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2019年8月 2日 (金)

言葉の移りゆき(439)

「言及」という言葉の使い方


 言葉は、その言葉の持つ意味とともに、用法も大切です。政治家などは自分勝手な言葉遣いをすることがありますが、一般の人々においては、あるいは教育の世界では、正しい言葉遣いが求められます。
 こんな文章を読みました。


 梅雨の訪れとともに、千葉県の銚子漁港には年間を通じ最も脂がのったマイワシがやってくる。旬は6月末から7月半ば。地元では「入梅いわし」と呼ぶ
 銚子市水産課に聞くと、江戸後期の文献でも言及されているという。「銚子では誰もが知っている言葉です」と長谷川政代さん(61)。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年6月12日・朝刊、14版、1ページ、「天声人語」)

 コラムの文章の冒頭の部分ですが、「銚子漁港には年間を通じ最も脂がのったマイワシがやってくる」という表現は正しいのでしょうか。まるで銚子漁港を目指してマイワシが自分の意思で押し寄せる印象ですが、実際はそんなことはありますまい。周囲で獲ったマイワシの水揚げが銚子漁港ということでしょう。
 ところで、2番目の段落で使われている「言及」というのは、どういう意味でしょうか。「入梅いわし」という呼び方が、江戸後期の文献に見えるという意味でしょう。
 「言及」という言葉の意味は、例えば『チャレンジ小学国語辞典・第4版』には、次のように書かれています。

 話を進めて、あることについても意見や考えを述べること。例「インタビューの中で、政治の問題点について言及する。」

 言及というのは、話題がある事柄に及ぶことを表す言葉です。何らかの話のまとまりがある場合に使います。文献の中に、呼び方が紹介されているというような場合に、「言及」という言葉を使うのはふさわしくありません。
 入試問題に使ったり、問題集の例文に引用したりする場合は、言葉遣いを厳密に検討するでしょう。そうした場合、この文章は、難点を含むということになってしまうでしょう。

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