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2018年12月13日 (木)

言葉の移りゆき(236)

「場」とは何か、「場づくり」とは何か

 

 「場」という言葉は、ずいぶん様々な意味を合わせ持っています。だから、「場づくり」と言われて、きちんとしたイメージを持てる人は少ないと思います。

 こんな記事がありました。

 

 「場づくり」ということばを、見聞きする。単に身を置いたり、あることが行われたりする「場所」ではなく、心理的・物理的な作用をもって、何らかの現象・作用をもたらす空間を「場」とよぶようなのだ。 …(中略)

 ビル屋上におしゃれなテントを張り、バーベキュー施設をつくった。そこに集う人たちによってコミュニケーションの輪が広がる。「場所」が少しずつ「場」に変化する。 …(中略)

 出会った場所で自らのビジョンを伝え、それに共感する人と協働する。ここに新たな創造の場が芽生える。 …(中略)

 立場、肩書きなど、周囲との関係性で成り立つ垂直方向の場ではなく、もっと緩やかな創造性に満ちた個の共感で成り立つ水平方向の場をつくりたい。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年9月19日・夕刊、3版、5 ページ、「ことばのたまゆら」、前田安正)

 

 最初の段落(記事の冒頭部分)は、「場づくり」という言葉を説明しているのですが、私にはさっぱり理解できませんでした。具体的なことが浮かんでこないのです。〈…とよぶようなのだ〉という言い方が、頼りなく聞こえます。

 記事の表現をすべて引用しているわけではありません。けれども、要所要所を引用していっても、具体性が加わってきません。何かを「創造」することを目指しているようだということはわかります。けれども、その「何か」が何であるのか、わかりません。

 それ以外の言葉を拾い上げると、「コミュニケーションの場」、「ビジョンを伝え、共感する人と協働する場」、「個の共感で成り立つ水平方向の場」ということのようです。しかし、それでおしまいです。私の思考は前進しません。

 大人であれば、「場づくり」という言葉の意味を誤解することはありません。けれども、イメージの浮かんでこないような言葉を、社会に広めてよいのでしょうか。

 言葉が広義でありすぎたり、具体性を帯びていなかったりすると、何を言っているのか相手に伝わりません。〈「場づくり」ということばを、見聞きする〉とありますが、こんな曖昧な言葉を見聞きしたいとは、私は思いません。

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