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2020年4月25日 (土)

ことばと生活と新聞と(64)

新聞の一般記事を宣伝に利用する


 言葉のコラムのはずですが、それが軌道を外して宣伝記事に成り下がっている文章を読みました。

 この冬、書店のエスカレーターの手すり横に、国語辞典『大辞林』第4版の広告が出ていました。「こんな細長い所に!」と驚きました。
 辞書は定期的に内容を一新します。これが「全面改訂」。説明をより丁寧にするなど、長年かけて全体に手を入れる大変な作業です。 …(中略)…
 『大辞林』は明治以降の言葉が得意です。夏目漱石の作品にもあるのに、他の辞書にないことばが、この辞書だけに載っていることもあります。私も推薦しておきます。 …(中略)…
 家にいる機会が多い今年の春。新しい国語辞典を買って眺めるのもいいですよ。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年4月18日・朝刊、be3ページ、「街のB級言葉図鑑」、飯間浩明)

 「全面改訂」などという言葉は誰でも知っています。こんな言葉を事新しく紹介する必要は感じられません。
 ではなぜ、こんな話題を提供するのか。書店のエスカレーターの手すり横にあった、という理由です。けれども、これは全国の書店のあちこちで見られる現象なのでしょうか。そんなことはありません。「街のB級言葉図鑑」の特徴は、それが極めて特殊なものであっても、それを取り上げることです。これまでに話題とした言葉の中にも、そんなものがいくつもありました。そのような特殊なもの(とりわけ、東京でのひとつの事例)を取り上げられても、納得しない読者も大勢いることでしょう。
 そして、今回は、見事にそれを宣伝材料にしていることです。これは『大辞林』を買って眺めることをせよという宣伝です。広げて言うなら、他の国語辞典も買いなさい、私の編纂した国語辞典も、という色合いが感じられます。
 新聞は、一般記事と宣伝とを峻別すべきです。最近は、宣伝を目的にした一般記事が増えています。
 先日、「五島の椿プロジェクト」という全面記事が載りました。(朝日新聞・大阪本社発行、2020年3月22日・朝刊、13版S、24ページ、曹喜郁) 形は一般の記事を装いつつ、宣伝に徹した記事です。記事の執筆者と写真の撮影者の名前が書かれています。ツバキが満開の福江島と東京・銀座の発表会を取材したという内容です。そして、椿サポーター・吉永小百合さんの紹介も書かれています。このページの下段は、大きな「五島の椿」の広告欄です。つまり、これは1ページ全体が、記事の体裁をつくろいつつ広告ページになっているのです。
 新聞は、何のためらいもなく、このような記事を載せる媒体になってしまっているのです。読者は騙されないようにしなければなりません。それこそが情報リテラシーというものです。

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