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2019年10月11日 (金)

明石日常生活語辞典・追記(33)

へっともない


 明石の言葉に「へっともない」があります。「へらへっともない」とも言います。「へらへっと」とも言いますが、短く「へっと」と言うことはありません。
 共通語で言うと、「やたら」「めったやたら」「むやみに」「むやみやたら」にあたります。「めちゃめちゃ」「めちゃくちゃ」「めちゃんこ」「めっちゃくちゃ」「めっちゃくっちゃ」と言っても、ほぼ同じような意味です。
 けれども、「へっともない」「へらへっともない」「へらへっと」という言い方には方言色が出ていると思います。川崎洋さんの文章を引用します。


 学校から帰ったらすぐに塾に行って、帰ってからまた夜おそくまで勉強して、夏休みなのに夏勉強で、地球の子どもなのにどこか他の星の中年のような、そんな子がいます。
 なかには、三度のごはんより勉強が好きという子もいるのでしょうが、ともあれこのように、むやみやたらとガリ勉するのを、兵庫の方で、「へっともないに勉強しよる」といいます。
 「へっともない」は、「むやみに」「やたらに」「とてつもなく」「もう馬鹿みたいに」というような意味で、さまざまな場合に広く使われることばです。「へらへっと」とか、「へらへっともない」ともいいます。
 「全力投球」というと、これは誉めことばですが、「へらへっともない」には、称賛の気味合いはありません。といって、軽蔑の感じもこめられてはおらず、「そうまでしなくてもいいのに」という、ややあきれた、ユーモラスなニュアンスがあります。
 「もうちょっと力を抜いたらどんなものだろう」「もう少し我々の一般の生理のリズムに近づいてくれないものかな」「どうも度が過ぎて、見ていられない」といった感じです。
 また、いわれた側として、そう、ぐさりと突き刺さる、罵りを感じることばではありません。
 (川崎洋、「母の国・父の国のことば わたしの方言ノート」、日本放送出版協会、1976年10月20日発行、196ページ~197ページ)

 「明石日常生活語辞典」では、「へっともない」を次のように説明しています。

 あまりにも度を過ごしている様子。ものごとに秩序や根拠が乏しい様子。「へっともないに・ はし(走)っ・たら・ こける・ぞ。」〔⇒やたら【矢鱈】、めったやたら【滅多矢鱈】、むやみに【無闇に】、むやみやたら【無闇矢鱈】、めちゃめちゃ【目茶目茶】、めちゃくちゃ【目茶苦茶】、めちゃんこ【目茶んこ】、めっちゃくちゃ【目茶苦茶】、めっちゃくっちゃ【目茶苦茶】、へらへっと、へらへっともない〕

 一つ一つの言葉の用例は「明石日常生活語辞典」をご覧いただきたいと思いますが、この本の副題を「-俚言と共通語の橋渡し-」としているように、俚言でも表現できますし共通語でも表現できます。近所の人同士なら「へっともない」の系列の言葉を使い、関西人同士なら「めちゃめちゃ」の系列の言葉を使い、関西人以外と話をするときは「むやみ」「やたら」の系列の言葉を使うというような、使い分けが行われても不思議ではありません。

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