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2019年10月 5日 (土)

明石日常生活語辞典・追記(27)

こうと


 高等学校の国語教科書『新版現代国語・三訂版』に載せられている「母の国・父の国のことば」には「こうと」という項目があります。川崎さんは、京・大阪の言葉だと書いていますが、明石でも使います。次のように書かれています。


 「こうと」を、一口で言わなければならぬとすれば、地味のことです。
 「あの人こうとな着物着てはるなあ」というふうに使います。京・大阪のことばです。しかし、「地味な人がら」とはいいますが、「こうとな人がら」とはいいません。主として、着物の縞柄、色、服装を対象にした形容詞です。
 「こうとなふうしてはるなあ」といえば、年令の割りには老けたよそおいをしているという意味になります。
 京都の店で、反物を手に取って女性同士話をしています。
A「これ私にはこうとどつしゃろ?」
B「そうどすな、ちょっとこうとどすね、もうちょっと派手なものがよろしおまっせ」
 この場合、反物が年相応と思えても、
B「いや、そんなことおへんえ」などとは、口が裂けてもいわないでしょう。ことに京都の女性ならば。
 ところで、「こうと」を、単純に地味といいかえて事が済むかというと、そうはいかないのです。「こうと」から「地味」を引き算すると、そこにどうしても残るニュアンスがあります。それをことばでいうとすれば、高尚、上品、垢抜け、洗練、渋い、すっきり、嫌味がない--でしょうか。
 (川崎洋、「母の国・父の国のことば わたしの方言ノート」、日本放送出版協会、1976年10月20日発行、96ページ~97ページ)

 この項目は、私への取材を元にしたものではありませんが、明石でも同じような意味で使います。
 「こうと」の品詞は形容詞ではなく、形容動詞です。それは、京、大阪も、明石も同じです。
 「明石日常生活語辞典」では、「こうと〔こーと〕」という見出しで、次のように説明しています。

 《形容動詞や(ナ)》 着物などが、落ち着いていて地味である様子。質素で上品な感じがする様子。「その・ きもの(着物)・は・ え(良)ー・けど・ あんた・に・は・ ちょっと(一寸)・ こーとと・ ちゃ(違)う・やろ・か。」

 川崎さんのように微に入り細を穿った説明にはなっていませんが、これで一応、最低線の説明はついているのではないでしょうか。

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