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2020年2月 5日 (水)

生きる折々(36)

「普通」と、「超」など


 私は、昔々の学生時代に、広島大学で行われる国語学などの学会に出席するために、夜行の客車列車である「ななうら」に乗ったことがあります。長距離を走る準急でした。その「ななうら」は遠い昔に廃止になり、現在のJRには準急という種別はありません。
 それだけでなく、急行という種別もないように思います。ローカル線にも特急が走り、特急の本数は格段に増えています。
 言葉の上で考えると、特急は特別急行であり、準急は準急行です。急行のことを普通急行と呼んだこともあったように思います。急行がなくなれば、その言葉から派生する特急も準急もなくなると思いますが、現実は、特急だけがますます増殖しています。急行という種別がなくなったのであれば、現在の特急をすべて、急行と言い改めることもできるはずですが、それでは格好が悪いのでしょう。けれども、走る列車は特急(特別急行)と普通だけという線があるのは、何かおかしな気持ちがします。
 私鉄の方では急行はたくさん走っていて、急行、準急、区間急行、通勤急行、快速急行などの呼び方があって、急行は花盛りです。
 さて、話題が変わります。このごろ、「普通におもしろい」という言い方があるそうですが、「普通におもしろい」というのは、どういう程度を表しているのでしょうか。単に「おもしろい」と言うのとどう違うのでしょうか。普通急行を急行と言う呼称に従えば、「普通におもしろい」は「おもしろい」とだけ言えばよいはずですが…。
 おもしろいという判断基準で大きく分けると、「おもしろい」と「おもしろくない」の2つです。けれども、「おもしろい」という方を段階に分けて、「おもしろい」の前に、いろいろな言葉を付けるのです。たいそうおもしろい、特別おもしろい、超おもしろい、ウルトラおもしろい、などです。
 おもしろさをいくつかに分けようという意識よりも、おもしろいという言葉をどう強調しようかと考えて、超だのウルトラだのと付けているのでしょう。
 速く走る列車も、急行⇒特別急行⇒(特急)⇒超特急という経過をたどり、そのうちウルトラ特急だのという呼称も現れるかもしれません。
 誇張表現はとどまるところがありません。もっともっと誇張してみようという気持ちになるでしょう。そして使い古された言葉は捨て去られ、また別の誇張表現が使われるようになるでしょう。
 その場合、はっきり言えることは、旧来の日本語から望ましい言葉を探そうとするよりも、外来語を適当に使っておこうなどという姿勢になって、日本語を忘れたり壊したりする働きが加速していくということです。
 日本語の良さ、面白さがわからない人間が増えれば、日本語を守っていこうという姿勢が力を弱めることになるでしょう。

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