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2019年3月16日 (土)

言葉の移りゆき(329)

「出身」の使用範囲

 

 「出身」というのは日常的な言葉です。意味も使い方も、迷うことはありません。けれども、どの範囲まで使うのかということを、国語辞典で確認してみます。

 

 『明鏡国語辞典』  その土地の生まれであること。また、その学校・団体などの出であること。

 『現代国語例解辞典・第2版』  その土地またはその学校などから世に出ること。また、その出所。

 『新明解国語辞典・第4版』  その土地で生まれ・(その学校を卒業し)たなどという経歴があること。

 

 興味深いのは句末です。「生まれであること」、「世に出ること」、「経歴があること」というバラエティがあります。どれも間違っていません。国語辞典にはこのような違いがある方が面白いと思います。

 上のような説明によれば、「神戸市の出身」、「神戸のボーイスカウトの出身」、「神戸大学の出身」などと言えることがわかります。

 もう少し範囲を広げている国語辞典もあります。

 

 『三省堂国語辞典・第5版』  その・土地(学校・身分)の出であること。

 『岩波国語辞典・第3版』  その土地の生まれであること。その学校の卒業であること。その身分を経てきていること。

 『明治書院精選国語辞典・新訂版』  その土地・学校・社会層・地位などの出であること。

 

 ここまでくると、「弁護士出身の国会議員」などという使い方ができることになります。

 それでは、国語辞典が示していないものを挙げてみましょう。同じ世界でありながら所属が変わる場合です。

 使い方の具体例を引用します。

 

 「安くて美味しくてハズレないのが大阪料理」と語る店主の橋本治さんは、京都の老舗料亭・菊乃井の出身。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年2月5日・夕刊、3版、3ページ、「味な人」、姫路まさのり)

 

 同類として、「巨人出身で阪神に移籍した〇〇選手」などという言い方が考えられます。要するに、同じ仕事を続けて、所属が変わるだけであっても、「出身」を使う例は多いのではないでしょうか。

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