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2019年1月11日 (金)

言葉の移りゆき(265)

「まるでケーキ」なサンド

 

 「綺麗な」とか「元気な」とか言う場合の「な」は、形容動詞の活用語尾(連体形)です。「綺麗」という名詞はありませんが、「元気」は名詞としても使えます。「まるで元気がない」というように言うことができます。

 その「まるで元気がない」という表現について考えます。「まるで」は副詞です。副詞ですから、「元気」という体言(名詞)を修飾しているのではありません。語順を変えて「元気がまるでない」という表現も可能であることからわかるように、「ない」という用言(この場合は形容詞)にかかっていくのです。

 「まるで」という言葉は、後ろに伴う「…のようだ」とか「…みたいだ」とかの言葉と呼応することもあります。

 さて、ここからが本題です。次のような記事がありました。

 

 代表作は、生クリームで飾ったデコレーションケーキのような「ハムとチーズのケーキイッチ」だ。バラのように巻かれた生ハムと青々としたベビーリーフが華やか。パンの間にハムとチーズが挟まり、切り分けると、サンドイッチらしい断面が現れる。「ショートケーキのイメージがイメージが裏切られるので、一番衝撃的かも」と唯根さん。

 (読売新聞・大阪本社発行、20181212日・夕刊、3版、4ページ、「いま風」、斉藤保)

 

 唯根さんが工夫をした創作料理の説明ですから、すぐさまその姿を想像できないかもしれませんが、紙面には写真が載っています。

 文章の筆者とは関係の部署で作られたのかもしれませんが、この記事の見出しは、次のようになっています。

 

 「まるでケーキ」なサンド

 

 カギカッコの外に置かれた「な」は、いったい何なのでしょうか。カギカッコ内で表現がいったん完結しているのなら、「まるで」という副詞は、「ケーキ」という体言(名詞)を修飾していることになり、破格です。

 「まるでケーキ」という部分を形容動詞の語幹と考えると(これも破格ですが)、「まるでケーキな」の「な」はカギカッコ内になければなりません。「まるでケーキな」という修飾語が「サンド」にかかっていく構造なのでしょう。それにしても不思議な日本語です。

 話を複雑にする必要はないのかもしれません。「まるでケーキのようなサンドイッチ」と言いたいのでしょう。見出しの字数の制約によって、おかしな日本語を作り上げることになったのでしょう。

 本文に問題が無くても、見出しが日本語を混乱させる働きをしてしまっていると言わなければなりません。字数制限があるからということが理由であっても、おかしな日本語表現が許されるはずはありません。

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