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2019年5月15日 (水)

言葉の移りゆき(389)

「仮名にしてもわからない」なら、漢字と振り仮名の表記を


 警察署の建て物に「けいさつ」という平仮名書きがされているのを、あちこちで見かけます。「警察」という漢字がわからない人であっても、「けいさつ」という文字を見ればわかる、という論理は理解できますが、そのような人は何人いるのでしょうか。小学生向けの表記かなと思ったりします。
 だから、次のような記事にも考えさせられます。


 皇居の外堀で工事をしていました。〈しゅんせつ工事のお知らせ〉と看板が出ています。何が行われているのか、ぱっと見て分からないも多いんじゃないでしょうか。 …(中略)…
さる工場内で「じんあい」と書いた箱を見たことがあります。漢字で書けば「塵埃」で、「ちり・ほこり」のこと。使用済みの容器などでなく、ちりやほこりだけを捨ててください、ということか。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年3月16日・朝刊、be3ページ、「B級言葉図鑑」、飯間浩明)

 この記事には、「仮名にしても分からない」という見出しがついています。私は海辺に住んでいます。小さい頃から時々、海辺や川で浚渫工事が行われていましたから、「しゅんせつ」という言葉は聞きました。けれども、その言葉に馴染みがない人が「しゅんせつ」という文字を見たら、何のことかわからないでしょう。
 皇居の外堀で見かける「しゅんせつ」と、さる工場内での「じんあい」とは、対象者がまったく異なります。皇居の外堀では、その文字を見る人は不特定多数で、外国人も含まれるでしょう。工場内では、その文字を見る人は作業をしている特定の人たちです。
 「仮名にしても分からない」という判断をするのなら、漢字で書いて、「浚渫」に「しゅんせつ」と振り仮名をする方がよっぽど親切です。発音だけでは類推ができなくても、漢字を見たら何らかの方向性を見出せるかもしれません。
 工場内のものは「塵埃」と書くのがよいでしょう。漢字が難しいから平仮名にしたというのでしょうが、工場内の人にとっては、平仮名書きをすることによって馬鹿にされたという思いにならなければよいと思います。
 ただし、工場内の「じんあい」は、本当に、ちりとほこりだけを集める箱なのでしょうか。その工場の中の取り決めで、小さなゴミも含まれるのかもしれません。あるいは、もっと違ったものまでを集めることもあるかもしれません。そういう意味を込めて「じんあい」と書かれているのなら、「塵埃」という文字を使わなかった理由があることになります。小さな集団内では、言葉に特別な意味を加えることもあるでしょうから、一概に断定はできないことがあると思います。

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