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2019年4月10日 (水)

言葉の移りゆき(354)

「大人な」、「離婚な」、「ドラマな」


 「元気だ」という形容動詞の連体形は「元気な」です。「元気」という言葉は名詞にもなりますから、「元気な」は、名詞に「な」という言葉が付いたという考えも成り立たないわけではありません。けれども、その場合、「な」とはいったい何なのかという説明はなかなか難しいと思います。
 次のような文章に出会いました。ここに書かれていることには、全面的に納得します。


 電車内の広告です。人気のアイスの名前が〈大人なガリガリ君〉。大人にも食べてほしいアイス、ということでしょう、「大人の」でないところが注目点です。 …(中略)…
 「大人のアイス」は大人用のアイス、「大人なアイス」は大人の雰囲気のあるアイス。広告は後者の意味を持たせたのでしょう。
 担当編集者を通じて製造元の赤城乳業に聞くと、「ガリガリ君は子どもなので『な』にした。『の』だと子どもでなくなる」との答え。やはり思った通りでした。
 「大人な」に対して「子どもな」も見かけます。「子どもな人」と言えば、少年少女ではなく、子どもっぽい人のことを指します。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年1月12日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 ドラマのタイトルに「離婚なふたり」というのがありました。ドラマそのものは見ておりません。紹介記事には次のように書かれています。

 夫婦を描いて人気の脚本家、野田隆介の新作は、夫の会社が倒産してすべてを失った夫婦がヨットで旅に出るというお話。野田は雑誌の取材に「夫婦はそもそも他人。他人同士が一緒に困難を乗り越えるで、絆が生まれる」……ってどうよ、夫婦ってそんなキレイごとじゃないよねとのツッコミは想定内のようで、野田自身が妻から離婚してと言われる。その妻は「理由らしい理由がない」って、それが一番困るんですが。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年4月5日・朝刊、14版、32ページ、「試写室」、都築和人)

 この紹介記事は、文脈がゴタゴタしていて、何を述べているのかよくわからないのですが、ともかく「離婚なふたり」は、「離婚のふたり」=離婚したふたり、ではないことは確かです。
 この「な」の使い方は、「大人なアイス」というのと同じであると言えるでしょう。
 私たちは、ドラマそのままをたどるような「ドラマの生き方」をしようとは思いません。けれどもドラマに引き込まれるのは、そのドラマのような生き方も少しは取り入れてみようという思いがあるからかもしれません。すなわち、「ドラマな生き方」に引かれるところがあるということでしょう。

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