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2019年1月19日 (土)

言葉の移りゆき(273)

「次の回」とは何か

 

 「次の回」という言葉があります。共通語にある言葉ですが、私たちの地域でも使います。

 ところで、共通語の場合、「次の回」という言葉は、単語の数で言うと、一語なのでしょうか。それとも三語なのでしょうか。そして、「次の回」という言葉は、どういう意味を持つ言葉なのでしょうか。

 私たちの地域の言葉では、「昼から」という言葉は、「昼」(名詞)+「から」(助詞)ではなく、一語の名詞です。「映画会・は・ 昼から・の・ 3時・に・ 始まる。」というように使います。「昼から」=午後です。それと同じように、「次の回」も、三語に分かれるのではなく、一語の名詞です。

 次の文章を読んで、そのあたりのことに疑問を感じました。

 

 映画館に行くと「次の回は応援上映です」と言われた。観客が歌ったり叫んだりしていいのだという。映画は、英ロックバンド・クイーンの軌跡を描いた「ボヘミアン・ラプソディ」。曲になると、歌詞がカラオケよろしく画面に現れた

 最初はみんな遠慮がちだったが、中盤からは口を開けて歌う人が増えてきた。「フレディ!」とボーカルに声援が飛ぶ。足踏み。手拍子。拍手。知っている曲が流れてくると、やはり自然と声を上げたくなる

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181124日・朝刊、13版、1ページ、「天声人語」)

 

 コラムの文章の「次の回」というのは、いつのことなのでしょうか。映画の画面が進んで行った、ある段階のことのように思われます。曲が流れ出したときが、「次の回」にあたるようです。「回」とは、一定の事柄が継続したり反復したりして行われるときの、それを区切った一つのまとまりを表す言葉だと思います。この映画には、そのような区切りがあるのでしょうか。「次は応援上映です」というのと、「次の回は…」というのとでは、少し違うように思うのです。

 私たちの地域の言葉としては、「次の回」は、「今回」「前の回」に対応する言葉として使っているように思います。「前の回からいろんな意見が出ています。今回の寄り合いで決められなくても、次の回には結論を出さないわけにはいきません。」というように、明確に区切られた使い方です。「前の回」=前回、「次の回」=次回ですが、国語辞典には「前回」「次回」の見出しはあっても、「前の回」「次の回」の見出しはありません。共通語と地域の言葉が微妙にずれているのかもしれません。

 「次の回」という言葉は、意味・用法に関しては、地域の言葉では、一連のものであっても区切りを意識して使いますが、共通語(あるいは、「天声人語」の用法)では、少し後で状況が変化したとき、というような使い方をしているようです。

 ありふれているように思われる言葉であっても、意味・用法などの違いに気付かせられることがあるのです。

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