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2019年12月31日 (火)

【掲載記事の一覧】

 「明石日常生活語辞典・追記」の連載は本日で終了しました。明日からは「生きる折々」という連載を始めます。
ブログ版の「明石日常生活語辞典」は2605回に達しましたが、消去せずにそのまま残しておくことにします。
 ブログの掲載記事数は6055本になりました。
 ブログをお読みくださってありがとうございます。
 お気づきのことなどは、下記あてにメールでお願いします。
    gaact108@actv.zaq.ne.jp
 これまでにブログに連載した記事を、内容ごとに分類して、一覧を記します。掲載日をもとにして検索してください。

【兵庫県明石市などの方言に関する記事】

◆明石日常生活語辞典・追記 (1)~(111)
    [2019年9月9日 ~ 2019年12月31日]

◆明石日常生活語辞典の刊行について (1)~(8)
    [2019年9月1日 ~ 2019年9月8日]

◆「入口」はどこまで続くか (1)~(3)
    [2019年11月28日 ~ 2019年11月30日]

◆【明石方言】 明石日常生活語辞典 (1)~(2605)
    [2009年7月8日 ~ 2017年12月29日]

◆『明石日常生活語辞典』写真版 (1)~(4)
    [2010年9月10日 ~ 2011年9月13日]

◆じいさまはヤマへしばかりに -明石日常生活語辞典を作るということ-
                        (1)~(9)
    [2017年12月30日 ~ 2018年1月7日]

◆私の鉄道方言辞典 (1)~(17)
    [2007年9月13日 ~ 2007年9月29日]

◆暮らしに息づく郷土の方言 (1)~(10)
    [2007年8月11日 ~ 2007年8月20日]

◆兵庫県の方言 (1)~(4)
    [2006年10月12日 ~ 2006年10月15日]

◆姫路ことばの今昔 (1)~(12)
    [2007年9月1日 ~ 2007年9月12日]

◆ゆったり ほっこり 方言詩 (1)~(42)
    [2007年2月1日 ~ 2007年5月7日]


【日本語に関する記事】

◆言葉の移りゆき (1)~(468)
    [2018年4月18日 ~ 2019年8月31日]

◆日本語への信頼 (1)~(261)
    [2015年6月9日 ~ 2016年7月8日]

◆言葉カメラ (1)~(385)
    [2007年1月5日 ~ 2010年3月10日]

◆新・言葉カメラ (1)~(18)
    [2013年10月1日 ~ 2013年10月31日]

◆ところ変われば (1)~(4)
    [2017年3月1日 ~ 2017年5月4日]

◆おもしろ日本語・ふしぎ日本語 (1)~(29)
    [2007年1月1日 ~ 2009年6月4日]

◆現代の言葉について考える (1)~(7)
    [2007年7月1日 ~ 2007年7月7日]

◆文章の作成法 (1)~(7)
    [2012年7月2日 ~ 2012年7月8日]

◆自分を表現する文章を書くために (1)~(11)
    [2007年10月20日 ~ 2007年10月30日]

◆六甲の山並み[言葉つれづれ] (1)~(4)
   [2006年12月23日 ~ 2006年12月26日]

◆地名のウフフ (1)~(4)
    [2012年1月1日 ~ 2012年1月4日]


【郷土(明石市の江井ヶ島)に関する記事】

◆名寸隅の船瀬があったところ (1)~(5)
    [2016年1月10日 ~ 2016年1月14日]

◆名寸隅の記 (1)~(138)
    [2012年9月20日 ~ 2013年9月5日]

◆朔日・名寸隅 (1)~(19)
    [2009年12月1日 ~ 2011年6月1日]

◆江井ヶ島と魚住の桜 (1)~(6)
    [2014年4月7日 ~ 2014年4月12日]

◆西島物語 (1)~(8)
    [2008年1月11日 ~ 2008年1月18日]

◆名寸隅舟人日記 (1)~(16)
    [2016年1月1日 ~ 2016年4月2日]

◆屏風ヶ浦の四季 [2007年8月31日]


【『おくのほそ道』に関する記事】

◆『おくのほそ道の旅』【集約版】 (1)~(16)
    [2018年3月18日 ~ 2018年4月2日]

◆『おくのほそ道』ドレミファそら日記【集約版】 (1)~(15)
    [2018年4月3日 ~ 2018年4月17日]

◆奥の細道を読む・歩く (1)~(292)
    [2016年9月1日 ~ 2018年3月17日]


【江戸時代の五街道に関する記事】

◆中山道をたどる (1)~(424)
    [2013年11月1日 ~ 2015年3月31日]

◆日光道中ひとり旅 (1)~(58)
    [2015年4月1日 ~ 2015年6月23日]

◆奥州道中10次 (1)~(35)
    [2015年10月12日 ~ 2015年11月21日]


【ウオーキングに関する記事】

◆放射状に歩く (1)~(139)
[2013年4月13日 ~ 2014年5月9日]

◆新西国霊場を訪ねる (1)~(21)
[2014年5月10日 ~ 2014年5月30日]

◆ことことてくてく (1)~(26)
    [2012年4月3日 ~ 2012年5月3日]

◆テクのろヂイ (1)~(40)
    [2009年1月11日 ~ 2009年6月30日]


【国語教育に関する記事】

◆国語教育を素朴に語る (1)~(51)
    [2006年8月29日 ~ 2007年12月12日]

◆改稿「国語教育を素朴に語る」 (0)~(102)
    [2008年2月25日 ~ 2008年7月20日]

◆相手を思いやる姿勢と、自分を表現する力 (1)~(3)
    [2006年10月2日 ~ 2006年10月4日]

◆これからの国語科教育 (1)~(10)
    [2007年8月1日 ~ 2007年8月10日]

◆高校生に語りかけたこと (1)~(29)
    [2006年11月9日 ~ 2006年12月7日]

◆高校生に向かって書いたこと (1)~(15)
    [2006年12月8日 ~ 2006年12月22日]


【教員養成に関する記事】

◆教職課程での試み (1)~(24)
    [2008年9月1日 ~ 2008年9月24日]

◆学力づくりのための基本的な視点 (1)~(7)
    [2006年10月5日 ~ 2006年10月11日]

◆教員志望者に必要な読解力・表現力 (1)~(18)
    [2006年10月16日 ~ 2006年11月2日]

◆教職をめざす若い人たちに (1)~(6)
    [2007年6月1日 ~ 2007年6月6日]


【花に関する記事】

◆写真特集・薔薇 (1)~(31)
    [2009年5月18日 ~ 2009年6月22日]

◆写真特集・さくら (1)~(71)
    [2007年4月7日 ~ 2009年5月8日]

◆写真特集・うめ (1)~(42)
    [2008年2月11日 ~ 2009年3月16日]

◆写真特集・きく (1)~(5)
    [2007年11月27日 ~ 2008年11月13日]

◆写真特集・紅葉黄葉 (1)~(19)
    [2007年12月1日 ~ 2008年12月15日]

◆写真特集・季節の花 (1)~(3)
    [2007年5月8日 ~ 2007年6月30日]


【鉄道に関する記事】

◆鉄道切符コレクション (1)~(24)
    [2007年7月8日 ~ 2007年7月31日]


【その他、いろいろ】

◆神戸圏の文学散歩 (1)~(5)
    [2006年12月27日 ~ 2006年12月31日]

◆百載一遇 (1)~(6)
    [2014年1月1日 ~ 2014年1月30日]

◆茜の空 (1)~(27)
    [2012年7月4日 ~ 2013年8月28日]

◆消えたもの惜別 (1)~(10)
    [2009年9月1日 ~ 2009年9月10日]

◆母なる言葉 (1)~(10)
    [2008年1月1日 ~ 2008年1月10日]

◆足下の観光案内 (1)~(12)
    [2008年11月14日 ~ 2008年11月25日]

◆昔むかしの物語 [2007年4月18日]

◆小さなニュース [2008年2月28日]

◆辰の絵馬    [2012年1月1日]

◆しょんがつ ゆうたら ええもんや (1)~(13)
    [2009年1月1日 ~ 2010年1月3日]

◆1年たちました (1)~(7)
    [2007年8月21日 ~ 2007年8月27日]

◆明石焼の歌 (1)~(3)
    [2007年8月28日 ~ 2007年8月30日]

◆失って考えること (1)~(6)
    [2012年9月14日 ~ 2012年9月19日]

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明石日常生活語辞典・追記(111)

この連載の索引(1~110回)


 この連載の索引です。数字は回数を示します。

【あ行】
 あい 42
 あいさ   12
 あいさに  12
あだべた  92
 あたんする 15
 あっちゃいこっちゃい 79
 アップル  1
 あとさし  40
 いいん   72
 いしこい  43
 いじましい 85
 いちびる  19
 いつもかも 55
 いっつもかっつも 55
 いとごる  80
 うかうか  77
 うかっと 77
うかめる  57
うそだます 66
 うっちゃがる 61
 うっちゃげる 61
 うっちゃわす 61
 うっとこ 45
 うっとことこ 45
 うろっと  77
 うんてい  8
 えがおよし 26
 おいもさん 51
 おこんにゃ 51
 おしっこ  6
 おしピン  37
 おじゅう  51
 おだい   51
 おっとっしゃ 47
 おにし   51
おびん   103
 おびんたれ 103
 おまめ  51
 おまめさん 51
 およそ   82
 おんまく  86

【か行】
 かい    20
 かく    75
 かちおとす 14
 かちぼかす 14
 かちめぐ 14
 かちゃだける 14
かちわめく 14
 かちわる 14
 がに    17
 かぶしき  95
 かまへん 11
 かまわん 11
 かまん 11
 かめへん 11
 がり    93
がりばん  93
 かれ 47
かんかん  99
 きちゃない 53
 きっちやんちゃんこ 64
きぶい   104
くたばる  97
 くねる   83
 くんにゃかす 83
 けつ 84
 げつ 84
 げっとう 73、84
 げっとくそ 73、84
 げっとうしょう 73
 こい 42
 ごうがわく 46
 こうと   27、87
 ごうをわかす 46
 こおっと 38、47
 ここっちょい 28
 こされ   48
ごじゃ   71
 ごじゃごじゃ 71
 ごじゃっぺ 71
 ごじゃっぽ 71
 こすい   43
 こたつ   22
 ことり   2
 ごま    17

【さ行】
 さ     23
 さかい   69
 さかいに  69
 さん    7
 さんこ   76
 しい 6
 しいこいこい 6
しいこっこ 6
 しうつ   81
 しおとろしい 29
しじつ   81
 しっぽり  78
 じぶん 42
 しゅうつ  81
 じゅうにんがつ 59
しょう 6
 じょうしき 55
 しょうべん 6
しょうよう 6
 しょんべん 6
 しんがつ  59
 すいな 35
 すこい 43
 せけんせばい 98
せけんせまい 98
 せんど   12
 せんどぶり 11、12
 そい 42
 そばえる  30

【た行】
 だいじない 11
 たちかけ 3
 たちがけ 3
 たちし 3
 たちしな  3
 たちやけ  3
 たった   63
 たどん 22、24
 たない 53
 たん    7
 だんだい 5、11
 だんない 5、11、47
 ちゃう   11、44
 ちゃうちゃう 44
 ちゃない 53
ちゃん   7
つく    68
 つくる   54
 つっちゃま 61
 てあげます 67
てっとみち 105
 てまう   14
 てん    94
 でんきアイロン 8
 でんきがま 8
 でんきそうじき 8
 でんきミシン 8
 でんきれいぞうこ 8
 てんこぼし 100
 でんしゃみち 105
 どい 42
 といちばん 101
 どいちばん 101
 とく    65
 どたま 49
 どっこいしょ 106、107
 どっしゃげる 31
 とのくち  89
 どんま   25

【な行】
 ななついき 39
なま    88
 なんちゃらかんちやら 60
 なんやか 60
 なんやかし 60
 なんやかや 60
 にっしゃかし 61
 にんがつ  59
 ねん    94
のん    94

【は行】
 ばあてがする 32
 はやいき 39
 はやうまれ 39
 はよいき 39
 はん    7
 ひさしぶり 12
 ぴりぴり  36
 ぶてこい  34
ふみちゃんこ 64
ぶんかのひ 62
 へこさかだいみょうじん 79
 へっちゃいこっちゃい 79
 べっちょない 5、11
 べっとう  84
 へっともない 33
 へらへっと 33
 へらへっともない 33
べろまかす 70
 ほどらい  82
 ぼらあみ  95
 ほんまく  86

【ま行】
 まあはんたい 41
 まっかいけ 74
 まっかいけのけ 74
 まっかっかのか 74
 まっきっき 74
 まっきっきのき 74
 まっくろけのけ 74
 まっくろびょったん 74
 まっくろべったん 74
 まっしろけのけ 74
 まっしろびょったん 74
 まっしろべったん 74
 まねほど  96
 まねくそほど 96
 まめさん 51
 まんまんちゃんああん 50
 めぐ    11
 めくそほど 96
 めげる   11
 ミシン   13
 みずくさい 18
 もとい   38

【や行】
 やぐさい  22
 やっついき 39
 やばい   102
 やばたい  102
 やん    7、94
 よぼる 21、106、107
 よろしおあがり 4

【ら行】
らく    90
 れいぞうこ 9

【わ行、ん】
 わい 42
 われ 42
 ん     10
 んかい 10
 んとく   65
 んな 10
んなん 10

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2019年12月30日 (月)

明石日常生活語辞典・追記(110)

50年後に振り返ってみてほしい


 年末になると、毎年、今年の漢字とか、流行語大賞とか、その他の言葉の話題が報道されます。けれども、それらは商業主義に基づいた催し物です。しばらく経つと忘れ去られてしまいますし、今年話題になったものが10年後には死語になっていることもあります。 方言は、目に見えて変化するものではありません。けれども、言葉は、方言も共通語も同じですが、ゆっくりと変わっていきます。流行語のようなものは論外ですが、語彙も語法も音韻もアクセントも、何十年という単位で見ていると、ゆっくりと変化を遂げています。
 私は方言を50年余り見つめ続けてきました。確実に変化をしています。
 「明石日常生活語辞典」は、この50年余に使われたり、記憶に残ったりしている言葉を集めたものです。仮にこれから後の明石方言の姿を誰も記録しなかったとしたら、50年後に「明石日常生活語辞典」をひもといてほしいと思います。その時、私はこの世にはおりませんが、ある時期の言葉の姿を記録しておいた意味を理解していただけるだろうと思います。
 10年後、20年後でも微妙に変化を遂げているはずですが、50年という隔たりになると、その変化を実感していただけると思います。それを知っていただくためにも、「明石日常生活語辞典」は、地元の公立図書館、学校、コミュニティセンターなどの蔵書として備えてほしいと願っております。明石市にそのような意志が無いのなら、一般市民の方が本書を所蔵してほしいと願っております。
 明石市は今年、市制施行100年を迎えました。市史は発行されませんでしたが、いつかは市の歴史も編纂されるだろうと思います。市史は公的な記録だけでなく、市民生活の変化についても記録をすべきであると思います。生活は言葉によって成り立っています。言葉(方言)や民俗についての記録を無視したような市史は困ります。
 各地の市町村史を拝見すると、言葉や民俗についての記録を重視しているものがたくさんあります。明石市もそのような編纂方針で市史を作ってほしいと思います。
 明石市は、萬葉集や源氏物語をはじめとして古典に描かれてきたところです。誠に残念ながら、明石市は古典文学の故地としての地位を放棄したような市政(文化財)運営をしています。言葉や民俗も軽く見ています。
 明石原人をはじめ考古学的な価値の高い土地でもありますが、その点はきちんと重んじているようです。史跡・遺物は目に見えるのです。展示物になるのです。
 それに対して、目に見えない文化、例えば、言葉や民俗については軽視(無視)し続けているのが明石市の文化財行政です。
 ここ何十年にわたって、明石市は言葉の調査などに予算を設けたことはないだろうと思います。個人の調査に対しても、補助金を出したりするような姿勢は見られません。市政に対してそのような意見を申しても無視されるだけでしょう。
 「明石日常生活語辞典」は私費によって、個人で行った仕事です。何十年かの後にこの仕事の意味を見つけてくだされば嬉しいと思っています。
 なお、このタイトルの連載は、いったん区切りをつけます。次回(111)回は索引を掲載します。ただし、方言について書くことは今後も続けますが、毎日連載という形をとらず、ときどき掲載する形にします。

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2019年12月29日 (日)

明石日常生活語辞典・追記(109)

私にとってのこの1年


 「明石日常生活語辞典」は本年9月1日に発行となりました。私が完成品を手元に得たのは8月29日でした。
 昨年の秋の初め頃から校正が始まりました。校正は3回という約束でしたが、実際は初校と再校だけで、3校は再校箇所の確認だけということでした。
 文芸書について、作家自身が校正の有様について書いているのを見ると、羨望以外の気持ちはありません。例えば登場人物の名前が間違って書かれておれば、編集者がきちんと指摘してくれます。この場面の表現はおかしいのではないかと編集者が感じ取れば、作家にきちんと伝えられます。取材の時には編集者が同行して、費用もすべて支払ってくれることも多いようです。何万部という単位で発行されますから、利益が大きいのですから、そのような配慮も成り立つのでしょう。
 学術書の出版社は、ベストセラーを作るような出版社とは異なり、大変な状況にあることはわかっているつもりです。原稿はパソコンに打ち込んで渡しました。本書の「文法と活用表」の部分だけは、原稿となるものを渡して、入力をお願いしました。写真は、文化博物館から借りたものと私が撮影したものを渡しました。
 さて、校正はすべて私ひとりの作業です。小さな文字で800ページを超えるのです。しかも辞書の形をとっていますから、文章を読み進めるような校正とは違って、なかなか前へ進みませんでした。
 私が校正として書き入れたものを編集部でチェックされている様子はわかりますが、あくまで校正は私ひとりで進めました。今年のはじめは、その校正の真っ最中でした。できれば7月頃に発行できたらと考えていたのですが、発行日は2か月ほど後に延びました。校正を初めた段階から、完成本を手元に得るまでの期間は、ほぼ1年でした。
 出版費として支払ったのは250万円に、消費税20万円がプラスされて、270万円でした。こういうものにまで消費税を支払わなければならないのです。出版費用はどこからの支援も受けておりません。1年間に得る年金の額をはるかに超える金額ですから、私にとっては大きな打撃です。もちろん原稿料などがいただけるはずはありません。
 出版社には感謝をしますが、文化財を扱っている国・地方公共団体には、こういうものへの補助金などがまったくないことへの不満の気持ちを持っています。
 小さな文字と格闘していた時間が過ぎて、完成品を得たあとは、ゆるやかになった時間が多くなりました。成就感はもちろん大きいのですが、不安も大きいのです。間違った記述をした箇所がないか、校正を見落としたところはないか、というような不安です。
 9月からは「明石日常生活語辞典・追記」のブログ連載を始めましたが、思いつくままに書き連ねてきたという感じです。
 来年か再来年に、正誤表や追記をまとめた小冊子を作りたいと思っていますが、確実な約束はできません。
 ともかくも、この1年が終わりを迎えようとしています。

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2019年12月28日 (土)

明石日常生活語辞典・追記(108)

方言は保存するのではなく、記録をする必要がある


 言葉は文化のひとつです。言葉がなくては様々な文化は形成されていかないでしょうが、言葉も文化のひとつであると言って、間違いではないでしょう。
 文化は、古いものではなく、定まったものでもありません。文化は、不断に変化をして発展を続けています。言葉も変化・発展を続けています。
 文化というと、保存とか記録とかいうことが話題になります。保存という言葉の意味を、一定の形を持ったものとして、不変の姿にするということであると考えてはいけないと思います。そのような考え方は、文化を誤解することになります。
 言葉について考えてみましょう。言葉には、書き言葉と話し言葉とがあります。書き言葉の場合は、毎日毎日、無数の人々によって、膨大な量のものが書かれて、蓄積されています。
 話し言葉も、人々が毎日、話すことを続けています。けれども、人々が話しているもののうち、録音などによって記録されているのは、ごくごく一部分でしかありません。しかも、録音などがされているのは、例えば全国共通語を使って話しているものなどに限られていると言っても間違いではないでしょう。
 私は、50余年前の明石市での日常会話の録音もしましたし、35年ほど前の神戸市における方言調査で録音をしました。それぐらいの年月を経たものを聞いてみると、時間の流れを実感します。方言を使った話し方も変化をし続けているのです。
 言葉の変化というと、共通語の文字資料をもとにして議論されることが多いのですが、方言の音声資料も重要です。
 けれども、全国各地の方言の音声資料は、力を注いで作られてきていません。個人でそのような資料を持っていたとしても、それを全国的な規模で記録して、集めている資料館もありません。
 図書館は重要な施設です。けれども、それは書き言葉の資料館です。話し言葉の資料館も必要なのですが、それに気付いて、話し言葉の資料館や、方言の資料館を作ろうという声は上がっておりません。
 方言は、一度だけ記録しておけばよいというようなものではありません。刻々の変化を記録することも必要なのですが、文化庁も、都道府県の文化財担当者もそんなことは眼中にありません。言葉を消費財のように考えて、見過ごしてしまっているのです。

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2019年12月27日 (金)

明石日常生活語辞典・追記(107)

よぼる、どっこいしょ ②


 「よぼる」という俚言について、新聞記事は「しょうゆ差しなどから液体を滴らせるとき、かすかに下に落ちているような状態。」と書いていますが、誤解を招くかもしれませんので、正確に書いておきます。
 「かすかに下に落ちる」というと、ポトポトと一滴、二滴が落ちているようにも思われますが、そうではありません。液体が容器の口から縁を伝わって、わずかに流れる様子を表現する言葉です。
 「どっこいしょという俚言については、「どっこいしょ」の他に、「どっこんしょ」などの発音もあります。そもそも方言というのは話し言葉の世界のものです。書き言葉として記録されることが少ない言葉です。長い間使っているうちに発音が変化することはありますし、地域によって発音が微妙に異なることになっても不思議ではありません。地面すれすれの浅いところから湧き出してくる水のことで、その湧き出してくる場所のことでもあります。
 「どっこいしょ」については「明石日常生活語辞典」の巻末に、説明文を載せていますから、それを引用しておきます。

●どっこいしょ
 「どっこいしょ」という言葉を聞くと、「あ よいよい こらこら…」と踊り出したくなるような気持ちになるが、実はそれとはまったく違った意味である。江井ヶ島の周辺は良い水の湧き出るところで、そのうちの、浅い井戸、地表に湧き出している井戸のことを「どっこいしょ」と言う。
 『明石のため池』(明石市教育委員会発行)に、「どっこんしょ」という項目があって、次のようなことが書かれている。

 「どっこんしょ」あるいは「どっこいしょ」と呼ばれる湧き水が、谷八木から二見までの海岸線や川沿いにあったことが、地元の年配の人たちの話によくでてきます。
 子どもの頃、海で魚を突くために、松陰から谷八木の海岸まで歩いていく途中、いつものように崖の下から湧き水が出ているところで休憩し、汗をかいた顔を洗うことにしていたそうです。また、海で魚を突いたり、泳いだりした後、今度は、海岸の砂浜にも湧き水が出ているところがあり、そこで真っ黒になった体を洗い、そして乾いた喉に冷たい水を流し込む。その水がなんともいえないほど、おいしかったそうです。
 戦前には、谷八木にこのような湧き水が10数ヶ所あったそうです。戦後には、大きな工場が大量に地下水を汲み上げるようになり、湧き水は次々に枯れてしまったそうです。

 大久保町の北の方にある松陰から、谷八木の海岸へ歩いて行った「年配の人」の体験談として語られているのであるが、湧き水は崖の下などにあったようである。
 著者は、江井ヶ島に住み続けているのであるが、呼び名は「どっこいしょ」である。確かに崖のようなところにもあったとは思うが、大きな酒蔵などの中にも水が湧き出しているところがあって、石やコンクリートで囲ってあった。目の前へこんこんと湧き出してきて、もったいないのであるが、流れっぱなしになっていた。大量の地下水の汲み上げが原因で涸れていったのかもしれないが、今では「どっこいしょ」の存在は忘れ去られてしまっている。
 著者の家には井戸があったが、井戸といってもせいぜい地表面から3メートル程度の深さの水面だった。水に恵まれていることと、江井ヶ島を中心とした地域の酒造りとは密接なつながりがある。

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2019年12月26日 (木)

明石日常生活語辞典・追記(106)

よぼる、どっこいしょ ①


 インターネットで「明石日常生活語辞典」を検索していると、こんな文章に出会いました。「明石の方言が辞典に」という題で、新聞記事を写真に撮って、文章が添えられていました。その文章を引用します。

 85歳の母は明石市二見町出身なので聞いてみると、「よぼる」は新聞に出ていたそのままの意味で説明してくれました。「どっこいしょ」は、二見では「どっこいしょ」ではなく、「ドッコンショ」と言うそうです。意味は同じで、水の湧くところだそうです。貴重な資料ですばらしいと思います。ほしいけど、20000円は悩みます。たぶん、買えないかな。そのうち図書館で見つけられればいいかなあ。

 辞典の刊行を伝える神戸新聞の記事ですが、明石の俚言のいくつかが紹介されたのです。記事のままを伝えると、このような説明です。

【よぼる】(動詞)
 しょうゆ差しなどから液体を滴らせるとき、かすかに下に落ちているような状態。
【どっこいしょ】(名詞)
浅い井戸。すぐ近くから湧き出している井戸や湧き水。酒蔵が多い江井ヶ島地域でよくみられ、中八木、大久保地域でも使われていた。

 なお、俚言として紹介されている言葉は、この他に、【やぐさい】(形容詞)、【へっちゃいこっちゃい】(形容動詞)、【ぶてこい】(形容詞)があります。
 「よぼる」「どっこいしょ」という言葉については、次回に書くことにしますが、本の値段のことについて述べておきます。
 「明石日常生活語辞典」は小さな文字ですが、800ページを越える分量になってしまいました。300部限定出版ですが、出版費用は高額になりました。私が出版社に支払ったのは250万円で、このようなものにも消費税(8%)が加わって、合計270万円になりました。どこからの援助も受けておりませんから、1年分の年金をはるかに超える金額になりました。全部が売れても、もちろん原稿料は入りません。
 個人で買っていただけるような値段ではありません。図書館の蔵書として欲しいのです。現在のところ、兵庫県内の公立図書館では、兵庫県立図書館、明石市立図書館、同西部図書館、神戸市立中央図書館、姫路市立城内図書館、高砂市立図書館、小野市立図書館にあります。ただし、郷土関係の図書はたいていが禁帯出の扱いになっています。紛失を恐れるからでしょうが、それなら2冊購入して、1冊は貸し出し用、もう1冊は保存用にして欲しいと思います。
 県内の大学図書館では、甲南大学、関西学院大学、甲南女子大学、神戸学院大学、大手前学院大学にあります。
 県外では、国立国会図書館、同関西館、東京都立中央図書館、大阪府立図書館、金沢大学、早稲田大学、学習院大学、國學院大学、東洋大学などにあります。
 これらの所蔵館は徐々に増えています。状況が変わりましたら、改めてお知らせします。

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2019年12月25日 (水)

明石日常生活語辞典・追記(105)

てっとみち、でんしゃみち


 小学生くらいの頃であったでしょうか、土筆を摘みに行きたいと言ったら、祖母が「てっとみち(鉄道道)・へ・ い(行)っ・たら・ あむ(危)ない・さかい・ い(行)っ・たら・ あか・ん・で。」と言いました。その言葉は頭の中に残っています。
 私たちが住んでいるところは海べりですが、少し離れたところを山陽電鉄が通っています。そして、そこから更に離れたところを、当時の国鉄・山陽本線が通っています。山陽本線の西明石-姫路間が電化されたのは中学生の頃ですから、それ以前は蒸気機関車に引かれた客車列車や貨物列車が走っていました。
 国鉄のことは「鉄道」とは言わず「きしゃ(汽車)」と呼んでいました。山陽電鉄は「でんしゃ(電車)」です。線路のことは、「きしゃみち」という言葉もあったのでしょうが、「てっとみち」とか「てっとーみち」とかの呼び名が印象に残っています。「てっとみち」を「きしゃ」が走り、「でんしゃみち」を「でんしゃ」が走っていたのです。
 西明石駅までは早くから電化されていて、京都-西明石間には、当時の呼び名で「国電」が走っていました。私たちの住むところは、そこよりも西の地域ですから、電化が遅れました。国電という呼称は日常には使わなくて「しょーせん(省線)」とか「しょーせん・でんしゃ」と言っていました。
 国鉄の駅は「えき」ですが、山陽電鉄の駅のことを「てーりゅーしょ(停留所)」と言う人も多くいたように思います。山陽電鉄は軌道ではありませんが、神戸市電などと同じように「てーりゅーしょ」と呼ぶ癖が残っていました。山陽電鉄は兵庫(神戸市)-姫路間に特急列車も運行していましたが、昭和20年代はすべて2両編成ですから、駅もこぢんまりしたものでした。
 小学生の頃は、機関車はすべて蒸気機関車でした。京都-西明石間は客車列車も走っていましたが、すべて蒸気でした。「きかんしゃ」という言葉には、電気機関車やジーゼル機関車の意味はなかったのです。SLなどという、暗号めいた呼称などのない時代でした。
 言葉は時代とともに変化します。新幹線が建設される頃には「夢の超特急」などという言葉が使われたことがあります。明石海峡大橋は建設が具体化されるまでは「夢のかけはし」と呼ばれていました。夢が実現されるのは嬉しいことですが、それによって、アルファベット略語や外来語が氾濫するのは望ましいことではありません。L特急という言葉は広く使われましたが、今では消えました。東京の国電をE電と呼ぼうとしたことは、人々の猛反発を受けました。
 言葉は人々の生活の中から生まれてくるものですから、無理な言葉遣いを押し付けてはいけません。「さいたま副都心」などという駅名は意図的な命名ですし、「高輪ゲートウェイ」という駅名は、人々の支持を得ていません。首都圏には言葉の問題があふれています。

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2019年12月24日 (火)

明石日常生活語辞典・追記(104)

きぶい


 甘い味と辛い味とを合わせ持つ味わいを「あまからい」と言います。甘いと酸っぱいでは、明石では「あまずいい」と言います。
 あちらこちらの方言に「きぶい」という言葉があります。けれども、その言葉は地域によって異なった意味を持っているように思われます。
 明石を含む播磨地方でも「きぶい」という言葉を使います。例えば、甘みの強い饅頭などを食べた場合に、「きぶい・ おちゃ(茶)・が・ の(飲)み・とー・ なっ・た・なー。」と言います。
 「きぶい」は、黄色い色をした、渋い味のするお茶のことを指して使うことが多いように思います。「きいろ(黄色)い」の「き」と、「しぶ(渋)い」の「ぶい」とをつないだ言葉のように、私には感じられるのですが、その判断が正しいかどうかは簡単に判断はできません。
 仮に、色と味の両方に由来するとしても、この言葉は味に重点を置いています。色だけを見て「きぶい」とは言えません。それに対して、目をつぶって飲んだものの味のことを「きぶい」と言うことはできます。
 地域によって表す意味が微妙に異なるような言葉は、他の地域の人が聞くと誤解を招きやすいと思われます。
 「明石日常生活語辞典」の「きぶい」の項を引用します。

●きぶい《形容詞・ウイ型》 食べ物の色が濃くて、苦く渋い味がする。「きょー(今日)・の・ おちゃ(茶)・は・ きぶい・なー。」◆主としてお茶の味について使う言葉である。色の「きいろい【黄色い】」と、味の「しぶい【渋い】」とが合わさった言葉のように感じられる。

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2019年12月23日 (月)

明石日常生活語辞典・追記(103)

おびん、おびんたれ


 犬に吠えられてびっくり仰天をしていると、「おまえ(前)・は・ おびんや・なー。」と、周りの人から馬鹿にされることがあります。こわがる様子を「おびん」と言い、そのような人を指して「おびん」と言うこともあります。形容動詞と名詞の働きを併せ持っている言葉です。共通語の「おくびょう」も使うことはありますが、「おびん」の方が地域の言葉としてぴったりです。まったく同じような使い方をする言葉として「おびんたれ」も使います。「おびんたれ」の方が、貶める気持ちの強いようなひびきがあります。「~たれ」は、「ぶしょ(不精)たれ」などのような使い方をする言葉です。
 「おびん」というのは「おび(怯)える」という言葉から発音が変化したのではないかと思われますが、明石地域においては、「おびえる」を使う頻度は多くありません。「おそ(恐)ろしがる」「おとろしがる」「おじける」と言う方が多いと思われます。
 「おびん」は播磨地域などでは使われていますが、広い範囲には及んでいない言葉のように思われます。
 「明石日常生活語辞典」の「おびん」と「おびんたれ」とを引用しておきます。

●おびん《形容動詞や(ナ)、名詞》 気が小さかったり心配性であったりして、ちょっとしたことにも、びくびくして恐がる様子。必要以上に用心深く、ものごとに十分な対処ができない様子。また、そのような人。「おびん・や・なー。かえる(蛙)・ぐらい・ て(手)ー・で・ つか(掴)め。」〔⇒おびんたれ【おびん垂れ】、おくびょう【臆病】〕

●おびんたれ【おびん垂れ】《形容動詞や(ナ)、名詞》 気が小さかったり心配性であったりして、ちょっとしたことにも、びくびくして恐がる様子。必要以上に用心深く、ものごとに十分な対処ができない様子。また、そのような人。「おびんたれ・で・ よなか(夜中)・に・ べんじょ(便所)・へ・ ひとり(一人)・で・ よー・ い(行)か・へん。」〔⇒おびん、おくびょう【臆病】〕

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2019年12月22日 (日)

明石日常生活語辞典・追記(102)

やばい、やばたい


 共通語に「やばい」という言葉があります。自分に不利な状況が身近に迫ったり、そのような状況が予測されたりするようなときに使います。話し言葉で使うことが多く、書き言葉で使うことは少ないと思います。俗語と言ってよいでしょう。
 方言は話し言葉の世界で使う言葉ですから、明石の地域でも「やばい」は使います。「明石日常生活語辞典」の「やばい」の説明を引用します。意味の上で、「あぶない」「あむない」という言葉とかぶさりあう部分があります。

●やばい《形容詞・アイ型》 ①不確かで信頼できない。良い状態が続かないようだ。「あの・ かいしゃ(会社)・は・ だいぶ(大分)・ やばい・らしー。」②持ちこたえられないで、壊れそうである。危なっかしい。「つよ(強)い・ かぜ(風)・が・ ふ(吹)い・て・ とたんやね(トタン屋根)・が・ やばい。」③自分の姿や、隠していた事柄が、周りにわかってしまいそうである。「もーちょっとで・ み(見)つかり・そーで・ やばかっ・た。」〔①②⇒やばたい。①⇒あぶない【危ない】、あむない【(危ない)】〕

 明石を含む東播磨の地域では、「やばい」という言葉とともに「やばたい」という言葉も使います。「やばい」よりも「やばたい」の方に、方言としての色合いを感じます。
 「やばい」の意味を3つに分けていますが、その③の意味で「やばたい」を使うこともあるようですが、ごく稀に使うという程度であろうと思われます。
 「明石日常生活語辞典」の「やばたい」の説明を引用します。とりわけ②の意味で使うことが多いように思います。「やばたい・ だんぼーる(段ボール)・の・ はこ(箱)・や・さかい・ おも(重)たい・ もん(物)・を・ い(入)れ・たら・ そこ(底)・が・ ぬ(抜)け・そーや。」というような言い方をします。

●やばたい《形容詞・アイ型》 ①不確かで信頼できない。良い状態が続かないようだ。「しけん(試験)・を・ う(受)け・て・も・ ごーかく(合格)・は・ やばたい・と・ おも(思)う・ねん。」②持ちこたえられないで、壊れそうである。危なっかしい。「やばたい・ くく(括)りかた・を・ し・たら・ ほど(解)け・てまう・ぞ。」〔⇒やばい。①⇒あぶない【危ない】、あむない【(危ない)】〕

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2019年12月21日 (土)

明石日常生活語辞典・追記(101)

といちばん、どいちばん


 真っ先にという意味で使う言葉に「といちばん」があります。褒め言葉として使う場合もありますし、褒め・貶しに関係なく使うこともあります。この言葉は「日本方言大辞典」を見ても、兵庫県内の地名が挙げられていますから、案外に狭い地域で使われている言葉であるのかもしれません。「ちょういちばん」という言い方もして、同じような意味合いで使われます。「ちょういちばん」の「ちょう」は、超という文字にあたるのかもしれませんが、「といちばん」の「と」の文字は思い当たりません。「ちょう」という発音が「と」に変化したのかもしれないとも思います。
 「明石日常生活語辞典」では「といちばん」を次のように説明しています。

●といちばん〔とーいちばん〕【と一番】《名詞、副詞に》 他のものに比べて、格別に真っ先であること。「あいつ(彼奴)・が・ とーいちばんに・ やっ・てき・た。」〔⇒ちょういちばん【ちょう一番】〕

 「といちばん」に対して、「どいちばん」という言葉を使うこともあります。その程度が甚だしいことを表す言葉ですが、非難めいて使うことがあります。出しゃばって物事に取り組みたがる人のことを、悪し様に、「なん(何)・でも・ どいちばん・に・ せ・んと・ き(気)ー・が・ すま・ん・ やつ(奴)・や。」と言うことがあります。「どいちばん」の「ど」は接頭語の意識がありますが、「といちばん」はひとまとまりの言葉のように感じられます。「ど」を接頭語として使う言葉は他にもありますが、「と」を接頭語のように使う例はないように思われます。
 「明石日常生活語辞典」では「ど」を次のように説明しています。

●ど〔どー〕《接頭語》 ①その程度が甚だしいということを、非難する気持ちをこめて強調する言葉。「どあほ(阿呆)」「どけち」「どしぶ(渋)ちん」「どしゃべ(喋)り」②ものをぞんざいにいうときに使う言葉。「どたま(頭)」③ちょうどそれに相当するということを強調する言葉。「どまんなか(真中)】」〔①③⇒どん〕

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2019年12月20日 (金)

明石日常生活語辞典・追記(100)

てんこぼし


 兵庫県は、ため池の数では日本一です。なにしろ天候に恵まれて、晴天の日が多いのです。雨の量が少ないのですから、農業のためには、ため池がたくさん必要です。播磨や淡路に多くのため池が広がっています。
 明石にもたくさんのため池がありますが、農業用の必要度が下がってきていることと関連して、中学校や高等学校を新設する必要が生じた時期には、ため池を埋め立てて学校用地にあてました。
 ところで、太陽に恵まれている土地柄ですが、度が過ぎると困ったことも生じてきます。炎天下に帽子をかぶらないで歩くと熱中症にもなりかねません。「てんこぼしに・ なら・ん・よーに・ ぼーし(帽子)・を・ かぶっ・ていけ・よ。」などと注意を促すことも必要になってきます。
 直射日光にあててカラカラにすること、炎天にさらすことを「てんこぼし」と言います。名詞としても使いますし、動詞にもなりますし、形容動詞にもなります。太陽にあたって、干からびた状態になってしまっていることも「てんこぼし」と言います。
 この言葉は関西各地から中国・四国地方の瀬戸内沿岸にかけて使われていますが、ちょうど製塩に適した、雨の少ないところです。「てんこぼし」の他に、「てんころぼし」「てんからぼし」などの発音の変化があります。
 「明石日常生活語辞典」の「てんこぼし」を引用しておきます。

●てんこぼし【てんこ干し】《名詞、動詞する、形容動詞や(ノ)》 ①日光に直接さらすこと。「いちにちじゅー(一日中)・ てんこぼしし・て・ かわ(乾)かす。」②帽子などを被らずに、直射日光を長時間にわたって受けること。「てんこぼしで・ ある(歩)い・たら・ にっしゃびょー(日射病)・に・ なる・ぞ。」③日光にあたって、干からびた状態になっていること。「かえる(蛙)・が・ てんこぼしに・ なっ・ても・とる。」

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2019年12月19日 (木)

明石日常生活語辞典・追記(99)

かんかん


 「缶」という言葉は共通語ですが、その同じものを「かんかん」と言うのは方言としての特徴でしょう。お菓子の入ったかんかん、お茶の入ったかんかん、缶詰のかんかん、など、身の回りにはかんかんがいっぱいあります。「かん」とも言いますが、「かんかん」と言う方が多いかもしれません。
 けれども、ドラム缶のような大きなものを「かんかん」と言うことはしないように思います。比較的に小さなものを指して言うことが多いように思います。けれども、可愛らしいかどうかということは関係がありません。可愛げのないブリキの缶でも、かんかんと言います。
 丸い缶のことを言うことが多いのですが、角張ったものを、かんかんと言うこともあります。「ちょこれーと(チョコレート)・の・ はい(入)っ・とっ・た・ かんかん・を・ ちょきんばこ(貯金箱)・に・ する。」など言うこともあります。
 同じ2音節の言葉であっても、瓶のことを「びんびん」と言うことはしません。
 関西では、「ちゃ(違)う」を重ねて「ちゃうちゃう」と言ったり、同意する意味の「そや」を重ねて「そやそや」と言ったりして強調することが行われています。
 「明石日常生活語辞典」の「かんかん」を引用しておきます。

●かんかん【缶々】《名詞》 ブリキやアルミなどで作った、円筒形などになっている入れ物。「かんかん・に・ あな(穴)・を・ あ(開)け・て・ ひも(紐)・を・ とー(通)し・て・ げた(下駄)・みたいに・ し・て・ あそ(遊)ぶ。」「びーる(ビール)・の・ かんかん・を・ す(捨)て・たら・ あか・ん・ぞ。」◆「かん【缶】」とも言うが、「かんかん【缶々】」と言う頻度が高い。ただし、比較的小さなものについて言うのであって、大きなドラム缶などには使わない。〔⇒かん【缶】〕

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2019年12月18日 (水)

明石日常生活語辞典・追記(98)

せけんせまい


 共通語にある言葉を使いながら、その共通語の意味とは微妙に異なる語感を表す言葉があります。「せけん(世間)」も「せま(狭)い」も、共通語にある言葉です。方言でも使います。ところが、その2つの言葉をつないで「せけんせまい」という言葉になると、世間が狭いという意味ではなくなります。
 自分の考えにこだわって、他人の意見を受け容れないような人に向かって、「そないな・ せけんせまい・ こと・を・ ゆ(言)わ・んと・ あいつ・の・ ゆ(言)ー・とる・ こと・を・ き(聞)ー・たり・なはれ。」などと言います。「せけんせばい・ こと・を・ し・たら・ あか・ん・さかい・ おいわ(祝)い・を・ も(持)っ・ていっ・て・やっ・た。」というのは、自分を戒める意味で使っています。
 「せけんせまい」という言葉は、交際範囲が狭いというような意味ではありません。自分中心の考えをしているとか、考えている了見が広くないとかの意味です。そして、他人に対する思いやりに欠けるというニュアンスも持っています。自戒のために使うことはありますが、他人に対して批判的に使うことが多い言葉です。「せけんせばい」とも言います。
 播磨を中心にして使われている言葉ですが、近県でも使われているようです。
 「明石日常生活語辞典」の該当項目を引用しておきます。

●せけんせばい【(世間狭い)】《形容詞・アイ型》 他人のことを思いやる気持ちが乏しく、自己中心の考えである。周りの人々との接し方に疎くて、了見が狭い。「じぶん(自分)・の・ こと・ばっかり・ ゆ(言)ー・て・ せけんせばい・ ひと(人)・や。」〔⇒せけんせまい【世間狭い】〕

●せけんせまい【世間狭い】《形容詞・アイ型》 他人のことを思いやる気持ちが乏しく、自己中心の考えである。周りの人々との接し方に疎くて、了見が狭い。「せけんせまい・ こと・ い(言)わ・んと・ あま(余)っ・とる・ん・やっ・たら・ ひと(一)つ・ぐらい・ あげ・たら・ どない・や。」〔⇒せけんせばい【(世間狭い)】〕

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2019年12月17日 (火)

明石日常生活語辞典・追記(97)

しぬ、なくなる


 11月から12月にかけて喪中欠礼状が届きます。たくさんの年賀状を交換しているわけではありませんが、欠礼状の数は毎年、十数枚で推移しています。今年も、父が亡くなったとか母が亡くなったとかのお知らせをいただきました。その中で、年賀状を交換しているご当人の死に出くわすのは哀しいことです。
 鹿児島にお住まいで、方言を研究して大学にお勤めであったSさんは68歳でした。お会いしたのは一度だけでしたが、それ以後ずっと賀状を交換してきました。奥様からいただいた欠礼状でご逝去を知りました。
 明石にお住まいで、明石の歴史や遺跡に詳しいTさんも、奥様から欠礼状をいただきました。Tさんとは半世紀以上前から知り合いの仲です。私が大学を卒業して高校教諭になった22歳のとき、彼は15歳でその高校に入学してきました。部活動の顧問として顔を合わせるとともに、授業も担当しました。享年70歳です。
 私ももう何年かすれば、家族が喪中欠礼状を出さなければならないことになるでしょう。けれども、私はいまだに、欠礼状の宛先はこの人たちにというリストも作っておりませんし、まして、遺言状などというものを書いたことはありません。のんきにしておれないぞと肝に銘じなければならない年齢になっていると実感しました。
 さて、「喪中」だの「欠礼」だのという言葉は、日常語としては使いません。いざの時には共通語を借用して使うだけです。
 誰それさんが「なくなっ・てやっ・た・ん・や・そーや。」とは言いますが、よほど肩肘を張った表現をしなければならない場合でないと「逝去なさったそうです。」と言うことはないでしょう。「逝去」も日常語の中に加えなくてもよい言葉でしょう。
 考えてみれば、日常語の中に、死を意味する言葉は少ないようです。「し(死)ぬ」か「い(逝)く」です。「しぬ」では失礼だと思うようなときに「な(亡)くなる」「の(亡)うなる」を使う程度です。ぞんざいな言い方では「くたばる」があります。自分のことについては「しん・だ・ あと(後)・の・ こと・なんか・ し(知)ら・ん・わい。」などと言いますが、日常的に、他人の死を話題にすることが少ないからかもしれません。
 「明石日常生活語辞典」の「しぬ」の項を引用しておきます。

●しぬ【死ぬ】《動詞・ナ行五段活用》 ①息が絶える。命がなくなる。「おやじ(親父)・は・ きゅーじゅーご(九十五)・で・ しん・だ。」②体を強く撲ったりして、内出血を起こして青く見える。「ぼー(棒)・で・ たた(叩)か・れ・て・ うで(腕)・が・ しん・だ。」「すね(脛)・を・ う(撲)っ・て・ しん・だ。」③ゲームなどで、失格となったり。追いつめられて負けたりする。「これ・で・ しょーぎ(将棋)・の・ おー(王)さん・は・ しん・でまう・やろ。」■対語=①「うまれる」、③「いきる【生きる】」〔①⇒いく【逝く】、なくなる【亡くなる】、のうなる【亡うなる】、しぼう【死亡】(する)、くたばる〕

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2019年12月16日 (月)

明石日常生活語辞典・追記(96)

まねほど、まねくそほど、めくそほど


 ほんの少し、僅かばかり、という意味で使うのに、「まねほど」「まねくそほど」という言葉があります。「まねほど」というのは、真似事のように僅かばかりというような語感を伴っているように感じます。「まねくそほど」の「くそ」の部分には、それを貶めるような響きがあります。
 この言葉は、北陸(福井)から近畿にかけて使われているようですが、もうひとつ別の言い方もあります。「めくそほど」と言います。「めくそ」とは、目から出る粘液が脂のように固まったもの(目やに)のことですから、これは小さな(僅かな)ものです。そのような比喩から成り立っている言葉のように思われます。
 このような意味を表す言葉は、「ちょっと(だけ)の」とか「すこし(だけ)の」というような共通語を使って表現することもできますが、「まねほど」「まねくそほど」「めくそほど」を使う方が、生活感のあふれたような表現に感じられます。
 「明石日常生活語辞典」の項目を引用しておきます。

●まねほど【真似程】《形容動詞や(ノ)》 極端に数量が少ない様子。「まねほどの・ いちご(苺)・や・けど・ うち・で・ でけ(出来)・た・ん・です。」〔⇒めくそほど【目糞程】、まねくそほど【真似糞程】〕

●まねくそほど【真似糞程】《形容動詞や(ノ)》 極端に数量が少ない様子。「あま(余)り・は・ まねくそほど・しか・ おま・へん・ねん。」〔⇒まねほど【真似程】、めくそほど【目糞程】〕

●めくそほど【目糞程】《形容動詞や(ノ)》 極端に数量が少ない様子。「めくそほど・の・ きゅーりょー(給料)・しか・ くれ・へん。」〔⇒まねほど【真似程】、まねくそほど【真似糞程】〕

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2019年12月15日 (日)

明石日常生活語辞典・追記(95)

狭い地域特有の言葉


 言葉は基本的には広い地域に分布するものです。言葉は人と人とのコミュニケーションを図る役割を持っていますから、隣の人にわからないものであっては困ります。誰にでも理解できる言葉である方が望ましいのです。けれども、言葉は地域の特徴を反映しますから、地域によって言葉遣いに違いが生じることも当然でしょう。
 方言を調べていると言いますと、すぐに「明石特有の言葉にはどんなものがありますか」とか「明石の東部と西部とでは言葉遣いがどう違いますか」とかの質問を受けることがありますが、明石という狭い地域では言葉遣いがそんなに違うはずはありません。
 けれども、言葉を使うのはひとりひとりの個人ですから、そのひとりひとりの言葉の使い方には特徴というか、違いがあっても不思議ではありません。言葉遣いというものは、(すなわち、方言というものは)突き詰めれば個人のレベルにまで達することになるでしょうが、それは、別の考え方からすると、個人の癖ということにもなるでしょう。
 さて、幼い頃、小学校から中学校に進むと、(私の場合は、4つの小学校の卒業生がひとつの中学校に進むことになっていました)、校区によって言葉遣いが違うように感じることもありました。
 自分たちの小学校区では当たり前に使っていた言葉が、他の校区では通用しないというような言葉のことです。
 例を挙げると、子どもの遊び言葉としての「ぼらあみ」と、固有名詞の「かぶしき」がそれにあたります。「ぼらあみ」は、子どもの遊びの名前ですが、海岸線に位置する地域特有の言葉でしょう。「かぶしき」は、明治時代に株式会社というものができた当初にその組織を採用した会社のことを指して、特定の会社を呼ぶ言葉です。
 ただし、現在では「ぼらあみ」も「かぶしき」も聞くことがほとんどない言葉になっています。
 「明石日常生活語辞典」の項目を引用します。

●ぼらあみ【鯔網】《名詞》 鬼ごっこの一種で、鬼になった者がみんなで手をつないで、つかまっていない者を追いかける、子どもの遊び。◆手をつないだ鬼たちが10人ぐらいになると、迫力があって、まるで網に覆われるようにしてつかまることになる。まるで鯔をすくい取るような、大きな網であるという連想から命名されたのであろうか。かつての子ども時代に、小学校ではごく普通に使っていた言葉であるが、4つの小学校から集まる中学校に進むと、「ぼらあみ」は通用しない言葉であることがわかった。漁村(半農半漁)の色合いの濃い地域特有の言葉であったからであろうか。中学校では、「ふえおに【増え鬼】」という即物的な言葉が使われたのを味気なく思った記憶がある。

●かぶしき【株式】《固有名詞》 江井ヶ嶋酒造株式会社のこと。「むすこ(息子)・が・ かぶしき・に・ つと(勤)め・とる。」◆本来は、株式会社で、元手を出した人に与えられる証書や権利のことを言うが、そのような言葉遣いはしない。

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2019年12月14日 (土)

明石日常生活語辞典・追記(94)

ねん、てん、やん


 関西人の会話でよく現れる言葉に、文末の「ねん」や「てん」があります。「はんしん(阪神)・の・ おーえん(応援)・に・ い(行)く・ねん。」とか、「こーしえん(甲子園)・に・ い(行)っ・てん。」とか言います。
 相手に向かって強調したり念を押したりするときに使う言葉ですが、「ねん」と「てん」とはきちんと使い分けられています。「いく・ねん」というのは、今まさに行こうとしているときとか、後日に行くつもりであるとかの場合に使います。「いっ・てん」というのは、過去の出来事として述べる場合に使います。
 他の言葉遣いとして、「い(行)く・やん」とか、「いく・のん」とか言うこともあります。「やん」は、……ではないか、というようなニュアンスを持つ言葉です。「のん」は、相手に対して疑問や質問を投げかける言葉ですが、「の」や「ん」よりも強く響く働きがあります。
 「明石日常生活語辞典」の「ねん」「てん」「やん」「のん」を引用しておきます。

●ねん《終助詞》 ①現在および未来に関することで、相手に念を押したり、強調したりするときに使う言葉。「これ・を・ か(買)い・たい・ねん。」「わし・は・ い(行)く・ つもり・は・ ない・ねん。」②相手に命令や指示をするときに使う言葉。「あんた・から・ たの(頼)む・ねん・ぜ。」◆①の場合、過去に関することを述べる場合は「てん」を使う。「ねん」は文末に使われるが、打ち消しの言葉「ない」を付けて禁止の意味を表す用法もある。「むだづか(無駄遣)い・を・ する・ねん・ない。」〔⇒ねや〕

●てん《終助詞》 過去に関することで、相手に念を押したり、強調したりするときに使う言葉。「こーべ(神戸)・で・ か(買)い・まし・てん。」◆現在および未来に関することを述べる場合は「ねん」を使う。

●やん《終助詞》 相手に語りかけて、念を押したり同意を得ようとしたりするような気持ちを表す言葉。「せ(急)かさ・んでも・ もーじき・ い(行)く・やん。」「えらい・ たか(高)い・ おかし(菓子)・やん。」「あいつ(彼奴)・は・ なかなか・ 元気(元気)・やん。」〔⇒やんか〕

●のん《終助詞》 相手に対して疑問を表したり質問したりする気持ちを表す言葉。「きょー(今日)・は・ しごと(仕事)・を・ せー・へん・のん。」「そんな・ こと・を・ する・のん。」◆強い調子で発音すると、相手を説得したり禁止したりする意味にもなる。〔⇒の、ん〕

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2019年12月13日 (金)

明石日常生活語辞典・追記(93)

がりばん


 小学生や中学生の頃は、職員室にガリ版の印刷機(「機」と言うほどの高級なものではありませんが…)が置いてあって、謄写版原紙をセットして、ざら紙を何枚か挟んでおいて、一枚ずつ、ローラーを手で転がして印刷していました。印刷した紙を一枚ずつめくっていかなければなりませんから、その役目を児童・生徒がするということもありました。
 私が高等学校の教員になったのは1965年(昭和40年)のことでしたから、生徒に配る資料も、試験問題もガリ版で作っていました。ヤスリの上に原紙を置いて鉄筆で書いていきます。間違ったら修正液を塗って乾くのを待ってから再び書きます。ガリガリと音を立てながら書く作業は肩が凝ります。けれども、その頃には、印刷機は円筒形のものに謄写版原紙を巻き付けて印刷するようになっていました。紙を一枚ずつめくるということはしなくてもよくなったのです。
 それから10年も立たないうちに、コピー機を使って印刷原紙が作れるようになって、ガリを切るという作業から解放されました。けれども印刷原稿は手書きで、それをコピーしたのです。
 ワープロを使って印刷原紙を作れるようになるのは、それからまだ先のことでした。
パソコンに発展に伴って、全国各地にあった謄写版印刷を請け負う店が閉店に追い込まれていきました。明石市に安藤謄写という店がありましたが、この店が全国で最も遅い時期まで謄写版印刷の営業を続けた店であると言われています。
 今となっては、謄写版、ガリ版、ガリ切り、鉄筆、(謄写版)ヤスリ、(謄写版)原紙、(謄写版)修正液などという言葉を聞いても何のことかわからない人が大勢います。
 方言的な特徴はなく、全国と共通する言葉が大部分ですが、そのうち死語の扱いを受けて、国語辞典からも消え去っていくのでしょう。
 けれども、そのような言葉も、どこかにきちんと記録しておく必要があると思います。そのような言葉の一部を「明石日常生活語辞典」から引用しておきます。

●がり《名詞》 蝋を引いた原紙を鑢板にあてがって鉄筆で文字や絵を書いて、蝋の欠けた部分から印刷インクをにじみ出させて印刷すること。また、それによって作った印刷物。「がり・の・ げんし(原紙)・を・ いちまい(一枚)・ つく(作)っ・た・さかい・ かた(肩)・が・ こ(凝)っ・た。」「がり・は・ うらおもて(裏表)・に・ いんさつ(印刷)し・たら・ うら(裏)・が・ うつ(映)っ・て・ よ(読)みにくい。」◆鉄筆を使ってヤスリの上で文字を書くときに、ガリガリという音がするのに由来する言葉である。〔⇒とうしゃばん【謄写版】、がりばん【がり版】〕

●がりきり【がり切り】《名詞、動詞する》 紙に謄写印刷するために、蝋を引いた原紙に、鉄筆などで多数の細かい孔をあけること。「いちまい(一枚)・ がりきりする・の・に・ にじかん(二時間)・ぐらい・ かかる。」

●がりばん【がり版】《名詞》 ①蝋を引いた原紙を鑢板にあてがって鉄筆で文字や絵を書いて、蝋の欠けた部分から印刷インクをにじみ出させて印刷すること。また、その印刷に用いる器具。また、それによって作った印刷物。「しけん(試験)・は・ がりばん・で・ つく(作)っ・てある・ もんだい(問題)・や。」「がりばん・が・ いちまい(一枚)・ た(足)ら・へん。」②原紙に孔をあけるために使うヤスリの板。「がりばん・の・ やすり(鑢)・が・ ちび・た。」〔①⇒とうしゃばん【謄写版】、がり〕

●げんし【原紙】《名詞》 紙に謄写印刷するために使う、蝋を引いた紙。「ちから(力)・を・ いれ・たら・ げんし・が・ やぶ(破)れ・た。」

●とうしゃばん〔とーしゃばん〕【謄写版】《名詞》 蝋を引いた原紙を鑢板にあてがって鉄筆で文字や絵を書いて、蝋の欠けた部分から印刷インクをにじみ出させて印刷すること。また、その印刷に用いる器具。また、それによって作った印刷物。「とーしゃばん・は・ いちまい(一枚)・ずつ・ す(刷)る・さかい・ じかん(時間)・が・ かかる・ねん。」「はなし(話)・の・ さんこー(参考)・に・ とーしゃばん・を・ いちまい(一枚)・ くば(配)る。」〔⇒がりばん【がり版】、がり〕

●てっぴつ【鉄筆】《名詞》 紙に謄写印刷するために、蝋を引いた原紙に多数の細かい孔をあけるために、手に持って使う筆の形をした道具。「てっぴつ・を・ つか(使)う・ とき(時)・は・ ちから(力)・が・ い(要)る。」

●やすり【鑢】《名詞》 ①鋼の表面に細かい溝を刻みつけて、金属や木などを擦って、削り取ったり滑らかにしたりする道具。「のこぎり(鋸)・に・ やすり・を・ かける。」②謄写版の原紙に文字を書き付けるときに使う金属製の板。「がりばん(ガリ版)・の・ やすり・が・ ちび・てき・た。」

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2019年12月12日 (木)

明石日常生活語辞典・追記(92)

あだべた


 「あだべた・を・ はだし(裸足)・で・ ある(歩)い・たら・ あし(足)・が・ よご(汚)れる・やんか。」などと言います。「あだべた」とは、土地の表面のことです。土の上のことですが、道路などのように舗装されている場合は、その舗装の表面のことも言います。「あだべた」の「べた」の部分については、共通語にも「じ(地)べた」という言葉がありますから、理解しやすいでしょう。
 戸外や外庭を「あだ」と言う地域が西日本には広がっているのですが、地面(土地)そのもののことを「あだ」とは言わないようです。明石では「あだ」という言葉は使いませんが、「あだべた」という言葉があります。
 「あだべた」は地面そのものを意味しています。「あたべた・に・ むしろ(筵)・を・ ひ(敷)ー・て・ すわ(座)る。」というような言い方をします。
 また、敷き物や布団などが敷いてある場所の、それがない場所のことも言います。「ふとん・を・ ひー・たっ・とる・のに・ あだべた・で・ ね(寝)・とる。」と言えば、布団の敷かれている場所でなく、例えば直接に畳の上で寝ていることになります。土の上ではないのですが、使い方が拡大されているのです。
 「明石日常生活語辞典」の「あだべた」の項を引用しておきます。

●あだべた《名詞》 ①土地の表面。土の上。「あたべた・に・ すわ(座)っ・たら・ ふく(服)・が・ よご(汚)れる。」②布団や畳などが敷かれているところから外れた場所。下にものを敷かないで、そこから外れたところ。「ふとん(布団)・から・ で(出)・ても・て・ あだべた(=畳の上)・で・ ね(寝)・とる。」「あだべた(=直の畳)・に・ すわ(座)ら・んと・ ざぶとん(座布団)・を・ ひ(敷)ー・てください。」「あだべた(=板の間)・や・なし・に・ たたみ(畳)・に・ すわ(座)り・なはれ。」〔⇒じべた【地べた】。①⇒じめん【地面】〕

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2019年12月11日 (水)

明石日常生活語辞典・追記(91)

この連載の索引(1~50)

 この連載「追記」も回を重ねてきますと、索引がほしい状況になりました。読者のためでもありますが、私自身のためでもあります。50回ごとに索引を作ってみようと思います。(50回ごとの別扱いではなく、累積していく方法にします。) 数字は(連載の回数)を表します。
 
【あ行】
 あい              42
 あいさ、あいさに        12
 あたんする           15
 アップル            1
 あとさし            40
 いしこい            43
 いちびる            19
 うっとこ        45
 うっとことこ          45
 うんてい            8
 えがおよし           26
 おしっこ            6
 おしピン            37
 おっとっしゃ      47

【か行】
 かい              20
 かちおとす      14
 かちぼかす       14
 かちめぐ      14
 かちゃだける          14
かちわめく           14
 かちわる       14
 がに              17
 かまへん      11
 かまわん       11
 かまん       11
 かめへん      11
 かれ       47
 こい       42
 ごうがわく           46
 こうと             27
 ごうをわかす          46
 こおっと      38、47
 ここっちょい          28
 こされ             48
 こすい             43
 こたつ             22
 ことり             2
 ごま              17

【さ行】
 さ               23
 さん              7
 しい 6
 しいこいこい          6
しいこっこ 6
 しおとろしい 29
 じぶん 42
しょう 6
 しょうべん 6
しょうよう 6
 しょんべん           6
 すいな 35
 すこい 43
 せんど             12
 せんどぶり           11、12
 そい 42
 そばえる            30

【た行】
 だいじない           11
 たちかけ 3
 たちがけ 3
 たちし 3
 たちしな            3
 たちやけ            3
 たどん 22、24
 たん              7
 だんだい 5、11
 だんない 5、11、47
 ちゃう             11、44
 ちゃうちゃう          44
ちゃん             7
 てまう             14
 でんきアイロン         8
 でんきがま           8
 でんきそうじき         8
 でんきミシン 8
 でんきれいぞうこ        8
 どい 42
 どたま 49
 どっしゃげる          31
 どんま             25

【な行】
 ななついき           39

【は行】
 ばあてがする 32
 はやいき 39
 はやうまれ 39
 はよいき 39
 はん              7
 ひさしぶり           12
 ぴりぴり            36
 ぶてこい            34
 べっちょない          5、11
 へっともない 33
 へらへっと           33
 へらへっともない 33

【ま行】
 まあはんたい          41
 まんまんちゃんああん      50
 めぐ、めげる          11
 ミシン             13
 みずくさい           18
 もとい             38

【や行】
 やぐさい            22
 やっついき           39
 やん              7
 よぼる 21
 よろしおあがり         4

【ら行】
 れいぞうこ           9

【わ行、ん】
 わい 42
 われ 42
 ん               10
 んな 10
 んかい 10
んなん 10

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2019年12月10日 (火)

明石日常生活語辞典・追記(90)

らく


 「あした(明日)・まで・に・ こんだけ・の・ しごと(仕事)・が・ でける・やろ・か。」という問いかけに対して、「おー・ らくや・ らくや・ まかし・とき。」と答えることがあります。
 「らく」という形容動詞は、共通語と同じように、安らかでゆったりしている、という意味や、たやすい、という意味などを表しますが、方言では、それとは違う意味で使うこともあります。
 可能である、という意味や、差し支えがなく大丈夫だ、というような意味です。はじめにあげた例文は、できるか(可能であるか)ということを問いかけているのに対して、大丈夫だ(可能である)ということを答えているのです。
 「いっしゅーかん(一週間)・で・ しょー・ らくや。」というような言い方もします。することができる、という意味です。
 「らく」の、このような意味での使い方が行われているのは、兵庫・岡山・香川県のあたりのようです。
 「明石日常生活語辞典」の「らく」の項を引用しておきます。

●らく【楽】《形容動詞や(ナ)、動詞する》 ①心や体に負担がかからず、安らかでゆったりしている様子。「おや(親)・を・ らくに・ さし・たり・たい。」「かしこ(畏)まら・んと・ らくに・ し・てください。」「ねつ(熱)・が・ さ(下)がっ・て・ らくに・ なっ・た。」②十分なゆとりを持って、それが行える様子。たやすい様子。簡単な様子。「こんど(今度)・の・ しやい(試合)・は・ らくに・ か(勝)て・た。」③可能である様子。差し支えがなく、大丈夫である様子。「きょー(今日)・の・ よ(寄)りあい・に・ で(出)る・の・は・ らくや。」

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2019年12月 9日 (月)

明石日常生活語辞典・追記(89)

とのくち


自分たちからすれば、方言という意識はあまり強くなく使っているのに、その言葉の広がっている範囲が意外に狭いという言葉があります。
 「とのくち」という言葉は漢字で書けば「戸の口」であると察しがつきますから、戸の外側です。と言っても、雨戸の外という意味ではありません。その家の入口である部分の外側ということで、家の出入り口のことです。木でできた戸をガラガラと音を立てて開け閉めするのにふさわしい言葉のように感じられますから、家の玄関がドアになってしまったような時代には、忘れ去られていく言葉であるのかもしれません。けれども「戸の口」と書けば、変哲もない、ありふれた言葉のようにも感じられます。
 この言葉の意味する場所は、一般的には玄関の外側と考えてよいでしょうが、大きな門構えの家であるのならその門の外側と考えることもできます。(玄関の内側も「とのくち」であるという考えも成り立つかもしれません。)
 この言葉は国語辞典にも載っていませんし、「日本方言大辞典」にも載っていません。共通語でもなく、方言としても記録されていないようです。このように正面から取り上げられない言葉は、意外に狭い範囲でしか使われていない言葉であるのかもしれません。
 「明石日常生活語辞典」の「とのくち」の項を引用しておきます。

●とのくち【戸の口】《名詞》 家の出入り口。門の外側や、玄関の外側。「だれ(誰)・か・が・ とのくち・に・ やさい(野菜)・を・ お(置)い・ていっ・てくれ・とる。」

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2019年12月 8日 (日)

明石日常生活語辞典・追記(88)

なま


 「なま」という言葉は、播磨地域で使われる場合は、程度がより軽い様子や、数量がより少ない様子を表す言葉です。
この言葉は、全国のあちらこちらで使われているようですが、地域によって表す意味も異なるようです。例えば、たやすいということを表したり、よく似ているということを表したり、なんとなくという意味を表したりしますから、地域語として使っている場合は、その意味を即断すると、間違ったとらえ方に陥る恐れがあります。
 この言葉は、程度が軽い状態を表すというのが基本的な意味でしょう。共通語として使う「なまや(焼)け」や「なまに(煮)え」などは、不十分であったり中途半端であったりすることを表しています。そのことから類推すると、程度がより軽いという意味や、数量がより少ないという意味にも関連してきます。たやすいという意味や、よく似ているという意味や、なんとなくという意味にも、少しは関連しているようにも思われます。
 明石地域で使う「なま」は、例えば「きのー(昨日)・より・は・ なま・ あつ(暑)ー・て・ ありがたい。」のように、望ましくない状況や不快に感じる様子を表す言葉と結びつけて、そうではないから有り難いというような使い方をします。涼しいことを望ましいと感じているような時期に、「けさ(今朝)・は・ なま・ すずしー。」というような言い方はしないのです。
 「明石日常生活語辞典」の「なま」の項を引用しておきます。

●なま《形容動詞や(ノ)》 程度がより軽い様子。数量がより少ない様子。「きのー(昨日)・より・ きょー(今日)・の・ ほー(方)・が・ なま・ さぶ(寒)ー・ない。」「さむ(寒)さ・は・ きょー(今日)・の・ ほー(方)・が・ なまや。」「きのー(昨日)・より・は・ いた(痛)み・が・ なまに・ なっ・た。」

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2019年12月 7日 (土)

明石日常生活語辞典・追記(87)

こうと


 外来語が氾濫して、形容詞や形容動詞にあたる言葉が、もとの大和言葉からカタカナ語に置き換えられています。その急速な有様は放送や新聞に現れていて、目に余るものがあります。
 そんなとき、「こうと」という言葉を聞くと、やっと日本語(地域の日常で使う言葉)に出会えたと思ったりします。「こうと」という言葉のことは、この連載の(27)回に書きましたが、もう一度、書くことにします。
 「こうと」という言葉は、今では聞くことは少なくなってきましたが、明石でも使っていました。衣服などの品定めをするときなどに、「この・ ふく(服)・は・ ちょっと・ こーとと・ ちが(違)う・やろ・か。」かとか、「こーとな・ いろ(色)・や・さかい・ もっと・ はで(派手)な・ん・に・ か(変)え・たい・ねん。」とか言っていました。いつまでも使い続けたい言葉です。
 「こうと」は関西のあちこちで使われている言葉ですが、その由来について書かれた文章に出会って、ちょっと驚きました。次のように書かれています。


 京都の人は常の暮らしもはんなりとしているように思われがちやけど、決してそんなことはあらしません。特に商家の暮らしは、はんなりと呼べるようなもんやのうて、むしろ地味で質素。旧い京ことばに当てはめると「こうと」な暮らしぶりなんです。
 「こうと」ということばには、地味で上品な、質素な、という意味があります。
 漢字で「公道」と書きますが、公の道、すなわち幕府が定めた法にしたがって、慎み深く暮らさねばならぬという江戸時代の市井の者の心得を表しています。
 (杉本節子、「京町家 杉本家の京の普段づかい」、PHP研究所、2016年3月31日発行、4ページ)

 この文章の言わんとする気持ちはよくわかります。けれども、「こうと」が「公道」という文字に由来するという説明に初めてぶつかって、びっくりしたのです。
 「京都府方言辞典」では、どのような漢字に当てるのかということには言及していません。

 コート[形動] 地味、上品、質素。
(中井幸比古、「京都府方言辞典」、和泉書院、2002年7月30日発行、205ページ)

 「大阪ことば事典」には、「守貞漫稿」を引用した部分があります。


 コォト(形動) 地味。質素。上品で質素なこと。浮華でないこと。派手の反対。[例]コォトな柄。
 『守貞漫稿』第九編、女扮、上の部に「華なるを、三都ともに、花手・端手と云ふ(共にはでと訓ず)。之に反するを、こうとと云ふ。字未だ考へず。江戸、或はじみとも云ふ」
(牧村史陽(編)、「大阪ことば事典」、講談社、1979年7月15日発行、245ページ)

 「公道」を「こうと」と読ませることは不思議ではありませんが、「公道」という文字をあてることは正しいと証明できるのでしょうか。それとも、民間語源説のひとつということになるのでしょうか。
 「明石日常生活語辞典」の「こうと」の部分を引用しておきます。

●こうと〔こーと〕《形容動詞や(ナ)》 着物などが、落ち着いていて地味である様子。質素で上品な感じがする様子。「その・ きもの(着物)・は・ え(良)ー・けど・ あんた・に・は・ ちょっと(一寸)・ こーとと・ ちゃ(違)う・やろ・か。」

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2019年12月 6日 (金)

明石日常生活語辞典・追記(86)

ほんまく


 「ことし(今年)・は・ ま(負)け・ん・よーに・ ほんまく・ がんば(頑張)り・なはれ・よ。」などと言って励ますことがあります。思いっきり、とか、力を振り絞って精いっぱい、とかいうような意味です。
 「ほんまく・ じかん(時間)・を・ かけ・て・ え(絵)ー・を・ か(描)く。」とか、「さとー(砂糖)・を・ いっぱい・ い(入)れ・て・ ほんまく・ あま(甘)い・ あじ(味)・に・ する。」とか言うこともあります。
 私は「ほんまく」と言うことが多いのですが、「おんまく」という発音をする人もいます。「ほんまく」「おんまく」が、「ほんまくそ」「おんまくそ」「おんまくさ」などに変化して使われている地域が、兵庫県内にはあるようです。これらの言葉の分布範囲は兵庫県と山陽、四国のあたりのようです。
 方言というのは話し言葉の世界で使われるものであると言ってよいでしょうから、発音の変化があるのは当然のことです。共通語を聞いても、発音を間違って認識することはあるのですから、いちいち書き言葉として記録しない方言の世界で、発音に揺れがあってもおかしくはありません。
 けれども、方言辞典などに載せる場合は、その変化をどこまで記録するのかということは難しい問題です。細かく記録しようとする辞典があっても不思議ではありませんし、基本的な発音だけを載せる辞典があってもおかしくはありません。それぞれの辞典の方針によるのです。私の場合は、できるだけ発音のバラエティを拾い上げようとしますが、それでも、すべてを網羅できるはずはありません。
 「明石日常生活語辞典」の「ほんまく」は次のように記述しています。

●ほんまく《副詞》 自分の力や意欲をありったけ注ぎ込む様子。気のすむまで。「はら(腹)・が・ た(立)っ・た・さかい・ ほんまく・ ぶちまし・たっ・た。」〔⇒おんまく、おもいきり【思い切り】〕

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2019年12月 5日 (木)

明石日常生活語辞典・追記(85)

いじましい

 

 

 「いじましい」という言葉は共通語にあります。考えや度量が狭くて、こまかなことにこだわって、こせこせしている様子を表す言葉です。明石でも、そのような意味で使います。とりわけ、金銭面でけちであったり、動作や行動が醜いという様子を指して使うことがあります。
 けれども、明石では、それとは違った意味で、この言葉を使うことがあります。水に濡れたりして気持ちが悪い、汚らしいという意味です。この意味で使うのは、兵庫・岡山・香川県のあたりであるようです。
 「明石日常生活語辞典」のこの項を引用しますが、上記の2つの意味の他に、③として、見劣りがする、窮屈な感じである、という意味も加えましたが、この意味で使うことはあまり多くないように思います。

 

●いじましい〔いじましー〕《形容詞・イイ型》 ①濡れたり汚れたりなどして、気持ちがすぐれない。けがらわしい感じである。「あめ(雨)・に・ ぬ(濡)れ・て・ からだじゅー(体中)・ いじましー・さかいに・ きが(着替)える。」②了見が狭くて、こせこせしている。ささいなことであってもね損得を計算する性格だ。「いじましー・ こと(事)・ い(言)わ・んと・ みんな(皆)・に・ おご(奢)っ・てやり・なはれ。」「かね(金)・の・ こと・に・ なっ・たら・ いじましー・ けーさん(計算)・を・ する。」③見劣りがする。窮屈な感じである。「いえ(家)・の・ なか(中)・は・ いじましー・さかい・ み(見)・てもらい・とー・ない・ねん。」〔①⇒きしょくわるい【気色悪い】、きもちわるい【気持ち悪い】〕

 

 関西での「なおす」という動詞の意味は、共通語と同じような、壊れたものなどを元の良い状態に戻すという意味の他に、あるべき場所に納めるとか、元の位置に片付けるとかの意味があります。このように、地域特有に意味が加わるということは、他の地域の人にはじゅうぶんに理解してもらえないということも起こりがちです。

 

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2019年12月 4日 (水)

明石日常生活語辞典・追記(84)

びり


 「地域語のダイナミズム」という書物に、1985年5月から1986年7月にかけて、京阪神間(京都市・八幡市・高槻市・枚方市・大阪市・川西市・神戸市)において若年層を対象とした言語調査の報告が載っています。各市在住の14~23歳の男女で、言語形成期(5~14歳)をその地で過ごした者を限定して選んだそうです。
 そのうちの一つに、「かけっこの時、一番最後にゴールインする人のこと」というのがあります。調査は、a「親しい友達と話すとき」(informalな場面)と、b「見知らぬ東京の人と話すとき」(formalな場面)に分けてたずねたとあります。
 その結果のうち、神戸市のデータを引用します。(表になっているものからの引用です。)


 かけっこの時、一番最後にゴールインする人のこと。 神戸市
ビリ formalな場面 74.6% informalな場面 40.7%
  ドベ formalな場面  4.2% informalな場面 17.8%
  ベベ formalな場面 2.5% informalな場面 16.1%
  ベベタ formalな場面 1.7% informalな場面  8.5%
  ベッタ formalな場面 0.8% informalな場面 3.4%
  ベッタコ formalな場面 0.0% informalな場面 0.0%
 (真田信治、「地域語のダイナミズム -関西」、おうふう、1996年4月25日発行、62ページ)

 私はこの連載の(73)回で「げっとうしょう」のことを書きました。その時に「明石日常生活語辞典」を引用しましたが、私の意識では、かつて日常生活(informalな場面)で使っていた言葉として「けつ」「げつ」「げっとう」などが中心にあるということでした。
 上記に引用した調査は、既に三十数年前のものですから、現在では違った状況になっている可能性はあります。
 たぶん現在の明石市内でも、日常生活で若者たちが多く使うのは「びり」であるのでしょう。地域の言葉であっても、年代によって使う言葉が違ってくるということは否定できません。年を経るにしたがって、「びり」以外のいろいろな言い方が消えてしまう傾向にあるとしても、それは仕方のないことです。とはいえ、「明石日常生活語辞典」の意図としては、その他の言い方が消え去ってしまうまでに、それらを記録しておきたいということなのです。参考までに「びり」の項を引用しておきます。

●びり《名詞》 順位をつけたときの後ろの位置。最も後ろの順位。最後尾。最下位。「びり・で・ ごーる(ゴール)・に・ はい(入)っ・た。」〔⇒しり【尻】、けつ【穴】、げつ【(穴)】、げっつう【(穴)】、どんけつ【どん穴】、どんげつ【(どん穴)】、どんじり【どん尻】、げっとう【(穴等)】、げっとくそ【(穴等糞)】、げっとうしょう【(穴等賞)】、べっとう【(穴等)】、べっとくそ【(穴等糞)】、べっとうしょう【(穴等賞)】〕

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2019年12月 3日 (火)

明石日常生活語辞典・追記(83)

くんにゃかす


 幼い頃から、こんな場合にはこんな言い方をするということが決まっていると思い込んでいて、それ以外の言い方を聞くとびっくりしたり、意味がわからないと思うことがありました。
 とーきょーそー(徒競走)をしていて、足がもつれて倒れて、しばらくビッコをひかなくてはならなくなったりすると、「あし(足)・を・ くんにゃかし・て・ いた(痛)い・ねん。」などと言いました。足首などを捻挫することについて言うことが多く、手の指などについて言うことは少ないように感じます。
 「くんにゃかす」を使っている地域はあまり広くないようですから、それとは違った言い回し聞くことがあったのですが、そんな場合は、「くんにゃかす」という動作・状態とは違ったことを言っているようで、違和感を持った記憶がありました。違和感というよりは、少し異なったことを表現しているのではないかという気持ちでした。
例えば「足をくじく」と聞いたときは、足を何かに打ち付けたことを言っているように感じました。「足をくねる」は、「くんにゃかす」と同じようなことを言っているのだろうと理解しましたが、自分の意思がはたらいてそんな動作・状態にしてしまったように感じたことがありました。「くんにゃかす」とはちょっと違うなぁと感じて、自分が「くねる」という言葉を使う気持ちにはなりませんでした。「足をねんざ(捻挫)する」は、共通語ではそのように言うのかということに気付きましたら、年齢を経るにつれて使うようになりました。
 それでも、近所の人同士で話をするときは「くんにゃかす」を使い続けています。幼い頃に身に付いた言葉はいつまでも残るものだと思います。
 「明石日常生活語辞典」に記載している「くんにゃかす」と「くねる」とを引用します。「くじく」はこの辞典には記載しておりません。

●くんにゃかす《動詞・サ行五段活用》 手や足の関節に無理な力が加わって、くじいて損傷が起こる。「すべ(滑)っ・て・ あしくび(足首)・を・ くんにゃかし・た。」〔⇒くねる、ねんざ【捻挫】(する)〕

●くねる《動詞・ナ行下一段活用》 ①いくつにも緩く折れ曲がる。「たんぼ(田圃)・の・ なか(中)・の・ みち(道)・が・ くねっ・とる。」「からだ(体)・を・ くねっ・て・ たいそー(体操)する。」②手や足の関節に無理な力が加わって、くじいて損傷が起こる。「あし(足)・を・ くねっ・て・ いた(痛)い。」〔②⇒くんにゃかす、ねんざ【捻挫】する〕

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2019年12月 2日 (月)

明石日常生活語辞典・追記(82)

ほどらい、およそ


 「ほどらい」という形容動詞は、近畿地方を中心にして、かなり広い範囲で使われている言葉のようです。「ほどらいで・ こた(答)え・てん・けど・ まちご(間違)ー・とら・なんだ。」とか、「あいつ(彼奴)・は・ ほどらいな・ こと・ばっかり・ ゆ(言)ー・さかい・ しんよー(信用)でけ・へん。」というような使い方をします。
 大まかである、という意味、いい加減だ、という意味にも使われますし、でたらめだ、という意味にもなります。その意味は文脈によってかなりの広がりを見せるのです。
 「ほどらい」という言葉は、概してよくない意味に使われますが、程良いといういう評価をする意味にも使われます。
 「明石日常生活語辞典」の「ほどらい」の説明は次のように書いています。

●ほどらい【程らい】《形容動詞や(ノ)》 ①当て推量である。大まかである。「ほどらいに・ ゆ(言)ー・てみ・たら・ あ(当)たっ・た。」「ほどらいに・ かんじょー(勘定)し・て・ おこ(怒)ら・れ・た。」②いいかげんな程度である。適当な状態である。きちんと考えていない。「ほどらいな・ こと・を・ かんが(考)え・とっ・たら・ しっぱい(失敗)する・ぞ。」「ほどらいな・ き(聞)きかた・を・ せ・んと・ ちゃんと・ めも(メモ)・を・ し・とけ。」③ほどよい程度である。「ほどらいな・ あま(甘)さ・の・ おかし(菓子)・で・ うま(美味)い。」〔①②⇒およそ〕

 関連する言葉として「およそ」を挙げておりますが、明石の言葉としては、「およそ・ いちじかん(一時間)・ あと(後)・に・ できあがり・ます。」とか、「およそ・ ごせんち(5㎝)・ずつ・ あいだ(間)・を・ あ(空)け・て・ なら(並)べる。」とかの、「およそ」(名詞)とは異なります。「ほどらい」と同じように形容動詞としての働きをしている言葉です。
 「明石日常生活語辞典」の「およそ」の説明は次のように書いています。「およそ」には、ほどよい程度である、という意味はありません。

●およそ《形容動詞や(ノ・ナ)》 ①当て推量である。大まかである。「およそな・ かず(数)・で・ ちゅーもん(注文)し・とく・ こと・に・ する。」②いい加減な程度である。適当な状態である。きちんと考えていない。「およそな・ しごと(仕事)・しか・ せー・へん・さかい・ あいつ(彼奴)・に・ たの(頼)ん・だら・ あか・ん。」「およそな・ へんじ(返事)・を・ し・て・ わす(忘)れ・ても・とる。」〔⇒ほどらい【程らい】〕

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2019年12月 1日 (日)

明石日常生活語辞典・追記(81)

しじつ(手術)、じっこくとうげ(十石峠)


 歌手の島倉千代子さんが20代の頃に歌った「十石峠の白い花」という曲があります。「ゆめ(夢)よさよなら じゅっこくとーげ(十石峠)」と歌っています。
 NHKのニュースを聞いていると、十回は「じっかい」、十点二(10.2)という数字は「じってんに」と発音しています。いつから、このように変わったのでしょうか。
 常用漢字の音訓表は「ジュウ」「ジッ」の音読を認めています。けれども、すべての場合に「ジッ」を認めているのでしょうか。十戒、十干十二支、十把一絡げ、などのように熟し切った言葉遣いに限られると考えていた私が、古い考え方なのでしょうか。
 発音しにくいものを発音しやすくするというのは自然な変化であると思いますが、「じゅっかい」というのは発音しにくいでしょうか。それとも「じゅっかい」と言うよりも「じっかい」の方が発音が美しいのでしょうか。私は、昔からの慣れで「じゅっかい(十回)・も・ い(行)っ・てん・けど・ あいつ・に・は・ あ(会)え・なんだ。」と言います。
 身の回りの言葉の中には、発音しにくいので発音が崩れている言葉があります。手術は「しゅじゅつ」と言わなければと思っていても、崩れてしまいがちです。「しゅじつ」となったり「しゅうつ」となったりします。さらに崩れると「しじつ」になり、「しうつ」になります。「しじつ」「しうつ」の発音は、もはや正しく発音することをあきらめた場合の言い方であるような気がします。
 いちばん多いのは「しゅうつ」ではないかと思います。「明石日常生活語辞典」のその項を引用します。

●しゅうつ【(手術)】《名詞、動詞する》 病気や傷になっているところを、切り開いたり切断したりして治療すること。「しゅうつせ・んと・ もーちょー(盲腸)・を・ くすり(薬)・で・ ち(散)らし・た。」〔⇒しゅじゅつ【手術】、しゅじつ【(手術)】、しうつ【(手術)】、しじつ【(手術)】〕

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