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2019年1月24日 (木)

言葉の移りゆき(278)

新聞・放送界が使う「暦」

 

 他の地域ではどのようであるのか知りませんが、NHK大阪放送局のラジオ第1放送の場合は、2310分からはじまる5分間のローカル・ニュースの中で、「明日の暦」として、日の出、日の入り、月の出、月の入り、(月齢)、満潮、干潮の時刻を知らせています。このような時刻を「暦」と言うのかどうか、疑問に感じていました。

 冊子になった暦を見ても、一日ごとに月齢は載っていますが、その他の時刻を詳しくは掲載されていません。「暦」とはどのような項目を指すのでしょうか。

 例えば『現代国語例解辞典・第2版』で「暦」を引くと、「時の流れを、一日を単位として年、月、週などによって区切り、数えるようにした体系。また、それを記載したもの。」となっています。

 『明鏡国語辞典』は「暦」を、「一年間の月・日・曜日・祝祭日・月の満ち欠け・日の出・日の入り・干支などを日を追って記したもの。七曜表。カレンダー。」と具体的な項目が挙げられています。

 『新明解国語辞典・第4版』は、「どういう行事が有るか、また吉凶・月齢や日の出・日没・干満の時刻などを、一日を単位として日ごとに記したもの。」と説明しています。

 国語辞典は、右へ倣えということかと思いきや、「暦」の項目は個性的(あるいは、好き好き勝手)なのです。共通した項目を挙げているわけではありません。

 新聞も「暦」という言葉を使っていますが、面白いことに、記載項目は共通しています。数値は省略して、項目のみ引用します。

 

 「暦」 新暦日付、旧暦日付、日出、日入、月出、月入、月齢

 「潮」 満潮、干潮

 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年1月1日・朝刊、「神戸」版、13版△、31ページ)

 

 「あすのこよみ」 新暦日付、旧暦日付、六輝、月齢、月出、月入、日出、日入、満潮、干潮

 (毎日新聞・大阪本社発行、2019年1月1日・朝刊、「明石・三木」版、28ページ)

 

 「あすのこよみ」 新暦日付、旧暦日付、六輝、月齢、日出、日入、月出、月入、満潮、干潮

 (読売新聞・大阪本社発行、2019年1月1日・朝刊、「神戸明石」版、34ページ)

 

 「こよみ」 新暦日付、旧暦日付、六輝、月齢、日出、日入、月出、月入、満潮、干潮

 (産経新聞・大阪本社発行、2019年1月1日・朝刊、「神戸」版、27ページ)

 

 「潮位」 新暦日付、満潮、干潮

 (見出し無し) 月齢、日出、日入、月出、月入

 (神戸新聞、2019年1月1日・朝刊、3ページ)

 

 ラジオでは、旧暦日付や六輝(先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口)のことは言っておりませんが、それ以外の項目は新聞各社と同じです。国語辞典がバラバラの説明であるのに対して、放送・新聞は見事に一致しているのです。

 けれども、日の出、日の入り、月の出、月の入り、月齢、満潮、干潮を指して(あるいは、それに限定して)、「暦」という言葉を使うのが適切であるか、という別の問題は残っています。

 とは言え、国語辞典というものが、現実の言葉の姿を記録するということから言えば、このような項目を無視した説明では物足りないということになります。『現代国語例解辞典・第2版』について言うと、「とりわけ、日の出、日の入り、月の出、月の入り、月齢、満潮、干潮を指して使うことが多い。」というようなことを加筆する必要がありそうです。

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