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2020年4月 2日 (木)

ことばと生活と新聞と(41)

新聞はどちらを向いている?


 新聞は多くの読者に向けてメッセージを発しています。ちょっとした言葉遣いであっても、新聞社の姿勢や方向性が現れます。新聞は世論を喚起するはずですが、現在の新聞はその姿勢を失っているのではないでしょうか。
 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、不要不急の外出自粛が要請されました。実際に街の中はどうなったのかという取材は必要ですが、それをどのように書いて紙面に反映させるのかということは大事です。人出が少なくなったことに不満感を抱いているような記事があちらこちらにありました。3月29日(日曜日)の朝刊から拾い上げます。

①寂しい週末
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年3月29日・朝刊、14版、1ページ、見出し)

 見出しはただ一つですから、「寂しい」という言葉が強調されています。縦9センチ、横12センチほどの写真の説明は「人通りがまばらな戎橋」です。人がまばらな様子を望ましい風景ととらえていないようです。経済(金儲け)という視点からの表現なのでしょうか。もっと寂しくならないと、感染を止めることはできないかもしれません。

②都会 消えたにぎわい / 「客足戻るのか」「今は予防優先」
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年3月29日・朝刊、14版、2ページ、「時時刻刻」、見出し)

 2ページの見出しも、1ページの「寂しい」と同じような色合いです。「予防優先」が後ろに下げられています。「にぎわい」「客足」という言葉が、「予防」の前に立ちふさがっています。経済(金儲け)も大事でしょうが、今は「予防」に徹すべきだという姿勢を持てないのでしょうか。
 本文の文章の冒頭は、「新型コロナウイルスの感染が広がる中、『外出自粛要請』の週末が28日、始まった。東京や大阪など各地で街はにぎわいを失った。」となっています。みんなが自粛要請を守って外出を控えたからよかった、というようなことは書かれていません。

③自粛の街 だから でも / 声に濃淡「緊張足りない」「知らなかった」
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年3月29日・朝刊、14版、31ページ、見出し)

 社会面の大きな見出しです。「自粛の街 …… でも」という言葉は、あえて外出をするという意志を表しています。不要不急でもない外出を肯定したり、「知らなかった」という言葉を認めて報道したりする前に、新聞は、外出自粛要請が出ていることをきちんと知らせる努力をすべきでしょう。感染者数の増加の数字を載せながらも、紙面づくりの姿勢は、あらぬ方を向いているようにも感じられます。
 店に空席が多いというようなことを毎日のように報道しています。やっぱり金儲け主義が前面に出ています。感染防止に向けて人々の心構えを喚起するような紙面になっていません。大阪の紙面だからこのような状態なのでしょうか。東京も同じなのでしょうか。経済のことも重要です。けれども、命を守るということを後回しにしてよいはずはありません。
 新聞は、事実を報道するということを理由にして、実際は社会の傍観者になってしまっているようです。これが3月下旬の状況です。感染者が急激に増加しないことを祈りますが、もし、大変な状況に変化していけば、新聞は平気で人々を非難することを始めることでしょう。

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