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2019年8月18日 (日)

言葉の移りゆき(455)

「多目的」には、いくつ目的があるのか

 初めて「多目的トイレ」というのを見たとき、その意味がわかりませんでした。トイレは大便・小便の用をたすところですが、多目的トイレは従来のものより広く作られているようです。車椅子で入れるようになっていると思ったのですが、それなら「車椅子用トイレ」と言えばよいことで、それ以外のどんな目的を持ったものであるのか、わからなかったのです。
 こんな文章を読みました。


 鉄道の駅がバリアフリーを推進していて、エレベーターが設置されることが多くなった。トイレも車椅子で入れるような広いトイレが設置されている。赤ん坊のオムツを取り替えることもできる。大変便利である。
 で、そういうトイレにも名前を付けなければならなくて、ある私鉄が付けた名前が、多目的トイレという。
 多目的トイレ。何だか変ではなかろうか。オムツを取り替えるのは、確かにトイレ本来の目的とは異なる。だから多目的であるという。下校した高校生たちが、制服から私服に着替えて街に繰り出す。そういうためにも確かに使える、しかし、それで「多目的」であろうか。
 (金田一秀穂『金田一秀穂の心地よい日本語』、KADOKAWA、2016年3月24日発行、57ページ)

 「多目的」という言葉は、今では「多目的ホール」とか「多目的広場」とかの使い方もされています。
 「多目的」の「多」という言葉は、3つや4つの数字だけではない、もっと多くを思わせます。「多目的ホール」や「多目的広場」はどういう目的にでも使えそうです。実際にそういう使われ方をしているのなら、言葉どおりでしょう。
 けれども「多目的トイレ」は違うはずです。そのトイレを使ってできる事柄は限られているでしょう。バリアフリーということの宣伝にはなるでしょうが、大袈裟な言葉であることは否定できません。まして、車椅子やオムツ以外の、勝手な用途に使われたら、名付け方が良くなかったと言わなければなりません。
 今日の私の文章も「多目的」でいきます。金田一秀穂著、『金田一秀穂の心地よい日本語』という書名は、ちょっとくどいように思います。最近はこういう書名が増える傾向を感じます。短い書名の方が印象に残ります。

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