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2019年5月 6日 (月)

言葉の移りゆき(380)

「ちょっと難しい」という言い方

 「ちょっと」という言葉の意味は、わずか、少し、ということです。けれども、日常生活の中では、それ以外の意味でも使っています、こんな文章を読みました。


 人からの依頼を断るとき、「スケジュールを考えると、ちょっと難しいです」と言うことがある。「大変、極めて」難しいから断っているのだが、口から出てくるのはなぜか「ちょっと」という言葉だ。 …(中略)…
 この用法は、辞書では「否定や難しさを表す表現と共に現れて、『そう簡単にはできない』『相当難しい』ことを婉曲的に表す」などというように記述されている。 …(中略)…
 他にも、「彼は地元ではちょっとした有名人だ」のように、「かなり」とか「そこそこ」に相当するような用法もある。こういったいくつもの用法とその使い分けを、私たちはいつの間に身につけたのだろうか。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年4月10日・朝刊、13版S、26ページ、「川添愛のことばことばスムージー」、川添愛)

 書かれていることに同感です。ただし、「ちょっと難しいです」というような表現は、婉曲的な表現ばかりなのでしょうか。必ずしもそうとは言い切れないように思います。
 極めて難しいことを、なぜ「ちょっと難しい」と言うのかということを考えたときに、思い浮か
ぶのは、「ちょっとやそっとでは」という言い回しです。「ちょっとやそっとでは難しい」という言い方を省略して「ちょっと難しい」と言ったと考えれば、婉曲ではなく直接的な表現です。
 「ちょっとした有名人」というのも、「ちょっとやそっとで(=いい加減な言い方で)表現するのは難しい有名人」と考えることも可能でしょう。
 小型の国語辞典も、「ちょっと」の「相当難しい」という意味を記述するようになりました。けれども、実際の「ちょっと難しい」という表現は、それぞれの場面において、〈少しだけ難しい〉、〈かなり難しい〉、〈まったく難しい〉などの段階的な色合いが込められて発言されているように思われます。

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