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2019年1月 5日 (土)

言葉の移りゆき(259)

「亥」と「猪」の関係

 

 2019年は「亥」の年です。「亥」という文字が書かれた年賀状をいただきましたが、干支のイノシシのイラストなどが書かれた年賀状もたくさんいただきました。亥は十二支の十二番目で、動物では「猪(イノシシ)」にあたります。けれども、亥イコール猪、というわけではありません。

 毎年、干支の縁起物のことが話題になります。例えば、次のような記事があります。

 

 大阪府和泉市の地場産業で、縁起物の干支のガラス細工に今年はピンクのブタが仲間入りした。高さ約3・5センチで、一つ税込み4860円。親子もある。

 日本では「亥」はイノシシのことだが、中国ではブタを指す。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年1月1日・朝刊、13版、38 ページ)

 

 亥は、文化の違いなどによって、イノシシになったりブタになったりするのです。ということは、「今年の干支は、猪」と断言しにくいのです。新聞社は、干支に関する表現に気を使っているようです。

 こんな文章があります。

 

 縁起がよいとされる「えとの置物」。2017年は「酉年」で、 …(中略)… 秋から暮れにかけて、動物の置物づくりが話題になります。同時に、校閲記者の直しの手も忙しくなります。

  × 2017年のえと「酉」の置物

  〇 2017年のえと「酉」にちなんだ置物

 なぜ「にちなんだ」と直すのでしょう。

 現代の生活でえとといえば「今年のえとはとり年、来年はいぬ年」というように十二支を指し、動物を思い浮かべることが多いと思います。しかし、もともと動物とは関係ありませんでした。

 (毎日新聞校閲グループ『校閲記者の目』、毎日新聞出版、2017年9月5日発行、111112ページ)

 

 十二支を覚えやすいように、子=ネズミ、丑=ウシ、…… 戌=イヌ、亥=イノシシ、というように当てられたのです。だから、「干支のイノシシの置物」という言い方を、新聞社の校閲記者は見逃さないで朱筆を入れることになります。

 私のもらった年賀状も、「今年の干支にちなんだイノシシ」がたくさん書かれていたと表現するのが望ましいというわけです。

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