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2019年5月27日 (月)

言葉の移りゆき(401)

答え方が見つからないような質問

 前回の続きです。大学入学共通テストの2回目の試行調査の国語の記述式問題のことです。
 問1は、「【文章Ⅰ】の傍線部A『指差しが魔法のような力を発揮する』とは、どういうことか。三十字以内で書け(句読点を含む)。」という質問です。
 傍線部は、次のような文脈にあります。


 ことばのまったく通じない国に行って、相手になにかを頼んだり尋ねたりする状況を考えてみよう。この時には、指差しが魔法のような力を発揮するはずだ。なんと言っても、指差しはコミュニケーションの基本なのだ。

 この質問に対して、「正答例」として示されているのは、次の表現です。

 ことばを用いなくても意思が伝達できること。(21字)

 この「正答例」は、平凡な答えです。「魔法のような力」という力強さは、どこにも表現されていません。
 そして「正答の条件」として3つのことが示されています。

 ①30字以内で書かれている
 ②ことばを用いない、または、指さしによるということが書かれている
 ③コミュニケーションがとれる、または、相手に注意を向けさせるということが書かれている

 ①は当然です。
 ②の「または、指さしによるということが書かれている」というのは不可解です。傍線部に「指差し」という言葉が使われているのですから、それとは違った言葉を用いようとするのが、受験生の心理というものでしょう。
 ③については、傍線部が「魔法のような力を発揮する」と言っているのですから、「コミュニケーションがとれる、または、相手に注意を向けさせる」という答えは弱いと思います。
 長文になるので引用していませんが、引用部よりも前で書かれていることを読み取れば、〈言葉を用いず、頭や目の向きも用いない状況であっても、指差しひとつで、相手になにかを指し示したり、相手の注意を向けさせたりできること〉を「魔法のような力」と言っているのです。はっきり言うと、正答条件として挙げている「コミュニケーション」というのは、傍線部より前の部分では使われていない言葉です。
 結論として言うなら、問1は、設問として成立しない(30字以内で書くことはできない)ということになるでしょう。
 こういう問題であれば、大学入試センターの考えと、受験生の自己採点に大きな差が生まれるのも当然でしょう。
 私は、だから国語の記述式問題はやめるべきだとは思いません。受験生を惑わすような設問を差し控えて、正答と誤答の見分けがつくような出題に磨きをかけなければならないと思うのです。

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