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2020年4月 6日 (月)

ことばと生活と新聞と(45)

5万人弱がほんとうの中学生なのか


 中学校は言うまでもなく義務教育です。私立・国立の中学校もありますが、そんなものは例外的な存在でしかありません。けれども、それこそが正統な中学校であると言わんばかりの記事があります。宣伝広告ではなく、きちんとした記事です。どうして、こんなものを掲載する必要があるのでしょうか。
 ジャーナリストというのは自称すればよいもののようですが、教育ジャーナリストというのはどういうことをする人間のことでしょうか。私立・国立中学校への受験を手助けするような文章を書く人間をジャーナリストと言えるのでしょうか。
 こんな文章がありました。

 2020年の中学受験が終わりました。首都圏模試センターの推計によると今年の私立・国立中学受験者総数は前年比104・7%、2200人増の4万9400人でした。私立・国立中学の受験者総数に対する募集人数総数は96%と、久々に合格率が100%を割り込みました。つまり全入時代が終わったということです。 …(中略)…
 第一志望校以外に進むことになった多くの子どもたちはもちろん、第一志望校に進むことになった子どもたちにも、中学受験の締めくくりとして、少しでも「ほろ苦さ」を知ってほしいと私は思います。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年3月7日・朝刊、13版、17ページ、「塾が教えない中学受験必笑法」、おおたとしまさ)

 筆者の肩書きは、見出し部分に「教育ジャーナリスト」と書いてあります。世の中には、「〇〇が教えない」とか「私だけが知っている」とかの宣伝文句で人を引きつけようとする手法があります。そういう場合はたいてい、実質のない。言葉だけの飾りであることが多いのです。教育の本質を論じるわけでもなく、受験の仕方などの手ほどきをする人もジャーナリストなのでしょうか。
 「首都圏模試センターの推計によると」とありますが、そのセンターというのは公的なものではないでしょう。首都圏の私立・国立中学こそが選ばれた学校のように聞こえます。全国にある公立中学校のことなど眼中にない文章です。首都圏の5万人弱の合格者がほんとうの中学生だと言わんばかりの文章です。全国の公立学校の抱える問題などには知らんぷりの姿勢です。
 これが高校や大学受験に関する文章なら、わからないでもありません。けれども、中学受験をこのようにけしかけなければならない理由は何なのでしょうか。それは、この教育ジャーナリストが収入を得るための手段であるからかもしれません。「全入時代が終わった」ことを喜んでいるようです。受験の「ほろ苦さ」は大人に言われなくても、子どもたちは身にしみて感じているはずです。
 そして、新聞社がこのような宣伝文章を、正規の記事の一つにするのはなぜでしょう。あまりにも安易な取り扱いです。
 このような紙面制作が、日曜日に配達される「EduA」という付録と通じ合っていることは自明のことです。真剣な記事と宣伝記事との違いがなくなってきているのが、現在の新聞であると思います。

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