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2019年6月 2日 (日)

言葉の移りゆき(407)

「杖を使う」、「電車を使う」、「駅を使う」

 

 

 わからない言葉に出合ったとき、国語辞典を使って調べます。歩くことが困難である場合には、杖を使うことがあります。小さな物体である国語辞典や杖については、「使う」と表現することがあります。
 ふだんの生活では電車に乗ります。電車に乗るためには駅へ行きます。けれども、「電車を使う」とか「駅を使う」とか言うことはありません。これはあくまで私の言語感覚です。
 「使う」という言葉には、ある事柄にある物を役立てるという意味や、操ったり思い通りに動かしたりするという意味があります。駅や電車は、自分の手で操るためには大きすぎるのです。
 「駅よ、使いやすく」という大きな文字がテーマになっている記事がありました。3人の意見が掲載されていましたが、そのうちの一つには、次のような言葉がありました。

 

 

 杖を使えばなんとか歩けたものの、以前の自分とはまったく違います。 …(中略)…
 当時、東京の自宅の最寄り駅は地下鉄の駅でしたが、電車はできるだけ使わないようになりました。 …(中略)…
 階段を使うとなればもっと大変です。 …(中略)…
 体が不自由な人やベビーカーを使う人が、公共交通機関が使いにくいために行動の範囲を制限される現状は残念です。 …(中略)…
 たとえ杖や車椅子を使うようになっても、行きたいところに行ける社会であってほしいものです。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年4月26日・朝刊、13版S、15ページ、「耕論」、かじやますみこ、聞き手・高重治香)

 

 この他に、「電車を使わない」という表現がもう1箇所ありました。この記事は、語っている人と「聞き手」とは別人です。語っている人の言葉遣いが正確に文字化されているかどうかは、わかりません。テーマの「駅よ、使いやすく」に合わせて、「使う」という言葉の使い方が広がっているかもしれません。
 「電車を使う」「駅を使う」という言葉遣いには、人間の思い上がりがあると思います。何でも自分の思い通りにできるというような感覚です。
 言葉は、使う範囲や使い方にも、十分な配慮が必要だと思います。意味が通じたらそれでよい、というようなものではありません。

 

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