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2019年1月22日 (火)

言葉の移りゆき(276)

何としても定着させたいと躍起になっている言葉

 

 新聞は、言葉について大きな影響力を持ちます。新聞が人々の言語生活を望ましい方向に導くこともできますし、乱れた方向へ引っ張っていくことも可能です。

 京王電鉄の子会社・京王観光が、団体旅行で実際より少ない人数分の乗車料金しかJRに払わない不正を繰り返していた問題についての記事がありました。

 

 「指のみ券」不正乗車に悪用 / 座席指定のみできる券 / 京王観光

 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年1月18日・朝刊、13版、25ページ、見出し)

 

 座席指定のみができる「指のみ券」を使って席を確保し、他の客を排除していた。 …(中略)

 関係者によると、新幹線や特急などの指定席を使う際には、実際は購入していない座席に一般の人が乗ってきてしまう可能性があるため、「指のみ券」を発券し座席を確保していた。

 (同上の記事、贄川俊・細沢礼輝)

 

 指のみ券  新幹線や特急の座席指定だけをする券。「指定席のみ券」。おもに割引切符の座席指定を後から行う場合や、新幹線の乗り継ぎで2本目の座席を指定する際に発券する。この券だけでは実際の席を利用することはできない。

 (同上の記事、解説コラム)

 

 実に念の入った扱い方です。見出しの言葉を二重に表現して、本文で説明して、さらにコラムまで作っています。

 「指のみ券」という言葉は、業界内で通用している言葉かもしれませんが、一般の人は使っていないように思います。そんな言葉を一般の人にも理解させたい(あるいは、使わせたい)とする意図がありありと出ている記事です。どうして、そんなことに躍起になるのでしょうか。理解に苦しみます。

 「指定席のみ券」というのが普通の(あるいは、正式の)言い方のようです。6文字のうち「定席」という2文字を減らして、おかしな日本語を紹介し、見出しやコラムで念押しをしているのです。見出しは文字数が少ない方がよいことはわかっています。けれども、逆に見出しの文字数を増やしてまで、この言葉を定着させようと目論んでいるようです。

 この言葉は、本文記事ではわずか2回しか使われていません。文字数を減らして書く必要はまったくありません。

 この日の記事の見出し、本文、解説コラムは、これから後はこの言葉をどんどん使うぞという宣言であるかのように思われます。おかしな日本語を増やさないでください。

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