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2019年1月15日 (火)

言葉の移りゆき(269)

国語辞典は「やっぱり」冷酷だった

 

 「やっぱり」という言葉を国語辞典で引いてみます。『現代国語例解辞典・第2版』は「⇒やはり(矢張)」と書いてあるだけです。『三省堂国語辞典・第5版』には、「『やはり』の気持ちを強めた言い方。」とあって、その「やはり」がどういう意味であるのかは、その項目を引き直さなければわかりません。『明鏡国語辞典』には「『やはり』のくだけた言い方。」とあって、「やはり」の意味は説明されていません。

 国語辞典は親切な書物なのですが、こういう場合には腹立たしさを感じます。「やはり」の意味を説明した上で、その意味を強めたとか、それをくだけて言ったと書くべきでしょう。どの辞典を見ても、やっぱり同じような説明の仕方をしているのです。これ以外の辞典を見ても、やっぱり同様でしょうから、引いてみる気持ちが喪失します。(「強める」と、「くだける」とは、異なった働きですが、ここではそのことに立ち入らないことにします。)

 「やっぱり」に執着するのは、次のような見出しを見たからです。

 

 限定5万枚→やっぱり5.1万枚 / 記念硬貨 造幣局が抽選作業ミス

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181128日・朝刊、13版、33ページ、見出し)

 

 記事には、「当選者5万人を抽選で決定。期限までに入金を確認できた人に今月、記念貨幣を送った。だが、1296人の入金を見落とし、キャンセルと勘違いしていたことが発覚。すでにその分を繰り上げ当選させてしまっていたため、5万人を超えてしまった。」とあります。

 記事の中に使われていない「やっぱり」を使った意図は何なのでしょうか。造幣局は「やっぱり」ミスを犯すところだ、ということでしょうか。「やっぱり(やはり)」は、前から思っていたとおりという意味がありますから、造幣局が甘く見られているということになりそうです。

 けれども、その場合は「やっぱりミス(を犯す)」と書くべきでしょう。「やっぱり5.1万枚」とは何なのでしょうか。公称5万枚であるはずがない、きっと5.1万枚は発行するはずだと新聞社が予想していたのでしょうか。主観的で、根拠のない見出しの付け方であるように思います。

 やっぱり見出しの付け方はルーズだ、と言ったら叱られるでしょうか。

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