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2018年12月17日 (月)

言葉の移りゆき(240)

「TKG」を浸透させたいのは新聞記者?

 

 NHKと言えば日本放送協会のことですが、他にもNHKがあるのをご存じですか。それは日本発条株式会社が使っている略称でもあります。NTTとかJRとか英語表記からの略称が多い中で、日本語(ローマ字書き)の頭文字をつないだ略称は、どちらかと言えば少数派です。アルファベットの中から3文字を使う場合は、その組み合わせ数に限界がありますから、同じものがあっても仕方がないでしょう。

 固有名詞はさておき、ごく普通の日本語(名詞)をアルファベットの略語で表すのは珍しいことだと思います。最近、目にしたのが次の例です。

 

 近年「TKG」とも呼ばれ、シンプルにして各年代に愛される「卵かけご飯」が、「生卵は食べない」はずの外国人に浸透し始めている。日本を旅行中、開眼するケースもあるようだ。 …(中略)

 大阪市浪速区の卵かけご飯専門店「美味卯」にも、外国人が訪れる。オーナーによると「若い子だと、TKGという言葉も知っている」。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181116日・夕刊、3版、1ページ、中川竜児)

 

 1面の「3分の1」以上のスペースを使った記事ですが、「TKG」という言葉は、冒頭の一句と、オーナーの談話の部分だけです。つまり、日本語としては浸透していない言葉です。「卵かけご飯」という、ちゃんとした日本語があるのです。

 この記事の見出しは、大きな文字で「TKG 世界へ?」となっています。難しい漢字には仮名で読み方を知らせる「ふりがな」という方法があります。この「TKG」は、何を言っているのか、わからない人のために、「T」に「卵」、「K」に「かけ」、「G」に「ご飯」という文字が振られています。「ふりがな」ではなく、「漢字・仮名交じりの〈ふりがな〉」です。「TKG」は外国で広がり始めている略称かもしれません。この略称を、新聞記者は、日本国内でも普及させたいと思っているのでしょうか。そんな略称は、外国人に接する店の人には知っておいてもらいたいとは思いますが、おかしなアルファベット略語を日本語の中に取り入れる必要はありません。

 「卵かけご飯」という言葉から受ける、ふっくらとした印象を、「TKG」というような無機質の言葉でぶち壊そうとしているのは誰なのでしょうか。こういうことの一つ一つが積み重なっていくことによって、得体の知れない日本語表現が広がっていくのです。

 

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