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2019年10月 1日 (火)

明石日常生活語辞典・追記(23)

終助詞の「さ」


 大阪市西成区のあいりん地区で、高齢者や障害者らの介護をするヘルパーをしている方が、CDを自主制作したというニュースを読みました。その記事に、曲の歌詞が書かれていました。


 生きてりゃいいさ つらくても 生きてりゃいいさ げんきでよ いつかいい日も 来るだろう 親にもらった この生命 むだにはせんで 生きていく
 (朝日新聞・大阪本社発行、2019年9月7日・夕刊、3版、9ページ)

 記事の中で、歌詞は3カ所にわたって引用されていますが、ここでは最初のものだけを引用しました。
 これから述べることは、その歌詞をきっかけに考えたのですが、その歌詞を批判する意図はまったくありません。考えたことの出発点が、記事であったというに過ぎません。

 「生きてりゃいいさ」の、「さ」という言葉について考えました。実は、「明石日常生活語辞典」では、「さ」という終助詞を載せていません。
 「いいさ」の「いい」は形容詞です。関西では「えー」と言うことが多いのですが、形容詞の終止形に終助詞の「さ」が付いたものと考えるべきでしょう。
 また、「元気さ」という言い方をする場合の「さ」は、形容動詞の活用語尾と考えるべきでしょう。「きれいな写真さ」と言う場合は、名詞に続けて使っています。首都圏の人たちは「……さ」という言い方を多用しているように思います。
 それに対して、関西の方言では「……さ」という言い方が現れることが少ないように思います。「あした(明日)・ あんた(貴方)とこ・へ・ い(行)き・まっ・さ。」とか、「それ・は・ わい(私)・の・ おも(思)いちが(違)い・やっ・た・ん・でっ・さ。」とか、言うことがあります。この「まっ・さ」は、丁寧語の「ます」が促音便になって、強意の終助詞「あ」と結びついて、「ますあmasua」の二重母音部分が「まっさmassa」になったと考えられます。「でっ・さ」は、丁寧語の「です」が促音便になって、強意の終助詞「あ」と結びついて、「ですあdesua」の二重母音部分が「でっさdessa」になったと考えられます。とは言え、「あ」という終助詞は、他の語と発音が融合することなく、単独で使われることはないように思います。
 「生きてりゃいいさ」という表現を、より関西の表現らしく言うならば、「生き・とっ・たら・ えー・ねん」になるのではないかと思うのですが、首都圏で使う「……さ」は、関西の言葉では「ねん」に近いのではないかと思います。終助詞「ねん」は、相手に念を押したり、強調したりするときに使う言葉です。

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