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2019年5月14日 (火)

言葉の移りゆき(388)

「省力」と「省人」


 「省力」とは、機械化などによって作業の手間や労働力を省くことです。悪いイメージは持ちません。その「省力」を何段階も進めたような、露骨な言葉が使われはじめているようです。
 海上自衛隊が「省人化」を強化しているという記事がありました。


 人繰りと船繰りが課題となるなか、少人数で効率的に任務にあたる「省人化」に力を入れている。 …(中略)…
 防衛省は昨年末に策定した防衛計画の大綱で、「省人化」を狙った施策を盛り込んだ。 …(中略)…
 新型護衛艦22隻には「省人化」と「複数クルー制」という二つの工夫を施す。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年4月29日・朝刊、13版S、3ページ、古城博隆)

 「省力」という言葉には、働いている人がラクになるという、望ましい印象があります。それに対して「省人」という言葉は、働いている人を少なくするということですから、働けなくなる人が生じます。人を物体のように見て、それを切り捨てていくような印象が伴います。気持ちの悪い言葉です。
 記事によると、少子化によって隊員を確保することが難しくなっているということが背景にあるようです。だから少ない人数で任務を推進する必要があるということは理解できます。
 けれども、「省人」という言葉には、これまでに働いていた人数を少なくするというイメージがあります。人をモノのように切り捨てていくという感じです。
 少ない人数で任務を推進するためには「省力」が必要でしょうが、少ない人数の中でのやりくりを「省人」と言うのはおかしいと思います。
 海上自衛隊が「省人」という言葉を使っているのか、新聞が勝手に使っている言葉であるのか、わかりません。けれども、こういう言葉を使いはじめるときには、言葉の印象や、その言葉の与える影響をじゅうぶんに検討しておかなければなりません。

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