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2020年4月12日 (日)

ことばと生活と新聞と(51)

「かつて知られた都市」は、今は知られていないのか


 不思議な訂正記事が載っていました。それを引用します。

 3月30日付「しつもん!ドラえもん 3625 とき編」で、世界の標準時についての質問をどの都市で「決まるかな」としたのは「決まっていたかな」の誤りでした。31日付同欄3626の質問で、日本の標準時が決まる場所として「知られる都市は」としたのは「かつて知られた都市は」の誤りでした。答えで「世界の標準時は英国のグリニッジ天文台で決まり、東西に15度離れるごとに1時間の時差ができる」としたのは、「かつて世界の標準時は英国のグリニッジ天文台を通る子午線で決まり、東西に15度離れるごとに1時間の時差ができるとされた」の誤りでした。標準時はもともと子午線を基準に決めていましたが、いまは原子時計が刻む時刻をもとに決めるため、説明として不正確でした。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年4月4日・朝刊、14版、26ページ、「訂正して、おわびします」)

 世界の標準時について、児童・生徒が使う教科書ではどのような説明になっているのかは知りません。グリニッジとか明石市とかの記述はされていないのでしょうか。
 訂正記事によれば、世界の標準時は「原子時計が刻む時刻をもとに決める」となっています。そうするとグリニッジや明石市についてはいっさい考える必要がないということでしょうか。
 もしそうであるのなら、3625と3626の質問自体が意味のないものになります。それは、時刻に関する質問ではなく、かつての事柄(すなわち、歴史)に関する質問になります。今となっては記憶しておく必要はないのですが、かつて知られていた都市はどこですか、という質問ですから、歴史に過ぎません。
 そもそも、今は関係ないことになっていますが、「かつて知られていた都市はどこですか」の「かつて」というのは何年前のことでしょうか。児童・生徒たちが生まれる前に既にそのような考え方になっていたのなら、そんな質問自体が不適切です。
 質問・答えの記事を書いた人自身が間違っていたというような「しつもん」はきちんと取り消すべきでしょう。「訂正」の言葉遣いで誤魔化してはいけません。「決まっていた」とか「かつて」という言葉は、政治家の答弁のような、インチキな言葉に聞こえます。子どもたちにそんな言い抜けの言葉遣いを教えてはいけません。
 最大の疑問は、標準時は原子時計が刻む時刻をもとに決めるということになっているから、新聞は今、明石市や東経135度を、日本の標準時と結びつけたような記事を書くことは、まったくないと言えるのでしょうか。原子時計のことは大切ですが、現在でも、日本の標準時と明石市とを結びつけて述べてもよいのではないでしょうか。質問をそのように工夫してほしいと思います。

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