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2018年12月18日 (火)

言葉の移りゆき(241)

「力」という文字に振り仮名は必要か

 

 新聞に不思議な欄があります。空間ができてしまうから仕方なく作るような欄です。1ページの片隅に、その日の記事を紹介する欄です。見出し程度のものならば、見過ごしても良いと思います。そうではなくて、何行かの文章を添えて、何ページにどんな記事が載っているかということを紹介する欄です。わずか30ページほどの朝刊であるのに、その欄を見て、読むところを決める読者が存在するというのでしょうか。

 ただひとつの利点は、何日か後に、あの記事はいつの紙面に載っていたのかと思ったときに、見つけ出すのには役立つでしょう。それならば、その検索に役立つような機能を持ったものを開発すべきです。限られた記事の紹介だけでは、検索機能は果たせません。網羅的な機能を備えていませんから、まったく役に立ちません。

 

 話題は変わります。「力」という漢字は、小学校低学年の児童であっても、読み書きはできますし、意味も理解できます。そんな「力」という文字に、どうして振り仮名を施すのでしょうか。「力」という文字に振り仮名を施さなければ誤解をされる、というような記事を新聞は書くべきではありません。

 引用するのは、1ページの題字の下にある、その日の記事を紹介する欄と、同じ日の29ページの記事です。

 

 「女子はコミュ力が高い」波紋 【見出し】 《注。「力」に、「りょく」という振り仮名が付いている。》

 医学部の入試面接で女子に不利な扱いをした理由は「コミュニケーション能力が高い」ため。順天堂大の説明に波紋が広がる。 29面 【本文】

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181212日・朝刊、13版、1ページ)

 

 入試差別に「女子はコミュ力高い」 根拠は? 【見出し】 《注。「力」に、「りょく」という振り仮名が付いている。》  

 「女子の方がコミュニケーション能力が高く、男子を救う必要がある」。医学部入試で女子に不利な扱いをしたことについて、順天堂大がした説明に、批判が起きている。そもそも「女子の方がコミュニケーション能力は高い」という説に、根拠はあるのか。  【本文】

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181212日・朝刊、13版、29ページ)

 

 見出しはどちらも「コミュ力」となっていますが、本文にはその表現はありません。1ページの方は全文引用です。「コミュニケーション能力」という表現が1箇所あります。29ページは長い文章ですが、「コミュニケーション能力」という表現が6箇所あります。

 記事はきちんと書かれているのですが、見出しにするときに「コミュ力」という言い方を採用し、カタカナとの混同を恐れて「力」に振り仮名を付けたのです。

 私は、これまでも、このブログで何度も、新聞の見出しが日本語を乱すきっかけを作っているということを指摘してきました。こんな振り仮名を付けてまで、混乱するような言葉を使いたいのでしょうか。

 「コミュ力」などという短縮語は、日本語にとって望ましいことでしょうか。短く言うことにどれほどの価値があるのでしょうか。せめて「コミュ能力」とでもすれば、馬鹿馬鹿しい振り仮名は必要なかったはずです。見出しは文字数の制約を受けるということを理由にして、おかしな日本語表記をしないようにと願いたいものです。

 さて、以上は「コミュ力」についての最新の話題です。時間をさかのぼって、この「コミュ力」という言葉が紙面に現れたことについて見てみたと思います。それは、次回に書きます。

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