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2020年6月29日 (月)

ことばと生活と新聞と(129)

略称はどのように作られるのか


 鉄道会社の略称に近鉄(近畿日本鉄道)、相鉄(相模鉄道)、西鉄(西日本鉄道)などという「〇鉄」というのがあります。また、江ノ電(江ノ島電鉄)、広電(広島電鉄)などという「〇電」と呼ぶものがあります。
 兵庫県内にある準大手私鉄に山陽電気鉄道と神戸電鉄(古い名称は神戸電気鉄道)があります。神戸電鉄について、新聞記事などで昔は「神電」という呼び方が使われていた記憶がありますが、会社側がPR誌などで「神鉄」という呼称を使って今ではそれが一般の人たちにも定着しています。山陽電気鉄道の略称は昔も今も「山電」のままです。「〇電」に市街電車のイメージを持つのは私の思い過ごしかもしれませんが、姫路から神戸を経て大阪梅田まで15分おきに特急列車を運転している鉄道が「山電」というのは軽い感じがしないでもありません。(もっとも、国有化前の鉄道会社に山陽鉄道がありましたから、山陽電気鉄道を「山鉄」と呼ぶのには抵抗感があるとも言えます。)
 会社や団体などの略称はどのようにして定着していくのでしょうか。一般の人たちの呼び名が定着したり、会社・団体などが自分で呼ぶ名前が広がったりするのでしょう。
 けれども、もう一つ大きな力があります。報道機関が勝手に略称を作り上げるということです。特に、長い名前を短く言う場合に、報道機関が無理(無茶?)をすることがあります。話題になっている一般社団法人サービスデザイン推進協議会などという団体を、今のところ略称で呼んだりしていませんが、そのうちにおかしな呼称を付けるかもしれません。思いつくのは「サ推協」とか「サデ協」のようなものです。
 童謡の歌詞について書かれた記事の中に、農業・食品産業技術総合研究機構という団体名が書かれていました。会社名の短さに比べて、団体名にはやたら長いものがあります。そんな長い名称を記事の中で何度も書かねばならないというのは大変なことですが、ではどのような略称を使うのでしょうか。指示語で「この研究機構」などと言うことはできますが、報道機関は略称を使うのが好きです。
 この記事では、次のようになっていました。

 「ゆうやけこやけの あかとんぼ」(三木露風作詞「赤とんぼ」)、「うさぎおいし かのやま」(高野辰之作詞「故郷」)、「さくらさくら やよひのそらは」(日本童謡「さくらさくら」)……。学校で子どもに歌い継がれてきた童謡・唱歌には、自然豊かな日本の原風景のイメージがたびたび現れる。
 そんな歌に注目した農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究チームが5月、研究成果を生態系に関する国際学術誌エコシステムサービス…(中略)…に発表した。
 (朝日新聞・大阪本社発行、2020年6月16日・夕刊、3版、1ページ、杉浦奈実)

 農業・食品産業技術総合研究機構のホームページを見ますと、「農研機構は、我が国の農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行う機関です。」と書いてあります。
 「農業」の次に「・」がありますから、「農業」と「食品産業」とが対等になっているように思われます。そして、その「技術」を「総合研究」する「機構」のようです。
 「農食」という2文字を対等にする呼称がよいように思われますが、機構自身が「農研機構」という略称を使っているのですから、外部から意見を述べることはできません。
 ただし、それとは別に、このような略語の作り方について、新聞社はルールを設けているのかどうか、知りたいと思います。(今回の話題は機構自身が略称を作ったことですが、そうでない場合に新聞社が略称を作ることはいくらでもあるのです。)

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