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2020年6月25日 (木)

ことばと生活と新聞と(125)

「つなぐ」と「つなげる」は同じ意味か


 このコラム(111)回で「つなげる」という言葉を取り上げました。東日本の言い方が全国共通語に定着したという考え方に、反論するようなことを書きました。
 その「つなげる」という言葉について、「時間感覚の磨き方」という特集記事の中で、こんな表現を見つけました。

 毎日、簡単な日記を書き、週の終わりには科目ごとの達成状況も評価し、翌日・翌週につなげる。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年6月14日・朝刊、「EduA」1ページ)

 中学生や高校生の学習状況について、指針を示したような書き方になっていますが、ここに書かれていることができる生徒は、ごく少数だろうと思います。2週間に1度ずつ配付される「EduA」という別刷りは、優秀な生徒や恵まれた家庭向けのもので、一般の生徒・家庭向けではありません。
 それはともかくとして、「つなげる」という言葉のことについて考えます。まず、「つなげる」という言葉を、国語辞典はどう扱っているかを列挙します。

『新明解国語辞典・第4版』
 (項目がありません。)
『三省堂国語辞典・第5版』
 つなぐ。
『現代国語例解辞典・第2版』
 つないだ状態にする。つないで一続きにする。
『岩波国語辞典・第3版』
 一つながりに結び合わせて長くする。つなぐ。
『広辞苑・第4版』
 切れ、または離れているものを続け合せる。つなぐ。
『明鏡国語辞典』
 〔一〕①結びつけて一続きにする。つなぐ。②つながるようにする。特に、何かと何かがあるかかわりをもってつながるようにする。
〔二〕〔「繋ぐ」の可能形〕つなぐことができる。

上に挙げた辞典のうち、『新明解国語辞典・第4版』はこの言葉を全国共通語と認めていないようです。この処置の仕方には納得します。
 『三省堂国語辞典・第5版』は実に粗っぽいやり方で、「つながる」=「つなぐ」と言っているだけで、言葉の説明にはなっていません。2つの言葉が意味・用法の上でまったく重なるなどということはあり得ません。
 『現代国語例解辞典・第2版』『岩波国語辞典・第3版』『広辞苑・第4版』は、「つなぐ」と同じ意味だということを説明していますが、東日本の言い方だということは書かれていません。
 特筆すべきは『明鏡国語辞典』です。「つなげる」という言葉を詳しく説明しており、〔一〕の②の意味や、〔二〕の意味は他の辞典には書かれていないことです。この辞典の説明にはじゅうぶん納得できます。
 上記の記事の「翌日・翌週につなげる」という表現の意味は、『明鏡』以外には書かれていないのです。国語辞典は、言葉の意味・用法をつぶさに説明しているように見えても、実際にはそうではないのです。
 さて、改めて「翌日・翌週につなげる」という表現を見てみます。この表現を「翌日・翌週につなぐ」と言い換えられるでしょうか。「翌日・翌週につなぐ」と言うと、今日の行動はそこでいったん途切れることになります。『明鏡』のいう「つながるようにする。特に、何か(=今日までの行動)と何か(=翌日・翌週の行動)があるかかわりをもってつながるようにする。」ということこそ大切なはずです。
 国語辞典の編纂者は、外来語や流行語や俗語などに注目することよりも、ごくありふれた言葉をきちんと説明することの方に、力を注いでくださることをお願いしたいと思います。
 引用した記事の文を「つなげる」を使わないで表現するとすれば、「翌日・翌週につながるようにする」「翌日・翌週につないでいく」などの言い方が考えられます。

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