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2019年7月 4日 (木)

ふるさと江井ヶ島(5)

かぶしき【株式】


 江井ヶ島では、戦後(昭和20~30年代)の頃までは、江井ヶ嶋酒造株式会社のことを「かぶしき」と呼んでいた。それ以前から、この言葉は長く使われていたのだろう。株式会社という組織が珍しかった時代に設立されたので、社名を言うまでもなく、「かぶしき」と言えば、この会社のことであると了解されたのであろう。
 西宮市から神戸市に至る灘五郷に対して、明石市を中心とした酒造地帯を西灘と呼ぶことがある。江井ヶ嶋酒造は、地域の酒造家が合同して、明治初年に株式会社として設立したものである。
 日経ビジネス(編)『会社の寿命 盛者必衰の理』(新潮文庫)の巻末に「日本の会社ベスト100の変遷」という資料が掲載されている。明治29年(上期)の総資産額によるデータが掲載されているが、その80位に「江井ヶ島酒造」の名があがっている。この年トップの「鐘淵紡績」の総資産額が3284千円であるのに対して、「江井ヶ島酒造」は213千円となっている。
 江井ヶ嶋酒造は、日本酒のメーカーのように考えられているが、実際には各種の酒類を醸造する総合的な会社である。このような会社は兵庫県内では唯一で、全国的に見ても珍しいと思われる。
 『江井ヶ嶋酒造株式会社百年史』の巻末にある「年表」によれば、江井ヶ嶋酒造株式会社の発起人会が開催され、会社設立願書が知事に宛てて提出されたのは1888年(明治21年)のことで、この年の6月11日に設立の許可が出ている。資本金3万円で会社が設立された。1888年は神戸-姫路間の山陽鉄道(後に国有化)が開通した年で、翌1889年には大日本帝国憲法が公布されている。
 日本初の株式会社は、国立銀行条例に基づき1873年(明治6年)7月20日に設立された第一国立銀行だと言われている。また、一般的な会社法規である商法に基づき設立された日本で最初の株式会社は、1893年(明治26年)に設立された日本郵船だとも言われている。
 この会社を「かぶしき」と呼ぶのは、周辺を探しても株式会社など無かった時代の、郷土自慢の誇らしさが詰まった言葉であったと思う。江井ヶ島に有力な銀行の支店があったことは何の不思議もない。
 江井ヶ嶋酒造株式会社は、その時から、ただの一度も社名を変更することなく、また、本社所在地を他の土地に移すことなく、今日まで続いている。
 『江井ヶ嶋酒造株式会社百年史』、主要製品として、次のものが挙げられている。右側は商品名。
  清  酒   神鷹、日本魂
  合成清酒  百合正宗
  焼  酎   白玉焼酎、むぎ焼酎福寿天泉
  味  醂   白玉本みりん
  ウイスキー  ホワイトオークウイスキー
  ブランデー  シャルマンブランデー
  果 実 酒   シャルマンワイン、白玉ワイン
  リキュール  白玉梅酒
  雑  酒 福建老酒
 言うまでもないことであるが、同じ商品名のもとに、さまざまな等級や容量のものが作られている。日本酒の銘柄はかつて日本魂(ルビ=やまとだましい)が中心であったが、現在は、東京方面で人気のあった神鷹(ルビ=かみたか)を中心的な銘柄として推進している。
 若山牧水に「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ」という歌があるが、酒と「白玉」という言葉の関連性は深く、焼酎、味醂、ワイン、梅酒にこの言葉を用いている。

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