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2020年6月 9日 (火)

ことばと生活と新聞と(109)

「突然ですが」という常套句


 毎週金曜日、NHK総合テレビの正午のニュースが終わると、その時刻から始まる番組はBS番組の宣伝の色合いを持ったものです。NHKにも自己宣伝の番組が増えてきています。
 その0時20分になると、「突然ですが…」という声とともに、「突然ですが」という大きな文字が画面に出ます。突然ですがクイズにお答えください、という趣旨で番組が始まるのです。初めて見たときは、番組が突然、クイズの出題で始まるのに驚きましたが、その時は1回限りの趣向なのだろうと思いました。
 けれども、毎週毎週、変わりばえがなく、「突然ですが…」という同じやり方で番組が始まるのには辟易としてきました。視聴者の立場で番組の内容を反省するという姿勢が、この番組の場合には欠如しています。
 テレビというものは、視聴者の心理などには関係なく、突然、画面が切り替わっていきます。ニュースの中に突然、コマーシャルが割り込んで、長々と宣伝した後で、先ほどと同じ画面を再び繰り返した上で、ニュースを続ける、などということは日常茶飯事です。
 突然のように視聴者をかき回すテレビですから、突然の仕業に腹を立てていたら、テレビを見ることはできません。
 その「突然ですが」という言葉は、突然現れた言葉かと思っていたら、そうでもないことがわかってきました。「突然ですが」を番組名にしたものまであるのです。

 突然ですが占ってもいいですか? ★カンテレ 夜10・10
 街で声をかけた一般人を占っていく番組。今夜は3人の占師が登場する。 …(中略)…
 番組冒頭に「番組内での占い師の発言はあくまで占いに基づくもので過去または現在の事実とは異なることがあります」と流れる。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年4月29日・朝刊、14版、26ページ、「試写室」、黒田健朗)

 最近は、各局ともに、街角で突然声をかけて番組の中に引き入れるような、失礼な番組が増えました。しかも「突然」、それを行うのです。「突然ですが」ということが日常的に行われるようになったのです。番組制作者は、そういう方法を、倫理観など関係なしに行っているのです。
 テレビ番組は限定された人間が出演や制作にあたっていますから、出演者は「関係者」です。世の中の大半を占める「一般人」は、番組制作とは無関係です。だから、わざわざ「一般人」などという言葉が使われるのです。芸能人が「一般人」と結婚すれば、この言葉が新聞にも現れます。
 番組冒頭に流れる言葉が記事で紹介されています。この言葉に準じて、こんなことも言えるように思います。「番組内でのコマーシャルの言葉は、あくまで宣伝目的に基づくもので、この商品の過去または現在の事実とは異なることがあります」。
 このことを、視聴者は肝に銘じて画面を見ているのです。過去または現在の事実とは異なる内容を、きれいな言葉で包んで述べるのがコマーシャルというものです。
 一歩進めて言うと、テレビの番組の大半もそういうものであると言っても、あながち間違いでもないような気もします。

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