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2019年9月13日 (金)

明石日常生活語辞典・追記(5)

仲間内の言葉を作り上げる


 小さな子どもが言葉を覚えるときは、周りの人が使っている言葉を真似て使うようになって、その使い方に慣れて、身に付いていきます。言語形成期という時代に身につけた言葉は、修正しようとしてもなかなかうまくいかないこともあるようです。
 けれども、東京の大学に進学した若者が、短い期間に東京言葉を身に付けてしまうこともあって、驚きます
 こんな記事を読みました。全国高校野球選手権大会に出場した中京学院大学中京高校の野球部について書かれた文章です。


 野球部は全寮制で、部員には兵庫県や大阪府出身者が多い。地元の岐阜県民は、元君(多治見市出身)を含めて3分の1ほど。
 「壁」となったのは言葉だ。「なにやっとんねん」。練習中にミスをすると関西弁でげきが飛ぶ。岐阜出身の増田大晟君(3年)は「突然怒ったのかと思ってびっくりした」と明かす。
 互いの言葉に慣れず、寮でも学校でも距離が縮まらない日が続いた。ある日、関西勢が岐阜県東濃地域でよく使われる「~やもんで(だから)」「~やら(だね)」といった方言に興味を示し、口にし始めた。
 しばらくすると、岐阜県民も「正味な」「ちゃうやん」などの関西弁を使うようになった。今では出身地域に関係なく、みんながそれぞれ好きな言葉で話す。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年8月19日・朝刊、14版、26ページ、松山紫乃・藤田大道)

 方言は、仲間内の言葉だと言ってもよいでしょう。地元同士の間柄では地元の言葉を使い、関西人同士では関西弁を使います。異なった地域の人と話すときには、意識して全国共通語を使おうとします。
 高校の野球部員同士は仲間内ですが、出身地により基盤となっている言葉が違っています。この記事にあるような言葉遣いによって、新たな仲間内の言葉が形成されていくのは興味深いことです。
 練習中のミスに対して「なにやっとんねん」というげきが飛ぶのはもっともなことかもしれません。けれども、相手のミスをかばってやろうとするような気持ちがあるときには、「べっちょない」とか「だんだい」「だんない」のような関西言葉が飛び出してもよいのではないでしょうか。仲間内に、温かみのある言葉が少しずつ増えていけば嬉しいことだと思うのです。

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