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2019年1月21日 (月)

言葉の移りゆき(275)

豚汁と水餃子

 

 豚肉や野菜などを入れて味噌汁仕立てにしたものを「豚汁」と言います。私はそれを「ぶたじる」と言うのに慣れていましたが、牛丼屋などで「とんじる」と称していることを知りました。はたして、自分が間違っているのか、それとも新しい言い方が広がっているのか、と迷いました。

 こんな文章を読みました。

 

 ふらりと入った中華料理屋で耳を疑った。「ミズギョーザ、ください」

 声の主は年配のご婦人。スイギョーザじゃないの? 広辞苑に載っているのは「スイ」の方。だが、ネットによると「ミズ」と読む地域もあるらしい。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181221日・夕刊、3版、10ページ、「葦 夕べに考える」、机美鈴)

 

 スイギョーザでもミズギョーザでも、通じればよいだろうとは思います。けれども、ちょっと別のことを考えてみました。

 熟語は、音読なら音読だけで、訓読なら訓読だけで通す必要はありません。けれども、重箱読みや湯桶読みという言葉があるように、音読・訓読取り混ぜた読み方は例外的なものだという感覚を、私たちは持っているのかもしれません。

 「ぶたじる」は訓読です。「とんじる」はあっても、「とんじゅう」という音読はありません。豚は「ぶた」と読もうと「とん」と読もうとかまわないが、豚汁の「汁」を「じゅう」と読むと、本質が変わったものになってしまうと感じるのでしょう。

 餃子は、「ギョーザ」の部分が変わらなければ、「スイ」でも「ミズ」でも本質的な違いはないということでしょう。

 さて、豚カツ(豚+cutlet)は「とんかつ」で、「ぶたかつ」とはあまり言いません。「餃子」や「カツ」のような外国語由来の言葉は、音・訓という区別をすれば、音読に分類されるのでしょう。そのような感覚で言えば「水餃子」は「スイギョーザ」であり、「豚カツ」は「トンカツ」という流れに傾斜しているのでしょう。

 広辞苑は、「音読」を、漢字を字音で読むこと、と説明しています。漢字という外国文字を取り入れたときに、中国での発音を尊重したということです。それならば、その他の外国語の言葉を取り入れて、その発音を導入すれば、それは音読に該当するといってよいのではないでしょうか。外来語と日本語とを結びつけた言葉が生まれるとき、日本語の部分は音読が多くなるのは必然のことでしょう。

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