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2019年2月21日 (木)

言葉の移りゆき(306)

「言葉ハンター」が国語辞典を作る?

 

 今回からしばらくは、一つの話題について、連続して書いていきます。その話題の中心は、国語辞典に載せられる言葉の意味・用法のことであり、どのような言葉を国語辞典に載せるのかということでもあります。ただし、話題を広げて論じることもあることを了解してください。

 当たり前のことを申しますが、言葉には、話し言葉もあれば、書き言葉もあります。ところが、そのことを忘れているかのような文章に接することがあります。国語辞典は、書き言葉をもとに作られているのではありません。

 これまでにも書いたことがありますが、私は方言に強い関心を持っています。方言というのは基本的に、話し言葉の世界のものです。話し言葉を無視したり軽視したりしたのでは、方言研究は成り立ちません。

 日本語は共通語や方言で成り立っています。日本語の研究はもちろんですが、国語辞典の編纂も、方言を無視したり軽視したりしては成り立つはずがありません。言葉を換えて言えば、話し言葉が眼中にない(あるいは、無視した)ような国語辞典であってはなりません。

 話し言葉を無視・軽視した国語辞典などがあるはずはないと思っておりましたが、最近は少し疑問を持つようになってきました。

 国語辞典を充実させるためには、言葉(の意味・用法などを含めて、さきざまな様相)を見つめなければなりません。書き言葉だけでなく、話し言葉にも極力、注意を注がなければなりません。

 「言葉ハンター」という言葉があるそうです。国語辞典には載っていない言葉だと思いますが、このような定義が書いてありました。

 

 ことばハンター【言葉ハンター】()

1 国語辞典を作るため、ことばを集める人。

  国語辞典編さん者。本やテレビ、インターネットや街の中などを観察し、新しい言葉を毎日探している。集めたことばをもとに、国語辞典の説明を書く。

2 だれよりもことばが好きで、この本を通じてあなたにことばの世界のおもしろさを伝える人。

 (飯間浩明『ことばハンター 国語辞典をこうつくる』、ポプラ社、2019年1月発行、カバー扉)

 

 仰天しました。上記の書物は子ども向けです。子どもに向けて、わかりやすく書こうとしている意図は理解できますが、書き言葉のみに注目して国語辞典が作られているかのような誤解を招きます。ほんとうは「本やテレビ、インターネットや街の中など」にある書き言葉だけで国語辞典は作られていないと思いますが、書き言葉に最重点を置いて国語辞典を作っているという姿勢を、強く打ち出している表現になっています。

 「ことばハンター」は、話し言葉にもっともっと重点を置いて観察すべきではないかと思います。インターネットで検索したり、街角の言葉を写真に撮って記録するのは、容易な方法だと思います。それに比べて、話し言葉に耳を傾けて意味・用法などを探し出すことは、何倍もの努力が必要だろうと思いますが、そちらの方こそ言葉の研究の出発点だと思います。新しい言葉をいち早く見つけ出すことが国語辞典編纂者の手柄というわけではないと思うのです。

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