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2018年12月 8日 (土)

言葉の移りゆき(231)

AI記者の書く記事

 

 言葉は人と人とをつなぐものです。言葉によってコミュニケーションが生まれます。マスコミと言われる巨大組織も、人間によって成り立っています。そのマスコミからの情報を受け取るのも人間です。

 こんな記事がありました。

 

 新聞社やテレビ局で、人工知能(AI)の活用が始まっている。各社の取り組みと課題は。

 今夏の全国高校野球選手権記念西兵庫大会決勝。神戸新聞社はツイッターで、記事を配信した。

 「明石商は同点の7回、二死二塁から3番田渕翔のセンターヒット、なおも二死二塁から4番右田治信のレフト二塁打などで計3点を挙げ、逆転した」

 AIを活用して記事をつくる「ロボットくん」が書いたものだ。地方大会のデータや、過去に記者が書いた同種の記事などを「学習」。試合データを読み込ませると1秒あまりで「執筆」する。 …(中略)

 社内では「そつなくまとまっていた」という評価の一方、「試合の熱量や雰囲気が伝わらない」という声も。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月1日・朝刊、13版、29ページ、末崎毅・丸山ひかり)

 

 記事ではこの他に、NHK、日本経済新聞社、信濃毎日新聞社、朝日新聞社の取り組みが紹介されています。

 AIは試合経過については、そつのない文章を書けるでしょう。けれども「試合の熱量や雰囲気」はひとつひとつの試合に独特です。AIがさまざまな観戦記を学習して記事を書くことになれば、さまざまな観戦記を混ぜ合わせたような文章が生まれてくることでしょう。

 それは、日本全国が同じようなチェーン店で覆い尽くされて、それぞれの地方の味わいが無くなっていくことと同様なことが、文章表現においても現出することになるのでしょう。

 ふだん、野球は人間ドラマだと言っている新聞、高校野球は人間教育だと言っている新聞。その新聞が、人間(記者)抜きで記事を作ることに何のためらいもないのでしょうか。

 AI活用だとか、省力化だと言えば免罪符になるような風潮がますます蔓延しているように思われてなりません。

 「遺伝子組み替え食品は使用しておりません」という文字がスナック菓子などの説明に書かれています。新聞にも「本日の記事はAIによる作成はありません」と書かれる時代が来るかもしれません。どの記事がAIによって作成された記事であるかを明示しなければならないと思います。

 

 前回と同様に、もうひとつ、恐ろしい問題があります。この記事によると、公立はこだて未来大の教授が、AIで小説を書かせるプロジェクトに取り組んでいるそうです。たとえ骨子だけを作って、それに人間が手を加えていくことであっても、人間の営みをAIが左右していくことになります。

 学問と学問の間の「学際」が話題になりますが、ほんとうの学際は、文系(とりわけ哲学や文学)と理系(情報科学)の間で必要だと思います。理系の独走(あるいは暴走)を傍観しているわけにはいかないと思います。

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