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2019年4月 3日 (水)

言葉の移りゆき(347)

「いじる」という言葉の意味

 ニュースなどを書く記者は時間が限られていますから、時に言葉の誤用があっても大目に見なければなりません。けれども論説やコラムを書く人は、言葉の使い方をしっかりと吟味しなければなりません。しかも、流行語などをもてあそぶことをしないで、日本語として定着した使い方を守るべきだと思います。
 前回の「いじる」について、続けることにします。「いじっていただいて、ありがとうございます」というのは、笑いを誘うための言葉遣いに過ぎません。いじめ問題と同列に扱うことが、既におかしな論法です。最近の「天声人語」は、文章の前半(まさに50%程度の長さ)を落語の「枕」のように書いて、後半でやっと本論になるという書き方が多くなっています。(かつての「天声人語」はそんな馬鹿げた文章を書いておりません。)
 前半が冗長であるから、後半が生きてこないのです。かつての「天声人語」の筆者に学ぶ姿勢を持たなければなりません。日本語の正しい使い方も、身に付けてほしいと願います。
 さて、現在の「天声人語」の筆者が国語辞典をひもとくことを忘れておられるかもしれないと懸念して、国語辞典を引用します。

 『明鏡国語辞典』 ①指先などで触れてもてあそぶ。「指先で髪を-」「時計を無断で-な」 ②慰みごととして、手任せに物事を行う。「庭〔カメラ〕を-」 ③機構・構造体など、組織だったものの一部に手を加える。「組織を-」「これ以上文章を-・ってもよくはならない」

 『現代国語例解辞典・第2版』 ①指先でなでたり、ひねったりする。「髪をいじる」 ②なぐさみに、収集物などをもてあそぶ。自分の場合は謙遜の気持ちをこめて言う。「骨董をいじる」「ギターをいじる」 ③物事にあれこれと手を入れて変えたり、動かしたりする。「文章をいじって駄目にする」

 『三省堂国語辞典・第5版』 ①(指で)むやみに、さわる。 ②楽しみで、何かを手にする。あつかう。「カメラを-・庭いじり」 ③〔しなくてもいいのに〕さわって(動かして)みる。「おできを-・機構を-」

 『岩波国語辞典・第3版』 ①手でさわったり、なでまわしたりして、もてあそぶ。いじくる。 ②興味をもって、あれこれと集めたり、吟味したりする。「骨董を-」 ③しっかりした目的・方針もなしに、物事の本質的でない部分を変えたり、手を加えたりする。「会則を-」「機構を-」

 『新明解国語辞典・第4版』 ①用事も無いのに、(やたらに)手でさわったりなでまわしたりする。 ②〔厳密な意味の研究ではなく〕興味本位に・(道楽で)物を集めたり調べたりする。「盆栽を-・最近は少しばかり?外をいじってますよ」 ③〔その任にあるという、ただそれだけの理由から〕制度・機構を、どうでもいい程度に部分的に改変する。

 例文まで細かく引用しました。もう十分おわかりのことと思います。「いじる」ことの対象は、たいていは物事です。人を対象にしても、「人」全体や、人格に対して「いじる」という言葉は使いません。体のごく一部である、髪とかおできとかを「いじる」ことはありますが、全人格を破壊させるようなことにまで「いじる」という言葉は使いません。
 「いじる」という言葉に、「からかう」という意味はありません。まして、それを「いじめる」にまで拡大させるのは強引に過ぎます。
 新聞の看板であるようなコラムで誤用が始まると、それがどんどん広まっていくことでしょう。言葉を正しい方向に導くのも、誤解・曲解に導くのも、新聞の力であるのかもしれません。

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