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2019年3月28日 (木)

言葉の移りゆき(341)

「耳年増」という言葉

国語辞典に新しく収められる言葉がある一方で、省かれていく言葉もあります。「耳年増」という言葉も、辞典が改訂されるたびに、省かれていく可能性のある言葉のひとつであるかもしれません。
 「耳年増」という言葉は、あまり見かけない言葉ですから、私自身は意味を正しく理解しているわけではありません。使うこともありません。
 世の中にネガティブな情報があふれて、若者たちが人生や社会に対して自信や対処法を持てなくなっているということを述べた記事があり、こんなことが書いてありました。


 ネットを通じて、彼らはネガティブ情報を浴びている。「耳年増」状態だ。身近な大人からは、「そんなことじゃ将来困るよ」と何度も何度も釘を刺される。その結果「社会はつらく厳しい」というイメージが刷り込まれる。真面目な子は「自分はきっと社会で通用しない」と思い込んですらいる。社会を知る前に。

 若者の「頭でっかち」は、私たち大人が良かれと思って発した言葉でできている。

 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年2月26日・朝刊、10版、13ページ、「ネット点描」、原田朱美)


 そこで、改めて「耳年増」とはどういうことなのか、国語辞典を引いてみました。『岩波国語辞典・第3版』、『新明解国語辞典・第4版』、『現代国語例解辞典・第2版』、『旺文社国語辞典・改訂新版』、『明治書院精選国語辞典・新訂版』には載っていません。今後、新たに載せられることはないでしょう。驚くことに、『日本国語大辞典』にも載せられていないのです。

 載っているのは、次の辞典です。


 『広辞苑・第4版』  (若い女性が)他人の話を聞くことで、経験はないが十分な知識を得ていること。多く、性的な知識について言う。

 『三省堂国語辞典・第5版』  〔俗〕経験はないが、聞いて、男女の間のことをいろいろ知っている・こと(人)。

 『明鏡国語辞典』 若くて経験が乏しいのに、聞きかじりの知識だけは豊富な女性。▼多く性的な知識についていう。


 上の記事には、「高3の男子生徒」や「大学の女子学生」の発した言葉などが引用されていますが、国語辞典に書かれているような「(若い)女性」の「性的な知識」というような話題ではありません。記事に使われている「耳年増」は、「頭でっかち」ということの比喩的な表現であるとしても、もっと適切な表現を探し出した方がよかったと思います。記事を書いた人の年齢が高くて、ふとこんな言葉が思い浮かんだのかもしれませんが、日常的な言葉ではないように感じます。

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