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2019年4月17日 (水)

言葉の移りゆき(361)

「はしゃぐ」と「はしゃぎまわる」の関係

「はしゃぐ」という言葉を『三省堂国語辞典・第5版』で引くと、次のように説明されています。


 〔子どもが、うれしいときなどに〕うきうきして、さわぐ。

 はしゃぐのは、子どもに限った行動について言う言葉なのか、ちょっと疑問が残ります。
 さて、こんな文章がありました。


 はしゃぎ声が恐い。工事の騒音が気になる。時を告げる鐘の音もつらい。愛媛から大阪に引っ越したあと、自分の寝室から出られなくなった。「都会恐怖症」のクロサイの話である。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年3月23日・朝刊、13版、1ページ、「天声人語」)

 「はしゃぐ」ことは、本人にとっては心が浮き立つことの現れかもしれませんが、他者にとっては迷惑なことと言ってもよいでしょう。
「駅と電車内の迷惑行為ランキング」というものの1位が「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」になっているということについて述べた文章に、こんなことが書かれていました。


 1位が長年変わらない理由のひとつに、選択肢の表現もあるのではないでしょうか。子どもがはしゃぎまわるのも困ったもんだけど、「はしゃぎまわり」という名詞で表現すると、迷惑な感じがアップします。
 「ひったくる」が「ひったくり」、「口を利く」が「口利き」になると、急に犯罪行為になります。選択肢を「子どもがはしゃぐ」に変えると、結果はどうなるでしょうか。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2018年12月15日・朝刊、be3ページ、「B級言葉図鑑」、飯間浩明)

 「はしゃぐ」は場所が動かない感じですが、「はしゃぎまわる」はあちこち動き回って騒いでいる感じです。「はしゃぐ」と「はしゃぎまわる」とに大きな差があると思います。「はしゃぎまわり」という名詞で表現したから、迷惑な感じがアップするわけではないでしょう。
 「ひったくる」と「ひったくり」、「口を利く」と「口利き」との関係は、それが別の意味に転用されて(すなわち、意味が限定されて)犯罪行為を表す言葉になったということです。
 選択肢を「(子どもが)はしゃぎまわる」から「はしゃぐ」に変えると、結果は、当然変わってくるでしょう。(数値が減るはずです。) 選択肢を「(子どもが)はしゃぎまわる」から「はしゃぎまわり」に変えても、結果は、変わらないだろうと思います。
 それにしても、『三省堂国語辞典』の編纂者としては、「子どもが……」という限定だけは外したくないという考えで貫かれているようです。大人だって、はしゃいだり、はしゃぎまわったりする人はいると思われますのに。

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