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2019年1月20日 (日)

言葉の移りゆき(274)

熟語の語順

 

 漢字が中国から導入され、現代の日本語の中でも大きな働きをしていることは、誰もが知っていることです。

 漢字には二字、三字、四字などの熟語がありますが、それらの熟語は中国の漢文の構造に準拠しています。熟語を構成している漢字は、「主語-述語」、「述語-目的語(補語)」、「修飾語-被修飾語」などの語順で構成されるのが普通です。「並列」の関係もあります。

 現在も新しい熟語が生まれていますが、基本的には語順が守られています。けれども、時には単なる語呂合わせであったり、長い名称を短くするために少ない漢字を並べるというやりかたもされています。

 四字熟語について、こんなことが書かれていました。

 

 この世は有為転変、常に激しく変化するとは言うものの、これほどの異常が続くとは。まさに「雨為天変」の豪雨や台風に襲われた。地震が大停電をもたらした北海道にとっては、疑心暗鬼ならぬ「地震暗来」。住友生命が募った創作四字熟語で1年を振り返る …(中略)

 ボランティアの尾畠春夫さんが、暗中模索に陥った迷子捜しを解決。「山中子索」のお手柄だった

 こちらは迷子ではなく逃げる方。刑務所や警察署から脱走し、東奔西走ならぬ「逃奔世騒」の男たちが相次いだ。 …(中略)

 沖縄県知事選の民意に政権が暴風を吹かせる。「疾風土投」で土砂投入が強行された。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181124日・朝刊、13版、1ページ、「天声人語」)

 

 お遊びだからよいではないか、とも言えますが、語順が間違っているものがあります。厳密に言うと、意味が違ってしまうのです。

 「山中子索」は、山中で子が捜索したような意味になります。子を捜索するのなら「索子」の順です。

 「逃奔世騒」はこのままでは、世が騒いだという意味で、世を騒がせたのなら「騒世」の順です。〔このままでも、間違いというわけではありません。〕

 「疾風土投」の「土投」はこのままでは、土が(何かを)投げ入れたという意味ですから、「投土」の順にしなければなりません。〔ボールを投げることを「投球」と言います。〕

 文字の順を変えれば発音が変わりますから、元の四字熟語の発音から離れてしまって、面白みは半減します。けれども、日本語(漢語)の語順を無視して熟語を作ることには賛成できません。

 「地震暗来(あんき)」の「来()」だけを訓読するのも、現代の日本語の習慣から離れています。

 文脈として意味のある文字を並べていますが、発音を似たようにするために、語順を無視したり音訓の習慣を逸脱したりするのも考えものです。どちらかというと、現代的な文字配列ではなく、昔の万葉仮名のような使い方をしているとも言えます。

 もとより、このような四字熟語は人々を楽しませてくれます。ただ、応募の際や、審査の段階で、日本語の語順や音訓に留意した方が、より楽しめるものになると思うのです。

 それにしても、日本人は、年末になると、言葉や文字を話題にすることが多い人たちなのですね。

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