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2019年8月20日 (火)

言葉の移りゆき(457)

「!」と「?」の共存


 作家の故・井上ひさしは、日本語の文章に「!」という符号を使うことを嫌ったようです。ところが、現在の文章には「!」を2度重ねた符号もよく見かけます。
 さらに、宣伝文句などには、「!」と「?」とを並べた符号もあります。効果を狙おうと思いつつ、符号の過多で何の効果も見せない場合もあります。
 「!」と「!」とか、「!」と「?」とかの二重の符号は、新聞記事には似つかわしくないと思っていました。けれども、今ではそんなことには抵抗もなく使っている新聞があります。見出しで、このような使い方をされると、新聞もチラシの宣伝文句のような記事を書いているのかと思ってしまいます。しかも、スポーツ面や芸能面ではなく、堅いはずの経済面に現れているのです。
 こんな見出しの記事がありました。


 老後2千万円もいらない!? / セミナー盛況 金融機関も試算 / 75歳以上 食事・外出減る / 1515万円で十分 分析も
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年7月30日・朝刊、14版、6ページ、見出し)

 老後に2千万円が必要だとして資産形成を促した金融庁の審議会の報告書が出たことを機に、ほんとうに老後資金はいくら必要なのかという話題がにぎわっています。2千万円という数字が適切なものであるのかという議論も盛んです。
 パソコンでは、!?を2文字として打つことになってしまいますが、新聞では2つの符号を1文字としています。
 さて、この見出しの1行目は横書きなのですが、この符号はどういう意味なのでしょうか。「老後2千万円もいらない」に「!」と「?」が付いています。強調しておいて疑問を投げかけているのです。この強調と疑問は、同時に起こる思いなのでしょうか。それとも「!」の後に「?」の気持ちが生じているのでしょうか。
 私はこの見出しを、「老後2千万円もいらない!」というのは「?」(本当)か、という意味に解釈しましたが、それで正しいのでしょうか。「1515万円で十分」だという分析もあるということは記事に書いてありますが、その試算が正しいというようには断言されていません。要するに、記事全体として、一定の結論を述べるわけにはいかなくて、符号を並べてお茶を濁しているのです。
 符号で誤魔化すような記事は、大きな問題点を、抱えていると思います。

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