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2018年12月26日 (水)

言葉の移りゆき(249)

辞書にない言葉「出稿」

 

 文字を見れば意味の察しはつくのですが、国語辞典にない言葉があります。そのひとつが「出稿」という言葉です。「稿」は原稿のことでしょうから、原稿を出すのが「出稿」でしょう。

 とは言え、これは、筆者が出版社に原稿を提出するという意味にも取れますし、出版社が印刷所などへ原稿を届けるという意味にも取れます。

 小型の国語辞典はたいてい「出稿」を載せていませんが、その例外が『三省堂国語辞典・第5版』です。つぎのように書いてあります。

 

 原稿を出版社や印刷所などに渡すこと。

 

 この説明には納得するのですが、多くの国語辞典の編集者は「出稿」を、自分たちの業界用語のように考えて、辞典に収めることをしなかったのでしょうか。

 ところで、もうひとつ別の意味で使われている「出稿」があります。

 

 総務省がまとめた国内放送業界の2017年度の収支状況によると、NHKを除く地上波テレビ・ラジオ計194社のうち、純損益が赤字になったのは22社と前年度比で13社も増えた。大半がラジオ局で、複数の大口スポンサーの広告出稿の見合わせが相次いだことが原因だという。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181127日・朝刊、10版、30ページ、河村能宏)

 

 これは『三省堂国語辞典』も載せていない意味です。

 推測すると、スポンサーが新聞・雑誌・テレビなどに広告を出すという意味のようです。広告の文案や文章を作って出すという意味で「出稿」という言葉が使われ始めたのでしょうが、実際の状況としては、原稿を出すということよりも、スポンサーとして金を出すということになっているのではないでしょうか。

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