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2019年5月12日 (日)

言葉の移りゆき(386)

「レジェンド」とは、事柄を表すのか、人を表すのか

 「レジェンド」という言葉を、日本語に直すと「伝説」だそうです。もし概念が同じであるのなら、伝説のことをわざわざレジェンドという言葉に置き換える必要はありません。
 彦根市のひこにゃんが休業せざるをえなくなったという状況について、こんな記事がありました。


 活動を委託されていた団体が「自主運営」に名乗りを上げて長期休業は回避されたが、「ご当地キャラのレジェンド(伝説)」に一体何が起きたのか。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年4月12日・夕刊、3版、13ページ、大野宏)

 私たちは、「ご当地キャラのレジェンド(伝説)」などという表現を平気でするような、言葉の感覚の持ち主になってしまっているのでしょうか。
 日本語の「伝説」は、昔から語り伝えられてきた話、つまり言い伝えという意味です。伝説とは、事柄を表していて、人を表すものではありません。
 「伝説のご当地キャラ」というのと「ご当地キャラの伝説」というのは同じ意味ではありません。
 「伝説」を「レジェンド」に置き換えてみます。「レジェンドのご当地キャラ」というのは、伝説化したキャラということでしょう。けれども、「ご当地キャラのレジェンド」という表現は、キャラについての伝説という意味に過ぎません。ひこにゃんにどんな伝説があるのかを説明しているに過ぎないのです。
 もし「レジェンド」に、〈伝説となった人(あるいは人格化したもの)〉という意味を付与しようとしているのなら、「レジェンド(伝説)」という表記は正しくないということになります。
 たった10年や20年で、伝説はたやすく生まれたりはしません。けれども、新聞や放送は、突然現れたようなものにまで「レジェンド」という称号を与え続けてきました。そして「レジェンド」の大安売りを続けることによって、この言葉が安っぽく聞こえて、何の価値もないもののように響くようになってしまいました。
 この記事にも、ものごとを大袈裟に書こうとする姿勢や、外来語を優先して日本語を軽んじる姿勢が現れています。

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