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2019年10月 9日 (水)

明石日常生活語辞典・追記(31)

どっしゃげる


 面白くて、こんな言葉は他の地域にはないだろうと思うような言葉があります。「どっしゃげる」です。川崎洋さんにお話をしたら、きちんと書き留めてくださいました。


 自転車に乗れるように練習したのは小学生のときでした。路地で、はじめはうしろを友人に持ってもらい、どうやらいけそうになってから、友人に手を離してもらうのですが、「あああ」と思っているうちに自転車はこちらの意向など全然うけつけずに、ドブにはまったり、電柱にぶつかったりして、泥だらけになったりコブをこさえたりしながら、やっと自転車を乗りこなせるようになっていったものです。
 自転車に乗っていて電柱にぶつかり、ひっくり返ることを、兵庫県の明石で、「電信柱にどっしゃげて、ひっくり返った」といいます。ふつうに使われていることばです。
 衝突する、乗り上げる--という意味ですが、ユーモラスで、その上「!」をつけたくなるような派手な色合いを感じさせることばです。一人相撲--といったひびきがあるからです。衝突とはいえ深刻さがありません。衝突のリアルな写真でなしに、漫画ふうに描いたイラストというところでしょうか。
 「電車と自動車が、どっしゃげた」というふうにも使います。しかし、多くは「電信柱にどっしゃげる」「他人にどっしゃげていく」というような、「どっしゃげる」行為をした側の不注意で、彼のほうから一方的に衝突していくような場合に使われます。
 (川崎洋、「母の国・父の国のことば わたしの方言ノート」、日本放送出版協会、1976年10月20日発行、150ページ)

 川崎さんの文章に付け加えることはありません。この言葉の意味・用法を見事に説明してくださいました。
 「明石日常生活語辞典」では、「どっしゃげる」を次のように説明しています。

 《動詞・ガ行下一段活用》 進んで行って、立ちはだかるものにぶつかる。「じてんしゃ(自転車)・に・ の(乗)っ・て・ よそみ(余所見)し・とっ・て・ でんしんばしら(電信柱)・に・ どっしゃげ・た。」「はし(走)っ・とる・ ひと(人)・が・ ぎょーさん(仰山)で・ どっしゃげ・そーに・ なる。」〔⇒つきあたる【突き当たる】、つっきゃたる【(突き当たる)】、つきゃたる【(突き当たる)】、しょうとつ【衝突】(する)〕

 共通語で言うと「しょうとつする」や「つきあたる」になりますが、「しょうとつ」ほどの重大さや深刻さが少ない場合に使います。「つきあたる」は共通語を使っている感じがして、「つっきゃたる」や「つきゃたる」が地域の言葉という感覚になります。

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