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2019年2月10日 (日)

言葉の移りゆき(295)

「絶滅危惧動作」の面白さ

 

 楽しい記事を読みました。絶滅危惧というのは動物や植物のことだけではなく、人間生活の中にもあふれていることに注目した図鑑のことです。

 

 東京芸術大学の大学院生、藪本晶子さん(25)の作品について取材しました。その名も「絶滅危惧動作図鑑」。最近、あまり見られなくなった「テレビを叩く」や「墨をする」といった全57種類の動作が図鑑にまとめられています。 …(中略)

 「モノは博物館などで紹介されるが、動作は残らない。ならば、置き去りになってしまう動作を残すものがあってもいいんじゃないか」。そんな思いが今回の図鑑につながったそうです。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年1月19日・夕刊、3版、2ページ、吉田貴司)

 

 モノは博物館で紹介されるが動作は残らない、という考えに同感です。私は今、方言辞典を刊行しようとしています。博物館にモノは展示されていますが、言葉(方言)の収集・保存が行われていないという現状を踏まえての取り組みです。

 全国に博物館、歴史館、民俗館というようなものはたくさんありますが、言葉(方言)の博物館はありません。形のないものには無関心であるというのが、文化財行政の姿です。方言辞典の刊行には1円の補助金も出ませんが、個人で取り組まなければならないことです。

 さて、絶滅危惧動作を、自分で振り返ってみました。

 チャンネルをガチャガチャ変える。電話機のダイヤルをくるくる回す。切符にハサミを入れてもらう。ガムを噛んで風船を作る。立って伝馬船の櫓をこぐ。流れ出る鼻水を袖口でふく。間違ったところを砂ゴムで消す。木登りをして、木の股に座る。木切れを集めて焚き火をする。

 まだまだ、いくらでもありますが、このあたりにしておきます。

 私は、絵で書くことは苦手ですが、刊行を予定している方言集には、方言語彙の用例で、そのようなことをなるべく取り上げるようにしています。

 私が大学の卒業論文を書いたときは、パソコンはもちろん、コピー機も普及していませんでした。その時は「カーボン紙で複写する」ことをして、提出したものとは別に、手元に論文を残しました。

 私は子どもの頃から「新聞を切り抜く」ことをして、今も続けています。けれども、今は、切り抜いてからスキャンの作業をして、切り抜き自体は処分しています。今どき、新聞を切り抜いている人はどれほどいるのでしょうか。

 「新聞を読む」ことが絶滅危惧動作に入らないようにと願わずにはおれません。

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