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2019年3月27日 (水)

言葉の移りゆき(340)

指字と墨字
 画面に指でサインをしてほしいという経験が増えてきているように思います。ペン先で、ということもありますが、自分の手の指先で、ということもあります。
こんな文章を読みました。
 「あ、サインでお願いします」
 と、言われたのだった。ん? ハンコじゃなくて? はい、ここに、指でいいんで、お願いします、と。配達のお兄さんがアイフォンみたいの出している。 …(中略)…
 それにつけても、アラワになった自分の「指字」が下手すぎて、不安2倍超えて4倍。もっと上手な気がしていたのはなぜ。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年3月15日・朝刊、13版、24ページ、「オトナになった女子たちへ」、伊藤理佐)
 この文章の見出しは「指字の不安」となっています。「指字」という言葉は以前から使われているのか、筆者がとっさに使ったものであるのかは知りません。けれども、しっかり落ち着いた言葉であって、何のことだろうかと疑問に思ったりはしない言葉です。
 国語辞典に載っていなくても、これからは載せてよい言葉だと思います。
 友達の背中に指で書いて、「なんと書いたか?」などと言って遊んだのも、文字を忘れて、机の上に「こうだったかな?」と指で予行演習をしたのも、「指字」という言葉にふさわしいことであったのかもしれません。
 話題は変わります。目の不自由な方が使うのが「点字」ですが、それでは、点字でない文字を何というのでしょうか。活字だけではありません。手書きの文字も含みます。漢字も仮名もアルファベットも数字も合わせて、要するに点字でないものを総称して、何と言うのでしょうか。
 点字でない文字のことを「墨字」と言うのだと聞いたことがあります。特別支援学校の教員が使っていました。墨字という言葉は誰が使い始めたのかは知りません。けれども、点字の対立概念を表す言葉としてぴったりの言葉であると思います。
 これも国語辞典には載っていませんが、載せてもよい言葉だと思います。
 珍しい言葉を発掘して載せるのが国語辞典の役割ではないでしょう。「指字」や「墨字」というような、生活に必要な言葉を載せるのが国語辞典の使命であると思います。

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