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2019年2月16日 (土)

言葉の移りゆき(301)

ひらがな頭文字の略語

 

 「こそあど」と言ったら、「新しい流行語ですか」ときいた人がいました。こそあどとは、「これ」「それ」「あれ」「どれ」というような代名詞や、「この」「その」「あの」「どの」というような連体詞や、「こう」「そう」「どう」というような副詞などの体系を表す言葉です。指示機能を持った言葉のことです。「こそあど」という発音には、「ここは、どこ?」とつぶやいている趣もあって、好ましい日本語です。

 日本語には、このように頭文字を連ねた略語の機能があるのです。報告・連絡・相談を一続きにして「ほうれんそう」と言うそうです。

 こんな文章がありました。

 

 最近、ネット通販やファッションに携わる人から、よく聞く言葉がある。

 「ささげはどこに頼むかな」「ささげの出来不出来が大きいですよね」という感じで使われている。

 ささげ?……。業界が業界だけに横文字の略語か、AIも駆使する業界だけにハイテクの専門用語かとも思った。

 「すいませんけど……」と聞くと、「さ・さ・げは、撮影・採寸・原稿の頭文字の略」と教えてくれた人がいた。

 意外だった。いずれも地味な業務である。だが、消費者はスマホやパソコンの画像、サイズ表、商品説明から商品を選ぶしかない。ささげは重要なのだ。

 (朝日新聞・大阪本社発行、20181126日・夕刊、3版、8ページ、「葦 夕べに考える」、多賀谷克彦)

 

 撮影・採寸・原稿のことを、英語の頭文字を並べて言おうと考えた人もいたかもしれませんが、「ささげ」という言葉が定着したら、その方が馴染んだ言葉になるでしょう。「ささげ」は、アズキよりもちょっと大きい豆を表す言葉でもあります。「ささげ」に新しい意味が生まれるというのは、日本語にとっては面白い現象です。「ほうれんそう」は菠薐草です。たまたまですが、この2つの言葉には、食べることのできる植物という共通点があります。

 アルファベットの略語にしても、KDDIの前身であるKDDは、国際・電信・電話のローマ字の頭文字です。NTTの頭文字は一旦、英語を経由しなければなりません。日本・放送・協会のNHKもローマ字の頭文字です。アルファベットで略語を作るときも、日本語を大事に考えたいと思います。けれども、「卵かけご飯」をわざわざアルファベットで「TKG」などと言おうとする心理は、理解できません。

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