« ことばと生活と新聞と(58) | トップページ | ことばと生活と新聞と(60) »

2020年4月20日 (月)

ことばと生活と新聞と(59)

駅名を長くする競争


 阪急電鉄に「関大前」という駅があります。関西大学を短く言ったものです。同じ阪急は最近、石橋駅を「石橋阪大前」に変えました。大阪大学のキャンパスが近いからです。阪神電鉄も最近、鳴尾駅を「鳴尾・武庫川女子大前」に変えました。
 大学名を駅名に取り入れることはJRも行っていますが、次のような記事がありました。

 京福電鉄(京都市)は20日、北野線の「等持院」駅を「等持院・立命館大学衣笠キャンパス前」に改称する。音読数(26字)で日本一長い駅名となる。
 文字数も17文字で、「富山トヨペット本社前(五福末広町)」や「東京ディズニーランド・ステーション」などと並んで1位タイという。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年3月20日・朝刊、14版、34ページ、「青鉛筆」)

 何でも一番が注目されるという意識からでしょうが、長い駅名の競争が繰り広げられてきて、1位は次々と入れ替わってきました。京福電鉄の改称も、その競争に加わったということです。あちこちにキャンパスがある大学でも「〇〇大学前」とするのが普通です。「衣笠キャンパス」などというものを駅名に取り入れたのは長くしようという意図でしかありません。「〇大(略称)」よりも「〇〇大」よりも長い「〇〇大学」にして、キャンパス名まで取り入れたのです。「富山トヨペット本社前(五福末広町)」も「本社」という文字を加えて多くしているように思われます。
 もっと多くする方法は、考えればいくらでもあります。「富山トヨペット株式会社本社前(五福末広町)」などとすればよいのです。「東京ディズニーランド・ステーション」も「とうきょう……」とすれば文字数は増えます。それにしても、そんなにまでする必要はあるのでしょうか。かえって品位が失われてしまいます。
 ここに使われている駅名に共通することは、地名ではなく、企業などの名前を使っているということです。駅の名前は、本来は地名にすべきでしょう。地名を加えていても、企業などの名称で文字数を増やそうという魂胆は目に余ります。
 地名で長くするのなら、受け入れましょう。「上京区寺町通今出川上る二筋目東入三栄町」(架空の地名ではありません。京都にはこんな地名もあるのです)などという駅名ができたら面白いとは思います。けれども、そんなことを真剣に考える人はいないでしょう。
 企業名などで長くするのはやめてほしいと思います。「南阿蘇水の生まれる里白水高原」という南阿蘇鉄道の駅名は詩情があります。この駅が日本一長い駅名であった時もありました。
 以上のようなことを申しながら、これらの長い駅名は、新聞の見出しなどにあらわれる、ぶった切りの言葉よりは上品に聞こえます。ひとつひとつの言葉を大切にしているように感じられて、好感を持てるのです。この連載で何度も書いてきましたが、新聞の見出しは、効率を考えて言葉を短くすることしか考えていないからです。新聞が行っている、日本語のぶった切りは、日本語を壊す働きをしています。

|

« ことばと生活と新聞と(58) | トップページ | ことばと生活と新聞と(60) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ことばと生活と新聞と(58) | トップページ | ことばと生活と新聞と(60) »