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2019年5月 2日 (木)

言葉の移りゆき(376)

「文明」とは何か

 「文化」と「文明」とは同じではありません。それとともに、時代が進めば何にでも「文化」や「文明」という言葉を使ってよいわけではありません。
 現金を使わないで、キャッシュレスで決済することは、「文化」や「文明」であらわすことなのでしょうか。国が先頭を切っておかしな言葉遣いを広めようとしてはいけません。
 こんな文章がありました。


 「キャッシュレス文明」とまでたたえる経産省。せいぜい数十年の歴史しかないものが「文明」なら、動物の骨や魚の干ものなどに始まり、金属の硬貨が生まれ、紙っぺらでも信用されるお札へと、何万年もかけて進化した伝統的貨幣は何と呼ぶ?
 その新文明参画の切り札として政府が目を付けたのは、消費憎税対策だ。キャッシュレスの買い物には、5%のポイント還元を付ける。
 (毎日新聞・中部本社発行、2019年3月27日・朝刊、13版、3ページ、「水説」、福本容子)

 記事の筆者の意見に同感です。キャッシュレスの買い物に5%のポイント還元を付けるという強硬策で「キャッシュレス社会」を推し進めようとし、それを「文明」と呼ぶ。なんと硬直した考えなのでしょうか。「文明」という言葉を宣伝文句に使ってほしくないと思います。
 「文明」とは、科学技術などが進歩・発展を遂げることによって、物質的な面で生活が豊かになっていくことでしょう。キャッシュレスで決済できるようになったのは科学技術の進歩によるのでしょうが、そのような社会の仕組みは「文明」と呼ぶようなものではありません。キャッシュレスにすれば生活の豊かさを実感できるわけではありません。
 一方、「文化」とは、その社会に固有な思考・行動・生活などの様式のことをあらわしますが、これとて、数十年で形成されるものではないでしょう。
 単に、仕組みや制度であるに過ぎないものを「文明」と呼んで好感を振りまこうとしているのは、イメージだけが先行した「アベノミクス」と軌を一にしているようにも思えます。
 政治だけではありません。あらゆる分野において、私たちは正しい言葉遣いに心がけなければならないと思います。

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