋に入れたら、新たに消毒液に浸したペーパータオルで拭き、その後水拭き。拭き取ったペーパータオルも二次回収袋に入れる。

 

 ここには「十分」という言葉が使われていますが、10分にわたる長時間をかけて消毒するとは書いてありません。

 上記の新聞記事には、写真と説明が加えられています。その中に、次の言葉があります。

 

 ④床に再度キッチンペーパーを敷いて消毒液をかけ、10分間おいてから同様に捨てる

 

 この説明文の「10分間おいてから」という表現も、記事の本文に基づいて、辻褄合わせをした表現のように感じられます。消毒液をかけてから10分間も放置するという消毒方法があるのでしょうか。もし、あるのなら、そのような消毒方法があるということを強調して知らせなくてはなりません。

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